仕事を休まないで、どこまでも続けてしまう
こだわりの強さから、どこまでも仕事を続けてしまう
ASD(自閉症スペクトラム)は、かつて「アスペルガー」や「自閉症」など呼ばれていた障害が統合された名称です。特性として「真面目」「こだわりの強さ」な一面があります。
そのため仕事においてもサボることなく、真剣に取り組むことが多いのではないでしょうか。ただし、「ちゃんとにやらなくてはいけない」「もっとやらないと気が済まない」という気持ちに追われてしまうリスクを持ち合わせています。
よって長時間労働・過重労働などにつながる働き方をしてしまいやすいです。
いつの間にか、ひどく疲労している
また、アスペルガー(ASD)を持つ方の場合「仕事をやり過ぎている」ことに気づかないことがあります。それは周囲から「もっと手を抜いていいよ」「サボってもいいよ」と言われるケースがほとんどないことからです。
周囲も懸命に仕事をしていて、厳しい言葉などが飛び交っていると「自分ももっとやらなくては」と思いがちです。周囲の雰囲気を読むことが苦手なこともあり、自分と他者を正確に比較することが苦手です。
仮に上司などから「『適当なところ』で休んでいいよ」と言われても、いつが「適当なところ」なのかが分かりません。
したがってどこまでも仕事をしてしまい、気づいたときにひどく疲れていることはありませんか?疲れを自覚しないことはもちろん、仕事をし過ぎてしまうことであらゆるリスクを生んでしまいます。
では、アスペルガーを持つ方がどうして仕事を休む(止める)ことができないのか。詳しく解説していきます。
【アスペルガー】仕事を休まない理由
過集中になっている
発達障害を持つ方の多くは、過集中になりやすい傾向があります。周囲が全く見えなくなるほどに集中してしまうことで、時間や状況を把握することをしにくくなります。
また、自分自身の状況も把握しづらくなります。目の前の対象のみに注意を向け続けていることで、疲れに気づきにくく気づいた時のショックも大きくなります。
納得のいくところまでやらないと気が済まない
冒頭で触れたように、アスペルガーを持つ方は「こだわりの強さ」を持っていることが多いです。そのため、自分で掲げた理想や目標に向かってどこまでも努力できる強さがあります。
しかし反面、自分でセーブすることが苦手なケースがあります。自分が「よし」と思えるところに至るまで、周囲の状況や自分の状態を無視して取り組んでしまうリスクを持ち合わせているのです。
仕事の「切れ間」を見付けられない
仕事をしているときに、仕事を中断するタイミング「切れ間」には2種類あります。
①行っている作業が完了、または作業段階が進行したとき
②自分で「止めよう」と思ったとき
アスペルガーを持つ方は、曖昧な物事をうまく捉えられないことが特徴です。そのため、明確な表現や定型パターンに執着しやすい傾向があります。
この特性によって「②」の止め方が苦手なのです。「自分の気分」という曖昧なものから動くのではなく、「この作業が終わったら」「ここまで進んだら」に固執してしまうのです。
これにより、疲れていても気づかないことにつながります。
休むと不安。もったいない気がする
アスペルガーの特性により、悲観的になりやすいです。そのため、仕事においても「常に悪いことを想定して行動する」ことが多くなります。
「もっとやっておかないと間に合わないかもしれない」「もっとしっかりやらないと怒られるかもしれない」「まだどこかに漏れがあるかもしれない」など、不安が募りやすいのです。
その不安を埋めようと、「今ここで休んだらもったいない」と感じてしまいます。
休まず仕事をし続けると、瞬発力が落ちやすい
仕事を休まなければ、それだけ仕事に取り組む時間を多く取れるわけです。しかし、それが成果や作業量につながるかというと、ほとんどがつながらないでしょう。
ずっと仕事をしていると、体が疲れます。さらに同じことをずっと意識していることで、精神的にも疲れやすいのです。
これにより「瞬発力」が落ちていることが多いのではないでしょうか。パフォーマンスを維持していくためには、適度な休息をとりながら行うことが不可欠なのです。
では、どうやって休息を取ればいいのか?コツをご紹介します。
休み時間をうまく取るコツ
①周囲の方に声をかけてもらう
仕事には様々な状況がつきものです。そのため普段は注意出来ていても、急いでいるときやミスなどをして動揺しているときなどは気づきにくくなります。この様な時の過集中は精神的の不安定なため、さらに疲れやすくなります。
ですから職場の上司とよく相談して、周囲の方に声をかけてもらうようにお願いしましょう。相談するきっかけをうまくつかめない時はこちらの記事を参考にしてください。
声をかけてくれた時はくれぐれも「仕事を邪魔された」など、不満を持たないようにしましょう。
②自分なりの合図を決めて、休むタイミングを図る
中にはテレワーク・在宅勤務などで、勤務中は一人で作業をしている方もいるのではないでしょうか。その場合はスマートフォンのリマインダー通知機能(アラーム機能)などを活用していきましょう。
ポイントは「自分の意志以外で動くもの」です。自分で止めることができない手段で休憩の合図を自分に出せるように心がけていきましょう。
関連記事:【テレワークで職場定着】自分で行う「メンタルヘルス対策」とは?
③自分の作業スピード、所要時間を知る
普段自分がどれくらいの速さで作業を終えているか、どれくらいの時間がかかっているかを確認して「所要時間」を把握していきましょう。
所要時間が分かると普段の勤務時間の中で、ペースをつかみやすくなります。残り時間からどれくらいできるかの見通しも立ちますから、精神的にも落ち着ける材料となるでしょう。
④短期・中期の目標を定めて、作業段階を把握する
さらに「見通し」を明確にしていくために、短期(○日、○時間単位)、中期(おおむね一週間単位)の目標を定めていきましょう。
上司と相談していくことで、より正確な作業予定を立てることができます。目標を立て明日以降の見通しがクリアになれば、不安から無理を重ねることもなくなるのです。
⑤長期的なスケジュールを決めて、進捗を確かめる
④の目標を立てていくために、長期的(年間)なスケジュールを立てておくとスムーズに進みます。年間のスケジュールを立てることで、それに基づいて月間・週間と道筋を立てやすくなります。
アスペルガーを持つ方にとって、「見えないもの」が多いことは不安材料になります。このように「見えるもの」に変える工夫をすることで、落ち着いて仕事に取り組むことができるようになるのです。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
自己管理はどんな仕事においても軸となる、大切なスキルです。特に障害者雇用においては企業が最も重視している能力になります。
疲労や状態を自覚し集中をうまくコントロールすることができれば、もともと持っている真面目さやこだわりの強さで成果が生まれてきます。
もしもどんな工夫をしても一向に休む時間が作れないという場合は、Salad編集部までご相談ください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。HSPの特徴に多く該当している。こだわりが強く、どこまでも没頭してしまう傾向が強い。意識的に休憩を取るように注意している。余談だが、この記事の執筆中に1時間の休憩を取っている。