「トゥレット症候群」とはなに?
トゥレット症候群とは
『トゥレット症候群』とは、「チック」と呼ばれる症状が複雑に表れる神経発達症をいいます。この「チック」とは医学的な症状名であり、無意識のうちに行動が生じる症状(不随意運動)のことです。症状によっては、まるで意識して行っているのではないかと思われるほどの複雑な行動をすることがあり、精神疾患なのではないかと誤解されるケースもあります。
概ね1,000人に1~10人ほどの割合で発症すると考えられており、主に男性に多いのが特徴です。子どものうちに発症するケースが多いですが、大人になってから発症するケースもあります。
様々な障害と併存しているケースがある
また、トゥレット症候群は様々な障害と併存しているケースがあります。主な例が下記のとおりです。
・強迫性障害
・ADHD(注意欠如・多動性障害)
・ASD(自閉症スペクトラム)
・LD(学習障害)
・睡眠障害
・不安、抑うつ、怒り発作 など
このような障害と併存することによって、よりトゥレット症候群の症状が分かりづらくなるなどの困難が生じる可能性があります。
トゥレット症候群の主な症状
トゥレット症候群の主な症状として、以下の項目が挙げられます。
・咳、咳払い、鼻を鳴らす など
・瞬き、しかめ顔をする、口の周りをなめる など
・首振りなどの運動
・叫ぶなどの症状
・相手の言ったことをオウム返しする
症状が強い場合、下記の症状も見られます。
・自分を叩く、飛び跳ねる など
・その場にそぐわない発言や言葉を発してしまう など
これらの症状が突発的かつ自分の意識なく生じるのが、トゥレット症候群の症状です。
参考:やりたくてやっているわけじゃない!大声が出たり、体が動いたり…意に反して起こるチック。正しい知識と理解で受け入れて〜NPO法人日本トゥレット協会 | JAMMIN(ジャミン)
トゥレット症候群発症の原因は?
トゥレット症候群発症の原因として、先天的な「遺伝要因」と後天的な「環境要因」の両方が関係しているとされています。
【遺伝要因】
・大脳基底核という運動の調整に関わる部位を含めた脳内回路の異常
・ドーパミン系やセロトニン系などの神経伝達物質の異常
【環境要因】
・ストレスや過去のトラウマが影響する
・チックの症状を指摘され、意識することで症状が強まる
・意図せず相手の身振りや音声を真似てしまう
これらの原因により、大人になっても症状が影響してしまう可能性もあります。
成長につれて軽快するケースが多いが、大人になっても残る場合もある
トゥレット症候群は18歳未満の発症が多く、ほとんどが青年期や成人期に軽快すると考えられています。しかし、大人になってもトゥレット症候群の症状が軽快されないケースもあるのです。そのようなとき、治療や改善はどのように行えばよいのでしょうか。
参考:チック症、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群 | 小児期の発達障害や神経疾患の専門病院|瀬川記念小児神経学クリニック
トゥレット症候群の治療・改善方法は?
心理教育及び環境調整
医療機関とともに本人や家族、周囲の人々に症状の特徴について正しく理解してもらうよう取り組んでいきます。トゥレット症候群や併存の症状を持ちながら、社会適応できるように支援を受けていく流れです。
薬物療法
心理教育や環境調整のみでは解決されない場合、薬物療法を用いた治療や改善を行うケースもあります。
・併存症も含め、トゥレット症候群のどんな症状が現れているか
・副作用の程度や影響の有無
これらを考慮して行われる治療法です。
行動療法
『ハビット・リバーサル』と呼ばれる、チック運動と両立しないような動きを身につけていくトレーニングを行う方法です。日本では、あまり普及していないのが現状です。
これは認知行動療法の一つで、習慣や癖を逆転させるために行う方法です。『両立しない動き』というのはここでは『チック運動とは直結していないが、チック運動に結びついてしまう癖や習慣』を指します。例えていえば、『ペンを回す(と、鼻を鳴らしてしまう)』などです。ハビット・リバーサルは
1.意識化練習(行動を自覚する)
2.拮抗反応の学習(チック運動と異なる動きをする)
3.リラクゼーション練習(精神状態を安定させる)
4.偶然性の管理(うまくできたときは評価やご褒美がある)
5.汎化練習(自然にこなせるように練習する)
これらの項目に沿ってトレーニングを行っていきます。
参考:トゥレット障害を含むチック障害|東京大学大学院医学系研究科こころの発達医学分野 東京大学医学部附属病院こころの発達診療部 金生由紀子
参考:もう一つの強迫症への認知行動療法(ハビット・リバーサル・トレーニング) | EMDR專門カウンセリング・ルーム リソルサ B side
外科治療
これまでに紹介した治療法でも軽快しない難治性のトゥレット症候群の場合、手術などの外科治療が行われるケースもあります。
参考:深部脳刺激療法(DBS)【名古屋市立大学病院 脳神経外科学 診療案内】脳神経外科学|名古屋市立大学 大学院 医学研究科 神経機能回復学
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
トゥレット症候群を知るまで、筆者も申し訳なくも『咳払いばかり。うるさいな』『フンフンうるさいな』と思ってしまった時期がありました。これは『トゥレット症候群の存在を知らなかったから』感じた事でした。反対に、症状の存在を知っていることで理解や受け入れもスムーズにできるようになったのを覚えています。
トゥレット症候群を抱えながら就職を目指す場合、医療機関や支援機関、職場と相談しながら、理解してもらえるように伝えていくよう心掛けていくと良いでしょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれ。ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けており、HSPの傾向が強い。うつ病を発症した経験があり、症状が強い時にチック症に類似した動き(手の震えや瞬き)などを経験している。