ASDを抱える方に知ってほしい、他者とのコミュニケーション改善のヒント4つ

ASDは神経発達のズレ。個別に特有のコミュニケーション視点がある。

1)障害を持つ方の社会進出が進む

ASDとは、自閉症スペクトラムという発達における症状のひとつです。社会的なコミュニケーションが苦手であったり、興味関心が偏るなどの特徴があります。感情や認知といった領域において、異なる発達を遂げたことによる現れとして、近年では障害というよりも神経発達のズレなどと呼ばれたりもします。

現在、障害者総合支援法などをはじめとする法律が施行され、過去と比較して精神障がいの研究が進み、認知や診断が行われやすい世の中になりました。身近なことで例えますと、少し昔、学校で「変わっている子」として私的な感覚で違いを見られていた人が、今では「精神障害」として公的な感覚で「違い」をとらえられる機会が増えたことなどが挙げられます。就職におきましても、法定雇用率の指定など社会的にも障がい者の社会進出への期待は高まってきています。

その一方で「障害を持つ方と健常者との接し方」に関して、障害を持つ方のみならず関わっていく健常者の方も同様に悩んだり、迷っている方は多いのでないでしょうか?

インターネットで検索しましても、関連の記事やマニュアルが多く存在し、その種類も様々です。今回は、数多く存在する障がいの特徴の中でASD(自閉症スペクトラム)を抱える方に向けた問題と改善策についてお話ししたいと思います。

ASDの特性により、普段のコミュニケーションにおいて、あなたや他者を不安にさせるモヤモヤ4つ

1) 見通しの立たないことへのモヤモヤ

『見通しの立たない想定外が不安』

健常者と比較して、ASDを持つ方に多く見られる特性として、曖昧な物事に対しての対処が苦手という点が挙げられます。

この曖昧な「モヤモヤ」を健常者の方は自分で想像し判断して埋めていくことができても、ASD特性の方は見通しの立たないことや想定外な物事などに不安を感じ、自身で判断することや行動するということが苦手であり、つい確かなものを求めてしまいストレスとなるケースがあります。

そのため過去に確かな成功例のあるルーティーンに安心を感じるASD特性の方も多いのではないでしょうか。

2) 相手への伝え方に関するモヤモヤ

『相手の言葉の温度がつかみづらい』

今相手が話したことが本気なのか、冗談なのかがうまくつかめないことに苦しんだことはありませんか?

健常者が怒ってしまった、でもその理由が分からない・・など、その違和感だけがASD特性の方に伝わって辛い気持ちになる・・という悪循環にうなずきたくなる方もいるかも知れません。

3) 自分の中の感情のモヤモヤ

『不安ではあるけど具体的な説明ができず、伝えられず苦しい』

ASDの特性を持つ方の中には、自分の感覚や感情を具体的な言葉でもって表現することができないことで悩むというケースがあります。

懸命に話して伝えたはずなのに、相手に首を傾げられたりするとものすごく落胆し、自信を無くしていきさらに伝えることが苦手になってしまう・・という経験などから相手に説明するときの言葉に必要以上に深く考え込んでしまい言葉が表現できなくなるケースがあります。

「どうせ理解されないなら・・」とつい自分の中にため込んでしまい、ストレスになっている方も多いのではないのでしょうか。

4) 努力して周囲に合わせることでのモヤモヤ

『健常者に合わせようと努力することで生まれるモヤモヤ』

過去の経験や症状が軽度な場合、特性を理解したうえで意識してカバーをしながら、見た目は健常者と同じように振舞える方もいます。「健常者の方は感じないことだから、こんなことを聞いたら迷惑をかけてしまう」と感じて聞かずにため込んでしまい、自力で解決しようとするケースです。

しかしながら、無理をして他の方と同じように接することはストレスを抱えるため大変疲れやすく、さらに周囲からは健常者のように見えるため、この疲労にも気づかれにくく本人も訴えにくいため、周囲の方が気付いた時には症状は悪化していた、というケースがあります。

ASDを抱える方に知ってほしい、他者とのコミュニケーション改善のヒント

1) 健常者に判断を求め過ぎない。

健常者との対話の中で「うまく通じなかった」「嫌な顔をされた」という経験から自分を責めすぎていませんか?

「会話が苦手」というコンプレックスなどから、自分の伝え方が正しいかどうかの確認を健常者の反応に頼り過ぎてしまい、表情や返答に一喜一憂してしまうケースがあります。健常者にも会話が得意な方がいれば、会話が苦手で大人しい方も同じように存在します。ですから健常者は指示や相談の回答をするけれど、審判ではないことを心に留めておけば、ゆとりをもって接するきっかけになります。

2) ルーティーンに工夫。業務や行動を記録する。

今年の体調や行動、業務を記録しておき、来年のルーティーンを少しでも多く増やすことで、安心感を増やしていく作業です。

仮に今年の業務が去年の記録と異なっていたとしても、去年と比較した「見通し」として考えることもできます。想定外のことだったことが想定の中に入ってこれば、去年モヤモヤで悩んでいたことも「去年のあれですよね?」と聞けるようになるかも知れません。

その想定以外のことのみ健常者の方に伺うようにしていけば、健常者の方の負担も軽減され、コミュニケーションもスムーズになる可能性が出てきます。

3) 特性を生かした伝達手段を配慮する。

口頭会話でのやり取りが苦手という場合、日誌やメモなど書面での伝達方法、メールやチャットなどのツールを使用した方法など、ASDを持つ方の特性に沿った、考えや意思を整理してからやり取りができるような環境をお願いしていく方法です。

伝達メモなどの様式を作ったり、メールでは件名(タイトル)を見れば相手はその趣旨が分かるくらいに結論を先に記載することなども良いでしょう。健常者でも相手の話をかみ砕いて理解する作業というのはエネルギーを使うことです。

イメージとして苦手な口頭でのやりとりでは「はい」、「いいえ」だけに抑えた会話に近づけるように、特性を生かした伝達方法で詳細のコミュニケーションができると両者が安心して対話することができるようになります。

4) ASD特性を抱えている方同士のコミュニケーション改善法

自分と同じ特性であるASDではありますが、相手が自分の意思にそぐわない反応をしたときに、「同じ考えのはずなのに・・」と過度な期待が原因で不満やストレスが生まれて両者のコミュニケーションが難しくなるケースがあります。

そのため「特性が同じであれば、意見も同じとは限らないこと」を自覚したうえで耳を傾けることが大切です。

まとめ

ASD特性を持ったの方はコミュニケーションにおいてうまく意志を外に出せない方が多く、そこにストレスがたまり悩んでいる方も多い現状があります。しかしながら、決められたルーティーンに沿って行動することを好むASDを持った方に多い特性を、中には決められたことを毎日同じように行うのが苦手で、それを求めている健常者もいます。

ASDの特性を持った方には他の人が妥協したり、諦めてしまうようなことに、もう一歩踏み出せる大切な個性を持っていると心に留めておいてくださると幸いです。