そもそも発達障害とは
発達障害者支援法において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。
学習上の問題、片付けができない、仕事上や友人・家族間の困りごとなどコミュニケーションの問題などから受診に至り、診断されるケースが多いようです。
【目次】
- 1.発達障害の種類、特徴や症状
- 2.発達障害の原因(わかっていること、いないこと)
- 3.発達障害を持つ方の行動の傾向一覧
- 4.発達障害は症状に個人差がある
- 5.検査はどうすればいいか
- 6.治療はできるか
- 7.どこに相談すべきか
- 8.発達障害の困りごと解決事例集(仕事編)
- 9.発達障害の困りごと解決事例集(生活編)
- 10.発達障害の困りごと解決事例集(コミュニケーション編)
- 11.発達障害の就職活動で注意すべきことは
- 12.障害を持つ方へ。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
- 13.まとめ
発達障害の種類、特徴や症状
ASDとは
ASD(自閉症スペクトラム)とは、Autism Spectrum Disorderの略称で、アスペルガー症候群、自閉症もASDの一種です。
【特性】
社会性やコミュニケーション、「暗黙の了解」のような言葉を介さないやり取りが苦手
【考え方】
特性がある・ないという境界線を引かず、軽度から重度な特性までの区別をしない。
ASDについてより詳しくはこちらの記事をご覧ください。
参考:自閉症について- e-ヘルスネット – 厚生労働省
参考:ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群) | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
ADHDとは
ADHD(注意欠如・多動性障害)とは、-Deficit/Hyperactivity Disorderの略称で、先天的な脳の神経障害です。何らかの理由で脳内の神経伝達物質「ドーパミン」が不足することで起こります。
ADHDについてより詳しくはこちらの記事をご覧ください。
LDとは
LD(学習障害)とは、
〇知的な遅れや視聴覚の障害がなく、教育環境も整っている。
〇本人も懸命に頑張っているのに、「読み書き」や「計算」など特定の領域で学習の遅れがみられる。
この2つの条件を持つ場合、学習障害に該当します。
LDについてより詳しくはこちらの記事をご覧ください。
その他
特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)
DSM-IV-TRという検査方法で定義されていた発達障害です。DSM-5の検査方法からはASDに統合されています。
「グレーゾーン」
近年、発達障害に関する研究が進み世間にも「発達障害」が浸透してきています。その影響でこれまでは「変わっている人」と認識していた人も、「もしかしたら自分も発達障害かも…」と疑う人が増えました。
しかし一定の診断基準に満たないものに関しては、発達障害とは診断されません。そのため、特に症状が表面化しにくいASDの特徴に該当している方にとっては、このグレーゾーンに苦しんでいることが多いです。
何か他の人と違うことには気づいているのに、障害と診断されないわけです。そのため、いつまでも『自分の努力不足である可能性』も考慮しないといけないため、辛い思いをされている方も多いのではないでしょうか。
番外編: HSP
「HSP」とは、『Highly Sensitive Person』の略称で、直訳すると「とても繊細な人」という意味です。最近よくメディアでも「生きづらい人」として取り上げられています。世界で5人に一人の割合で存在していると考えられています。
HSPについてより詳しくはこちらの記事をご覧ください。
参考:HSPとは | HSP診断テスト
参考:HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは?その特徴や症状|心療内科・精神科|うつ病治療の新宿ストレスクリニック
発達障害の原因(わかっていること、いないこと)
わかっていること
発達障害の原因は環境や親の育て方とは関係なく、生まれつきの脳の機能の障害であると考えられています。
わかっていないこと
原因は特定されておらず、根本的な治療法もまだわかっていません。
発達障害を持つ方の行動の傾向一覧
多動性
じっとしていることが難しく、動いてはいけないような場面でもそわそわと立ち上がったり、歩き回ったりしてしまいます。またこの多動の症状が脳内(思考)だけで起こっている場合があります。
不注意
集中することが難しく、頭の中で絶えず思考が行き来したりするので、気が散りやすくなります。(ただし、興味のあることなどにはとても深い集中をみえたりすることがあります。)
衝動性
