うつ病などの気分障害、精神障害に悩む方が増えている
気分障害の患者数が増加している
「うつ病」という言葉を聞いたことがない…このようなケースが少ないと言えるほど、うつ病に悩んだ経験をされている方が増えています。
厚生労働省の統計によると、平成14年(2002年)当時の気分障害の患者数はおよそ71万人と計測されていますが、平成29年(2017年)時点ではおよそ127万人まで増加しているのです。これに統合失調症やその他の精神的な症状を含めれば、対象者数は2倍以上に増えます。
筆者も2010年にうつ病を発症した当事者です。『心の健康』に関して苦しむことがいかに大変なことで、いかに身近にあることなのかを肌で感じています。
うつ病って、どれだけの種類があるの?
しかしうつ病は、現在どれくらいの種類があるのでしょうか。「うつ」の存在自体は知っていても、細かい情報は知らない。そのようなケースもあるかもしれません。
今回は改めて『うつ病の種類・症状』について振り返ります。今後のうつ予防や再発防止のために、今一度情報を整理しておきましょう。
うつ病の種類は大きく分けて2種類
うつ病は症状の現れ方により、大きく2種類に分けられます。抑うつ状態のみ起こる『うつ病』と、抑うつ状態と躁(そう)状態の両方が起きる『双極性障害』です。さまざまなストレスが発症の要因になりえる、心身に支障をきたす精神疾患になります。
では、改めて2つの『うつ病』の症状を見ていきましょう。
【うつ病の種類】うつ病と双極性障害の症状
2つのうつ病の症状や治療法について、ポイント整理して解説していきます。
うつ病
うつ病は、主に意欲低下や気分が落ち込むなど症状が強い『抑うつ状態』になる疾患です。
◎主な症状
精神的症状…憂うつ、気分が重い・悲しい、理由もなくイライラしたり不安になる、興味のあったことに対しても意欲が沸かなくなる、事態を悪い方へ考えやすい など
身体的症状…眠れない・または眠りが浅い、食欲低下、体のだるさ、疲れやすい、頭痛や肩こり、めまいや口の渇き など
【周囲からこのような指摘があったら要注意】
・表情が暗い
・妙に涙もろい
・動作や反応が遅い
・落ち着きがない
・飲酒の量が増えている
◎治療法
抗うつ薬などを使用した薬物療法、思考の偏りを改善する認知行動療法や対人関係療法などの精神療法を主とする
特にうつ病を経験していない場合、実際にはうつ病の症状があっても『疲れているだけだ』『気のせいだ』と感じるかもしれません。そのようなケースで発見が遅くならないよう、こちらの記事「『疲労』と『うつ』の違いは?見分け方、疲れがひどい時の対処法は?」で、疲労との見分け方もチェックしておくと安心です。
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双極性障害
双極性障害は、かつては「躁うつ病」呼ばれていた疾患です。気分が落ち込む「抑うつ状態」と気分が高揚する「躁(そう)状態」を行き来する疾患です。この躁状態を見て「元気ではないか」と誤解されやすいこと、うつ症状のみ診断され治療がスムーズに進まないおそれがあるなどの問題があります。
◎主な症状
躁状態…疲れや休息する必要がないほど、常にエネルギッシュな気分になる。寝ることなく動き回る、相手を疲れさせるほど多弁になる、精力的に取り組むが持続しない、誇大妄想を持ちやすくなる、衝動的に行動しやすい など
軽躁状態…躁状態ほど周囲への影響は少ないが、気分が高揚しているのが客観的にも分かる状態。短時間の睡眠でも元気に動く、少し行きすぎかな…と感じさせる行動をするときがある など
うつ状態…この状態のみ、『具合が悪い』と感じる、うつ病の症状と同様気分や意欲が低下する。身体的症状もうつ病と同様の症状が起こる
◎治療法
気分安定薬などの薬物療法に加えて、精神療法などで長期的な治療を必要とする
症状が2週間以上続く場合は、双極性障害である可能性があります。躁状態に気づかずうつ病として治療することで回復が遅くなってしまうことのないよう、こちらの記事「双極性障害の診断基準~うつ病との違いを見分けるポイントは?」をチェックして、適切な治療を受けるための知識を身につけておきましょう。
関連記事:【精神障害】双極性障害とは?主な症状の種類、原因や治療方法を紹介
2種類のうつ病に加えて、非定型うつ病が注目されてきている
「新型うつ」という言葉を聞いたことがありますか?近年では先ほど紹介した2種類のうつ病とは異なる、新しいうつ症状が注目されています。
正式には「非定型うつ病」として研究が進められています。では「非定型うつ病」の症状についても解説していきましょう。
非定型うつ病とは
『非定型うつ病』とは自分が不快に感じていないことには問題なく過ごせていても、不快に感じることや困難に直面しているときに限り症状が現れる疾患です。元気なときと不調の時のギャップが激しいため、周囲から「甘えている」と誤解されやすい問題があります。
◎主な症状
・気分の変調がある
・うつ病は不眠がちになるが、非定型うつは過眠(寝すぎてしまう)になりやすい
・食事に関しても、食欲不振よりも過食になりやすい
・うつ病は自責の念が強くなりやすいが、非定型うつは他者や体制、環境に怒りを向けやすい
◎治療法
うつ病と同様、薬物療法や認知行動療法などが行われる。このほかに軽い運動や程よい経験から刺激を受けるなど、行動を改善することでも効果があると考えられている
非定型うつは自身でも「仕事が嫌なだけだ」「ちょっと気に入らないだけ」と誤解してしまうことがあるかもしれません。こちらの記事「『非定型うつ』とは。うつ病との共通点や違い、セルフケア法を紹介」をチェックして、自分の正確な状態を把握するよう心掛けていきましょう。
うつ病、非定型うつ病の症状を持ちながらの就職は、就労移行支援に相談してみよう
うつ病や双極性障害、非定型うつ病などで仕事を辞めてしまった…もしくは症状と向き合いながら仕事を探していることがあるかもしれません。
そのようなときは「就労移行支援事業所」に相談してみましょう。事業所ではそれぞれの障害に応じた生活改善や就職に関するアドバイスを受けられます。就職に関するさまざまなスキルを学ぶ機会も学べる施設です。
こちらの記事「うつ病や双極性障害を持つ方の就職には「就労移行支援」がおすすめ!」をチェックして、ぜひ相談を検討してみてください。
どこの事業所に行ったらよいか分からない、何をポイントに選べばよいか分からない…と言うときはSalad編集部までご相談ください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
うつ病の種類に関しての曖昧さは解消されたでしょうか。正しく症状を理解して、自身の健康管理に役立ててください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。30歳の時にうつ病を発症。復帰まで4年の期間がかかった。