ASDは、コミュニケーションの視点が異なることがある
1)ASDとは
ASD(自閉症スペクトラム)とは、発達障害の種類のひとつです。特徴として『コミュニケーションが苦手』『興味関心が偏る』などがあります。これは感情や認知といった領域で、異なる発達を遂げたことが原因と考えられています。そのため障害ではなく『神経発達のズレ』などと呼ばれることもあります。
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2)社会進出が進んでいる一方で、苦労している一面もある
現在、障害者総合支援法などをはじめとする法律が施行され、精神障害や発達障害の研究が進んでいます。その影響でASDを持つ方にの就職件数も増えてきています。法定雇用率の指定なども改正され、社会的にも障害者の社会進出への期待は高まってきているのです。
しかし、「障害を持つ方とのコミュニケーション」に関して、当事者のみならず周囲の方も苦しむことがあるのです。
参照:厚生労働省 平成30年度 障害者の職業紹介状況等
参照:コミュニケーションの困りごと全般:困りごとのトリセツ(取扱説明書)|発達障害プロジェクト
今回は、そのようなASDを持つ方で職場のコミュニケーションに困っていることへの改善のヒントをお伝えしていきます。
【ASD】コミュニケーションで不安になる・不安にさせる「モヤモヤ」
まずは、ASDを持つ方が具体的にどのようなことで困りやすいのかを一緒に振り返ってみましょう。
1) 見通しの立たないことへのモヤモヤ
ASDを持つ方に多く見られる特性として、曖昧な物事に対しての対処が苦手という点が挙げられます。ASDを持つ方は、見通しの立たないことや想定外な物事などに不安を感じやすい傾向があるのです。そのためこのような曖昧な状態の際に自身で判断することや行動することに困りやすい傾向があります。
この曖昧なものをはっきりさせようと、つい確かなものを求めてしまいストレスとなってしまうのです。そのため、ASDを持つ方は既にはっきりしているルーティーンにこだわるなどの行動に現れることがあります。
関連記事:アスペルガー(ASD)は暗黙の了解が苦手…曖昧な表現への対策4つ
2) 相手への伝え方に関するモヤモヤ
職場での会話の中で、『今相手が話したことが本気なのか、冗談なのかがうまくつかめない』などに苦しんだことはありませんか?
急に相手が怒ってしまった。でもその理由が分からない…など、違和感だけが残って不安になったことはありませんか。何が理由で怒らせているかが分からない、でもその理由が分からないことでさらにコミュニケーションに対しての自信を失ってしまうおそれもあるでしょう。
関連記事:アスペルガーで例え話がわからない…例え話を聞く・話すときのヒント
3) 自分の中の感情のモヤモヤ
ASDの特性を持つ方の中には、自分の感覚や感情を具体的な言葉でもって表現することができないことで悩むというケースがあります。
懸命に話して伝えたはずなのに、相手に首を傾げられたりしたことで辛い思いをしたことはありませんか。そうして自信を無くしてさらに伝えることへの苦手意識が強まりますよね。相手にこのような反応をされないために、説明するときの言葉に必要以上に深く考え込んでしまい、結果何も言葉が浮かばなくなるケースがあります。
「どうせ理解されないなら・・」とつい自分の中にため込んでしまい、ストレスになっている方も多いのではないのでしょうか。
関連記事:アスペルガーは何を考えているかわからない?意思疎通のヒント4つ
4) 無理をして周囲に合わせることでのモヤモヤ
ASDを持つ方の中には、自身の障害について理解し対処しようとする方もいます。理解することは重要ですが、無理をしてしまうリスクもあるのです。「自分は辛いけれど、他の人は感じないことだから、相談せずに我慢しよう」など感じて無理をすることはありませんか?その我慢が度を超えてしまい、適応障害などの二次障害に発展してしまうリスクがあるのです。
関連記事:適応障害の対策は?【ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー)】
このような「モヤモヤ」からくる悩みを改善するために、どのような対処法があるのでしょうか。
【ASD】コミュニケーション改善のためのヒント
1) 「周囲の方の反応がすべてではない」と考える
周囲との対話の中で「うまく通じなかった」「嫌な顔をされた」という経験から自分を責めすぎていませんか?「会話が苦手」というコンプレックスなどから、自分の伝え方が正しいかどうかの確認を相手に求め過ぎてしまうことがあります。
ASDを持たない方の中にも、会話が得意な方がいれば、会話が苦手で大人しい方もいます。ですから周囲の方の指示や回答を受けることと、自分の価値に対する評価と切り離して考えることが大切になります。こちらの記事を参考に、相手の意思に耳を傾ける工夫をしてみると良いでしょう。
2) ルーティーンに工夫。業務や行動を記録する。
対処として、自分のルーティーン(習慣など)に工夫をする方法があります。今年の体調や行動、業務を記録しておき、来年以降のルーティーンの参考としていくのです。これにより「明確なもの」を増やすことで、安心感を強めるという効果があるでしょう。
仮に今年の業務が去年の記録と異なっていたとしても、去年と比較した「見通し」として考えることもできます。
関連記事:【アスペルガー体験談】先の見通しがない不安感の影響や原因、改善法
3) 特性を生かした伝達手段を配慮する。
口頭会話でのやり取りが苦手という場合、日誌やメモなど書面での伝達方法、メールやチャットなどのツールを使用した方法など、ASDを持つ方の特性に沿った、考えや意思を整理してからやり取りができるような環境をお願いしていく方法です。
伝達メモなどの様式を作ったり、メールでは件名(タイトル)を見れば相手はその趣旨が分かるくらいに結論を先に記載することなども良いでしょう。こちらの記事を参考に、文章でのコミュニケーション方法を工夫してみると良いでしょう。
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まとめ
ASD特性を持つ方はコミュニケーションにおいて苦労しやすいです。それによりストレスが溜まり、うつ病などの二次障害につながるリスクもあります。しかしながら、決められたルーティーンに沿って行動するASDの特性が求められるケースもあるのです。
この記事で自分の特性を振り返り、心地よく向き合うきっかけになりましたら幸いです。
【筆者紹介】
1980年生まれ。ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。現在は就労移行支援での職場実習として、Saladの記事制作を行っている。