決まった順番を待てなかったり、事前に物事をよく考えられないので、金銭の余裕を考えずに高額の買い物をしてしまうことがあります。
発達障害を持つ方の行動の傾向についてより詳しくはこちらの記事をご覧ください。
曖昧な物事が苦手。表情や言葉の裏から、意図を読み取れない。
・日常のやり取りに支障をきたしやすいです。
・暗黙のルール(共通認識で省略している対話)を理解することができません。仮に暗黙のルールを事前に聞いていても、今のケースがそれに該当したかの判断が苦手です。
こだわりが強い
特定の物事に関してのこだわりが強いです。時間、規則など。
周囲の状況に左右されないことも多く、他者から「融通が利かない」「わがまま」「頑固」と受け取られやすいです。臨機応変に対応することが苦手なため、結果的にこだわっているように見えるケースもあります。
変化が苦手で、定型パターンを好む
・日常生活のパターンや通勤ルートなど、決まった順序にこだわる。
・マニュアルや決まりにこだわり、臨機応変な対応が苦手。
感覚過敏
五感のうち、いずれか複数の感覚が過敏なケースが多いです。
【感覚過敏の主な種類】
- 視覚:光に弱い。陽の光やパソコンのモニターの光など。
- 聴覚:必ずしも音量の問題とは限らない。ひそひそ話や電車の発車音など、特定の音に敏感なケースが多い。
- 嗅覚:特定のにおいが苦手なケースがある。必ずしも臭いものが苦手とは限らない。香水や芳香剤の香りなどが苦手なケースもある。
- 味覚:特定の感覚の味に敏感なケースがある。など
- 触覚:特定の材質の衣服を着ると、じんましんが出る。洋服のタグが気になる。部屋の室温などに敏感。など
また、敏感な部分の反面、鈍感な部分を持ち合わせている方もいます。
その他:周囲の人の感情や雰囲気を過敏に受け取ってしまうケースもあります。
その他の特徴
・対人緊張、対人不安などの二次障害を併発しているケースが多くあります。
・感情表現が苦手です。傷付きやすいですが、表情に出せません。冷淡に見られやすいです。
発達障害は症状に個人差がある
同じ診断名であっても人により行動が全く異なる場合がある
ここまで主要な発達障害の特徴や症状について見てきましたが、じつにさまざまなものがあると思われたのではないでしょうか?
例えば「空気が読めない」といわれる症状があったとして、行動としては
・寡黙:一切喋らない
・話しすぎ:聞く耳を持てない
このように、全く異なる行動としてあらわれるために症状が異なるようにみえても「空気が読めない」という症状として共通しているというようなことがあります。
検査はどうすればいいか
医療機関で発達障害の検査を受ける
医療機関で発達障害の検査を受けるためには、まず成人の患者を受け付けている医療機関を調べておくとよいでしょう。
現在通院中の精神科・メンタルクリニックがある場合は、紹介状を書いてもらって受診するのが一般的です。
詳しい方法は受診先の医療機関にお問い合わせください。
治療はできるか
通院して投薬、カウンセリングなどの二次障害(うつなど)の治療を行う場合があります。
通院が必要になる理由としては、
・不眠など健康状態に問題がある
・仕事上などでの困りごとがある
というようなことがあります。
どこに相談すべきか
医療機関
受診している医療機関(精神科・メンタルクリニック)があれば、まずは主治医に相談するのがよいでしょう。
市区町村の役所の福祉課
お住まいの自治体に専門の相談窓口があります。電話、もしくは面談を受け付けている窓口が市区町村のホームページなどで紹介されていますので、そちらから問い合わせができます。
※医師以外には発達障害の診断はできませんので、地域での生活上の困りごとなどの相談にお役立てください。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、『自分が希望している仕事のスキルを学べる』『就職に関する相談やサポートを受けられる』など、主に障害を持つ方の働くニーズにマッチした支援を受けることができる障害福祉サービス施設です。
これから事業所を探す場合はこちらの記事も参考にしてみてください。
発達障害の困りごと解決事例集(仕事編)
発達障害の人が向いている仕事
働いたことがなく、はたらけるのかどうか不安に思っている方もいらっしゃると思います。下記の記事も参考にしてみてください。
関連記事:【実習でチェック!】大人の発達障害を持つ方の仕事選びのヒントとは
関連記事:テレワークで活きる発達障害の特徴【強みを活かす仕事をしよう!】
発達障害に多い悩み……朝起きれない場合の対処法
障害特性による睡眠時間の不足・二次障害のうつによる不眠などの原因が考えられます。
仕事で遅刻が多くなると、厳しく注意を受けたり評価が低くなったりして仕事が続けにくくなりがちです。
自分の遅刻の原因を分析し、以下の記事も参考に対処していきましょう。
関連記事:ADHDは朝が弱い!?朝起きられない原因、遅刻癖を治す方法は?
