アスペルガー特性の影響で、うつ病になった
障害特性を自覚しておらず、困難が多かった
筆者は30歳の時に「うつ病」を発症しています。その後かかりつけの病院で「ASD(自閉症スペクトラム)」と診断されました。『ASD』と聞いても意味が解らなかったので尋ねたところ、「アスペルガーと言えば分かるかな?」と言われて納得した記憶があります。
それまで人とうまく関われないなどの違和感はありましたが、「障害を持っている」という自覚はありませんでした。
上司の感情表現が理解できず、うつ病になった
もともと筆者は感情表現が苦手でした。
そのため、相手の感情を理解することも苦手です。表情や雰囲気には、明確な答えがありません。うつの原因となった上司は、「ダブルバインド」という、言葉と真意で反対のことを表現することが多い方でした。
ダブルバインドとは、例えば「怒っているのに『怒っていない』と言う」などが挙げられます。そのような「どっちを受け止めたらよいのかがわからない」ことに悩み、うつになりました。
アスペルガーの影響で体験した二次障害
さて、今回はアスペルガーを持つ筆者が体験した二次障害をご紹介します。二次障害はご紹介するほかにも様々なものがあります。種類についてはこちらの記事をご覧ください。
うつ病
うつ病の症状はとても辛かったです。
今まで当たり前にできていたことができなくなりました。手の震え、何をする気にもならないなどの気分低下の症状に悩みました。
今振り返ると、病院に行く半年くらい前から症状が出ていたと考えています。
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睡眠障害
うつ病と併発して、睡眠障害もありました。うつ発症時は全く眠れませんでした。4年後に社会復帰するまで、朝起きられないことでずっと悩んでいました。
今では睡眠の問題は解消していますが、発症から10年近く経った現在も睡眠導入剤を服用しないと眠れません。
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パニック障害
息苦しさや「明日の朝、目が覚めるのだろうか」という突然の不安に襲われたこともあります。パニック障害は次の職場でも経験しています。
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躁うつ状態と見られる行動もあった
今から振り返ってみると、診断はされていないものの「双極性障害」のような症状が出ていたことがありました。理由なくテンションが高くなり、家の窓から出て屋根に登るなど、普段では考えられない行動をしていたからです。その後気分が低下し、ひどく自分を責めていた時期がありました。
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これらの二次障害を実際に体験しました。では、なぜアスペルガー(ASD)の特性が二次障害につながるのでしょうか。筆者の経験から振り返ってみました。
どうして二次障害になったのか?
他人の心情の答えが出せず、ストレスがたまった
もっとも大きいのは、アスペルガーの特性である「曖昧な物事への判断が苦手」な点からくるストレスだと考えています。
人間の心情は曖昧です。「なぜ不満に思われるのか」、「どうして怒っているのか」、そのすべてに明確な根拠がないとイライラしてしまうのです。実際には無理なのですが、「1+1=2」のように、全てに答えが出ていないと落ち着きませんでした。
こうして自分が受けた、相手からの『曖昧な』不満や矛盾などの落としどころを決められず、ストレスがたまっていました。
自己完結させようと、想像を膨らませ過ぎてしまう
さらにこのような「他人の心情」に対して最も解決できる方法は、当事者に確認することです。しかし、人と関わることを極力避けようとしていましたから、なんとか自分で答えを出そうと考え込んでいました。
筆者の場合、相談するべく対象である上司がストレスの原因でした。それであれば、他の部署の方に相談することもできたわけです。
しかし、「自分の部署を飛び越えて相談するなんてできない。ルール違反だ」と思い込んでいました。これにより、対処が遅れたことは言うまでもありません。
責任感が強すぎて、無理をしてしまう
今だからこそ「上司が原因」と言い切れます。しかし、当時はそう思えませんでした。それは「どんなことがあっても人を嫌ってはいけない、不満を言ってはいけない」という責任を感じていたからです。
真面目で几帳面な特性の影響と、先ほどの「自己完結させたい」気持ちから、他人に原因を求められませんでした。
全て「自分のせい」と思い込むことで、さらにストレスから抜け出せなくなってしまったのです。
極端な思考で追い込んでしまう
問題があったのは直属の上司だけで、他の方とは仕事帰りや休日に食事をする仲であったり、後輩の面倒を見ていたりしていました。他の方とのコミュニケーションは、むしろ取れていたのです。自分から積極的に話しかけるなどの行為もできていました。
それがまた上司の妬みを買うことになってしまって嫌われたわけです。たった一人に理解されないだけで全部がダメなような思考に陥りました。このような極端な思考により、事実以上に不安を感じてしまっていたことも原因だと考えています。
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このような状況に悩みながらも、4年後にさまざまな方の協力をいただいて社会復帰ができました。以降、二次障害を防ぐために心がけていることをご紹介します。
二次障害を防ぐために行っていること
自分の傾向を確認した
自分の傾向とは、
・考え方の傾向
・悩み方
・ストレスのたまり方の傾向
・不調になりやすい傾向
などが挙げられます。
これまでの状況を振り返って、「自分が困難を感じやすいパターン」を見つけていきました。
コンディションの大切さを知り、健康意識を高めた
ほんの少し体が疲れているだけでも、ストレスがたまる危険性が高まります。
・普段なんとも思わないことでも「許せない!」と感じてしまう
・普段意識していないのに、警戒心が強まる
など、ストレスを迎え入れる体勢ができてしまうことに気づきました。
そのため、普段から食事や睡眠はもちろん、ストレス管理なども行い早めの対応を取っています。
思考の整理を行うようにした
アスペルガーにとって「こだわり」は大きな成果を出すエネルギーになります。しかしこだわる方向や分量を間違えると、自分を押さえつけてしまう・縛り付けてしまうことが多くなることに気づきました。
自分を押さえつけることが多くなれば、ストレスがたまり、うつ症状になります。
これらを防ぐために、少しでもつらいと感じたら「こだわりの断捨離」を行うようにしました。
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まとめ
【ストレスの傾向を知り、テレワークを選んだ】
いかがでしたでしょうか。
あらゆる困難の原因を考えた結果、一番の対策は「ストレスを感じにくい環境を選ぶこと」でした。様々な問題を踏まえて考えた結果、「テレワーク」に辿り着いたのです。
自宅で周囲とのストレスに悩むことなく仕事を進められるので、純粋に仕事に打ち込めることができています。
今の職場でうまくいかない…でも他にできる仕事がない…と悩んでいることがあるかもしれません。そのようなときはSalad編集部までご相談ください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。人の感情にも苦しむが、自分の曖昧な感情にも答えが出ないとイライラしてしまう。