会話に独特な言い回しが多い
特性や育つ環境によって話し方が独特になりやすい
アスペルガー症候群は、現在は「ASD(自閉症スペクトラム)」という名称で診断されています。ただし「暗黙の了解が分からない」や「雰囲気から察することが苦手」な特徴などから、便宜上で現在もアスペルガーを使用するケースがあります。
アスペルガー(ASD)の特性そのものは先天的なものです。しかし特性に加え、その後の育ち方の影響からも話し方が独特である場合があります。
では、どうして話し方が独特になりやすいのでしょうか。代表的なケースをご紹介したのち、原因と注意点をお伝えします。
【アスペルガー】独特の言い回しが多いケース
状況に関わらず、難しい話し方をする
特に改まった会話でなくても、難しい話し方をすることがあります。例えば、一般的には
「自分はこう思うよ」と言うところを、「自分としてはこのように考える所存です」などの表現で会話を進めていくのです。
このような言い回しが周囲に違和感を与えることはもちろん、誤った使い方をしていても自覚していないこともあります。
他人事のような表面的な言い方になりやすい
例えば、自分の具合が悪い時に「今日は気分が悪いので、早退させてください」と伝えるケースがあるとしましょう。この様なときに「本日は気分的に問題がありそうです。安全性も考えて早退した方が的確かと考えています。」というような表現で話すケースです。(意思決定を相手に委ねるような締め方になりやすいのも特徴です)
このように、まるで自分のことではないような表現に聞こえることがあります。
この例は分かりやすく極端な例にしていますが、随所にこのような独特な言い回しをするケースがあるのです。
四字熟語やカタカナ用語(和製英語)などを多用する
その他四字熟語や相手が「どういう意味?」となるようなカタカナ言葉を多く使うことがあります。相手がどうして理解しないのかに気づかないこともあり、コミュニケーション方法に悩む原因にもなり得ます。
独特な言い回しは、誤解や不満を生みやすい
独特な言い回しは特徴として、「周囲の事情とは無関係」であることが多いです。そのため、状況によって相手に失礼な態度として映ったり、誤解を呼ぶようなことになったりします。これもまた、周囲から「空気が読めない」と呼ばれる一因です。
難しい言葉などは、相手からすると「生意気だ」「見下しているのか」と不満に感じることも考えられます。
それではなぜ、アスペルガーを持つ方がこのような言い回しになりやすいのでしょうか。
参考:「大人の自閉症」3つの特徴、冗談が通じない・同時進行が苦手… | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン
独特の言い回しになりやすい理由
対話経験が少ないことが多い
アスペルガーを持つ方は特性上、人と関わる機会が少ないことが多いです。そのため、対話の経験も比較的少ない傾向があります。
そのため、会話の中から「最適な言葉」を見つけ出すというチャンスが多くありません。したがって自分のイメージの中で言い回しが形成されていることが多いのではないでしょうか。
臨機応変な対応が苦手で几帳面な性格のため、状況に適応できない
言葉遣いは状況によって変化します。かしこまった言い方が必要な時もあれば、砕けた言葉遣いを求められるケースもあるでしょう。同じ意思をあらゆる言葉で表現しなければなりません。
しかし、アスペルガーを持つ方はこの「応用」が苦手です。特に雑談などの砕けた話し方を求められる時に困りやすいのではないでしょうか。几帳面であることも重なって、どこまで話し方を崩せばよいのかに困りやすいのです。
この程度が分からないことで「堅物」と思われたり、反対に崩し過ぎて相手を傷つけてしまうケースを呼んでしまうのです。
自分の話し方に強いこだわりがある
こだわりが強いことから、自分の話し方にも強いこだわりを持っているケースもあります。
「言葉」に強いこだわり持っている場合、自分の理想としている話し方をそのまま会話でも表現してしまうことがあるのです。
この場合、「分かりやすい言い方にしなさい」と言われても「どうして自分が変えないといけないんだ?」と不満に感じる可能性もあります。
このような原因から独特な言い回しになることがあります。では、会話においてどのような注意が必要なのでしょうか。
独特な言い回しが多い会話の注意点
会話は自分のためではなく、相手に伝えるためのものと意識する
まず会話は、言葉として相手に発した時点で「相手のためのもの」です。どんなに美しい言い回しだったとしても、伝わらなければ意味がありません。
相手に伝わるかよりも、自分がどう話すかに意識が向いていませんか?この場合、相手の心情を無視した、きつい言葉になりかねません。
常に言葉は「相手のためにあるもの」という意識をしましょう。
できる限り口頭ではなく、書面でのやり取りを優先する
口頭で会話をすると、表情や抑揚のつけ方なども表現として伝わります。独特な言い回しをする方の場合、抑揚のつけ方も独特な場合が多いです。そのため、口頭での会話だと誤解されるリスクが高まるおそれがあります。
仕事上の報告など正確に相手に伝えたい場合は、書面での伝達方法を優先していけるようお願いましょう。
言い方の違いから誤解をしないように心がける
独特な言い回しをする場合、自分自身も「独特な言い回し」を基準に考えることがあります。これにより、相手から聞いた言葉を誤って受け取るおそれが出てきます。
このような言い回しの違いからすれ違いを生まないよう、相手が普段からどんな話し方をしているか注意を向けなければなりません。
上司と相談して話し方について相談する
自分がどれだけ周囲と違う話し方をしているかは、自分では気づきにくいものです。ですから上司と相談して、分かりにくい表現はないかなどの相談をするようにしましょう。
また、普段の会話などでも分からなかったときに「今のは『気分が悪いので、早退します』の言い方が合っているよ」など指摘してもらうようにする方法も効果的です。
もし、相談するタイミングが分からない場合は、こちらの記事「【ASD・アスペルガー】悩み事を相談できない…きっかけの作り方4つ」を参考にしてみてください。
独特の言い回しは、仕事で活かせる可能性もある
独特な言い回しは周囲との誤解を生みやすい点で、注意が必要であることが多いです。しかしながら、作家やコピーライターなどでこの表現が活きるケースもあります。
その他広告業やなど、インパクトを与える必要があるときには独特であることが貴重なスキルになるのです。そのような個性を活かす働き方を目指していくのが「カスタマイズ就業」です。
障害を何とかカバーして適応させていくのではなく、ありのままの自分で活躍できる環境を求めていくスタイルです。
「今の職場で会話が通じない」「自分らしく働いてみたい!」と感じていたらぜひSalad編集部にお声かけください。
仕事・働き方に悩んでいたら。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
まとめ
いかがでしたでしょうか。
このような言語表現をしている場合、辛い思いをしてきた方が多いのではないでしょうか。だからこそ意地でも変えたくないと意固地になっているかもしれません。
しかしながら会話で自分の意思が相手に通じたとき、心地よい気持ちになれます。勝つ自信も戻ってきます。
諦めずにもう一度、自分の話し方を見直してみましょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。学生時代に独特な言い回しから孤立することが多かった。のちに言葉遣いの細部まで徹底するような厳しい職場であったため、会話の際に目立つことは少なくなった。現在は話し言葉と独特な表現を使い分けている。独特な言い回しは詩の表現として活かし、出版経験もある。