関連記事:【【体験談】ASD男性、うつ・不眠症状で眠れない時に行った改善法
やる気がないと言われる場合の解決方法
自分では仕事を真剣に頑張っているつもりなのに「やる気がない」と言われてしまう……。
そんな場合に考えられる原因と対処法をこちらの記事にまとめています。参考にしてみてください。
関連記事:【発達障害】怖くて自己判断できない…仕事の判断力をつけるコツ5つ
苦手なことをお願いされた場合の解決方法
企業で仕事をしていく上で、苦手な仕事を頼まれたらどうすればいいのでしょう。
コミュニケーションが苦手なために断ることが出来ず、無理をして引き受けてしまい、負担になったりミスをして注意されたりしてしまう場合もあると思います。
こちらの記事も参考にしてみてください。
発達障害の困りごと解決事例集(生活編)
お酒等の嗜好品に依存してしまう場合の解決方法
依存症の治療には医療機関や家族など、本人以外の周囲の協力も重要になります。
より詳しくはこちらの記事をご覧ください。
参考:アルコール依存症とは|アルコール依存性について|東京アルコール医療総合センター
参考:発達障害と依存症(マリアの丘クリニック)
生活する上での支援を受けたい場合どうすればいいのか
障害者手帳の給付、障害年金の支給、医療費の一部給付などの支援が受けられます。
具体的な手続きなど詳しくはこちらをご覧ください。
衝動的な行動でいつも後悔してしまう場合の解決方法
自分でできる対処法に「イフゼンプロファイル」があります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【発達障害】自己肯定感が低い原因は?働く自信が持てない時の対処法
自己肯定感が低くなると以下のような思い込みにとらわれて就職・就労にも支障をきたすことがあります。
- ・他人の言葉を素直に受け止められなくなる
- ・自分を信じられず、辛いときに挫けやすくなる
- ・疑い深くなり、他者を敵視しやすくなる
関連記事:【発達障害】自己肯定感が低い原因は?働く自信が持てない時の対処法
関連記事:大人の発達障害を持つ方が、職場で劣等感を持ったときの対処法
一人暮らしがしたい場合のヒント
経済的、体力的、生活スキルなどの問題で自立して生活するのが難しい場合、テレワークやカスタマイズ就業といった新しい働き方が解決のヒントになるかもしれません。
関連記事:カスタマイズ就業とは(手段と効果)
発達障害の困りごと解決事例集(コミュニケーション編)
劣等感を持ってしまい他者とうまく話せないときの解決方法
セルフエスティーム(=自己肯定感)は自分自身の「心の軸」となります。そのため様々な行動や判断、物事への受け取り方など生活の様々な場面に関わってきます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
自分の気持ちを伝えること・相手の話を聞くことが難しい場合
発達障害でコミュニケーションを苦手とする大人に向けた訓練として「アサーショントレーニング」があります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
悪気はないのに相手を怒らせてしまう場合
悪気はないのに相手が怒ってしまったり関係が切れてしまったりする場合、自分の言動や行動のクセを見直すことが解決のヒントになるかもしれません。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
発達障害の就職活動で注意すべきことは
まずは自己理解
自己理解を深める方法には、周囲に分かりやすく自分の障害特徴を伝える「ナビゲーションブック」の作成が役立ちます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
いろいろな働き方があることを知る
障害者であることをオープンにして働くか、クローズにして働くかというだけでなく、業種・職種・雇用形態・勤務形態など、働き方にもいろいろあることをリサーチしてみましょう。
特に近年はテレワークの仕事も増えてきています。テレワークには通勤の負担が少なく、自分に合った環境で仕事ができるというメリットがあります。
関連記事:【発達障害を持つ方の就職】あなたもできる「カスタマイズ就業」とは
関連記事:地方に住みつつ都市部の給料で働ける!「ふるさとテレワーク」を紹介
関連記事:【障害者雇用】パソコンを使わない仕事ってある?業種や働き方を紹介
強みを活かせることを選択
カスタマイズ就業とは、従業員と雇用主の雇用関係を、双方の課題解決のための需要を満たしかつ、お互いを活かしあえる方法で個別設計することを意味します。
これは障害を持つ方の強み、要望を実現するだけでなく、雇用主の課題にも応えられるように工夫し、企業の課題解決のために貢献できる職務領域を決定していきます。
関連記事:カスタマイズ就業とは(手段と効果)
今好きなことだけにとらわれすぎず、好きを増やしてみる
先入観にとらわれず、まずは行動してみることも新しい視点をもたらしてくれます。経験を増やし、自分の価値観をひろげてみましょう。
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応募企業の課題把握が大切
企業が採用によって解決したい課題はなんでしょうか? 分析し理解することが応募書類作成や面接の対策に重要になります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
障害を持つ方へ。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
まとめ
問題解決のお役に立ちましたでしょうか?
発達障害者によくある疑問や困り事と対処法をまとめましたので、お困りの際はぜひ目次から見直してみてください。
自分を見つめなおす機会となり、なりたい未来に近づけるヒントになれば幸いです。