相手の話の腰を折り、自分の話ばかりする…
会話で相手のペースに合わせられない
アスペルガーは、現在はASD(自閉症スペクトラム)という名称で診断されています。明確になっていないものや、基準が統一されていないものなどの「曖昧な物事への判断が苦手」という特性から、会話において相手のペースに合わせられず、苦労していることもあるのではないでしょうか。
気が付けば主語はいつも「自分は…」「自分の場合は…」などという自分の話になっていませんか?その数だけ相手が話したい気持ちを遮る「話の腰を折る」ことにつながっているかもしれません。
相手が複数人になると、さらに難しくなる
1対1でも難しいのに、相手が複数人になるとさらに難しくなります。誰を優先させればよいのか、はたまた均等にバランスを保ちながら話す…という作業が苦手な方が多いのではないでしょうか。
そのために、周囲との雑談がうまくできないことや会議や打ち合わせなどでうまく意見を言えない・的外れなことを発言してしまうなどの困難を感じやすいのです。
関連記事:【発達障害】複数人と会話ができない原因とコミュニケーションのコツ
相手の話の腰を折れば、不満に思われる
苦手な「言葉以外の情報から察すること」を求められる
会話とは、言葉以外の情報からやり取りすることも大切です。特に「奥ゆかしさ」を重視する日本では、言葉でストレートな表現をしない文化があります。するとその「言葉で見えない部分」は察して読み取らなければいけません。
そのため、アスペルガーを持つ方にとっては苦しい展開になりやすいのです。
話の腰を折らないように注意する必要がある
会話の空気全体をすぐにつかむ…ということは難しく、無理を続けて体調を崩してしまっては元も子もありません。
そのため、今回は会話で最も悪印象を持たれやすい『自分の話ばかりになる』ことの対策として、
○どうして話の腰を折ってしまうのか
○自分だけの話にならず、話の腰を折らないようにするにはどのような注意が必要か
についてお伝えします。
自分の話ばかりになってしまうのは、なぜ?
自分を知ってもらいたい
アスペルガーを持つ方は、普段他者とのかかわりが少ないケースが多いです。さらには過去のすれ違いなどの体験から「今度こそ誤解されたくない」という気持ちが強いことがあります。
そのため、自分が話すタイミングが来たとき「知ってもらうチャンスだ!」と感じすぎてしまうのです。
そのためお互いのやり取りのはずが、自分の一人の「演説」になってしまいます。
相手の反応を見られない
相手の反応を読み事が苦手です。
これは、
・対人緊張・対人不安の強さから落ち着いて話すことができない
・感情表現が苦手であるため、相手の感情についてもどんな表現なのかがわかりにくい
などを原因としています。
こうしたことから話しながら相手の反応を見ることができません。あらかじめ自分が決めた筋書き通りにただ「言葉を読んでいる」だけになってしまいがちなのです。
会話のリズムをコントロールできない
会話はよく「キャッチボール」と言われます。これは「いかに相手に伝わる言葉を選べるか」「いかに相手の言葉を正確に受けるか」のやり取りをボールの投げ合いに例えて表現したものです。
この「言葉を投げる」「言葉を受け取る」のリズムが合わないと、ボールの取りこぼし(言葉の聞き漏れ・誤解など)が生じやすくなります。
会話のリズムはどちらか一方の注意だけではなく、相互関係から生まれるものです。しかし、相手の事情を読むことが苦手なため、自分のベストなボールを投げる(自分が良いと思った言い方で話す)だけになってしまうのです。
この感覚のズレから、いつの間にか一方的な展開になっている事態を生んでしまいます。
雑談など、明確な目的がなく話すべき話題が分からない
雑談が苦手という方も多いのではないでしょうか。会議や大切な話などと違い、「何を話すべきか」が決まっていないからです。
そのため、何を話したらよいか分からないまま話したことが「自分の話ばかりだった」という事態になることがあります。
このような原因から、相手の事情を無視した話題展開になりやすいのです。それが「自分の話ばかり」になるリスクを高めてしまいます。では、相手と心地よい会話をするためには、どのような方法が必要なのでしょうか。
相手と心地よく会話するためには?
①一度に理解させようとせず、会話の回数を増やす
話す機会が来た時に「チャンス」だとプレッシャーをかけ過ぎないようにしましょう。圧力はあなたにかかるだけでなく、その緊迫感は相手にも伝わってしまいます。そのために相手に正しく伝わらない事態を招いてしまいます。さらには相手の話を受け入れるゆとりがなくなるのです。
すぐに誤解されないようにしたい気持ちはわかります。しかし、一度にすべてを理解してもらうことはどのような方でも無理です。
話すこと自体に抵抗があるかもしれません。しかし、相手に正しく理解してもらいたい場合は一度に話す内容を少なくし、話しかける回数を増やしていきましょう。少しずつ伝えていく中で、相手も「あなたが投げたボールの捕り方」を考えるようになるのです。
そうすれば無理に自分で説明しなくても、相手からあなたを知ろうとしてくれるようになります。
②話の区切りを意識し、定期的に相手の話を聞く機会を作る
会話の中で、話の区切りを意識してみましょう。常に相手の反応を見る、ということはアスペルガーを持つ方にとって至難の業です。
ですから「このタイミングで相手の様子を見る・話を聞く」という機会を決めてみましょう。半紙がひと段落した時に相手の様子を見たり「~さん(相手)はどう?」など相手に話し手になってもらったりなどを心がけましょう。
そうして相手の様子を見る癖をつけつつ、同時に会話のリズムもつかみやすくなるのです。
③雑談は、相手を傷付けない表現を意識する
雑談ができないことを相談したことがありますか?その返答として「当たり障りない話をすればいいんだよ」と言われてさらに困惑した方もいるのではないでしょうか。
雑談は、ひとつのテーマに向かって深く切り込んでいく内容にはなりにくいです。どちらかといえば、気軽に話せる関係を築くためのやり取りです。いわば、「キャッチボールの練習」なのです。
そのため、雑談の目的はいかにインパクトがあることを言うかではありません。相手を傷つけず、次の人へ会話のバトンを渡す作業が雑談なのです。当たり障りのなさは「相手を傷つけないこと」と覚えておきましょう。
④慣れるまで、聞き役に徹する
話すことのコントロールができないな…と考えているうちは、聞き役に徹することも方法の一つです。聞き役とはただ聞いているのではなく、相手の話にいかに的確な返しができるかを考えながら『聞くこと』に徹することをいいます。
そうして「相手からのボールの捕り方」「相手への返し方」を身につけることで、自分の言葉を話すタイミングをつかんでいきましょう。
参考:発達障害24歳男性と「会話」が成立しないワケ | ボクらは「貧困強制社会」を生きている | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
アスペルガーを持つ方は「相手と調子を合わせる」ということに疲れやすいのではないでしょうか。職場など、人の集まる場所では「適量」「うまいことやる」など、苦しいことにあふれています。
この状況の中で、自分で答えを見つけなくてはいけないことに苦しむかもしれません。「どうしても話が噛み合わない」「理解されないために自分のことを話し過ぎてしまう…」という悩みに苦しんでいたら、Salad編集部までご相談ください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。子供のころは、目立つことばかりを考えていいたため、自分の話ばかりをしていた。聞き役に回り、適切な返し方を学ぶことで、これを解消している。