仕事の報連相に苦労した経験がある
コミュニケーションがうまくいかない
筆者は発達障害のひとつ、「ASD(自閉症スペクトラム) 」を持っています。私生活でのコミュニケーションもさることながら、特に職場でのコミュニケーションには特に苦労しました。その中でも
・感情が先行するタイプの方
・言葉などの表現が曖昧な方
・発言や意思に一貫性がない方
これらの特徴を持つ方とのコミュニケーションに苦労したのです。30歳の時に職場の上司が原因でうつ病を発症しましたが、その上司がまさにこの条件全てに該当する方でした。
過去の経験から、仕事で自分の意思を表現することを拒んでいた
こうしたコミュニケーションでうまくいかない記憶から、「自分の意思を表現したくない」という気持ちを持つようになっていました。上司に懸命に伝えても、「?」と首を傾げられるたびに自信を無くしていったのです。このような原因から、仕事で報告・連絡・相談をする際に苦しむことがありました。
今回は、筆者がそのような「報連相」の問題を改善するために取組んだことを紹介していきます。まず、どのような問題を抱えていたのかを一緒に振り返っていきましょう。
【体験談】仕事の報連相に関して困っていたこと
報告時に緊張してしまうのが怖い
うつ病になってから、上司に首を傾げられる姿がトラウマになっていました。そうしたイメージが膨れ上がることで、原因の上司以外の方と会話するときも同じような緊張を伴うようになっていました。
・失敗したら、怒られる
・伝わらなかったら、また傷ついてしまう
・どうやって声をかけたらよいのだろう
このような不安から、まともに人と向き合えないほど緊張するようになっていました。
相手に理解されないのが怖い
上記の「首を傾げられた」イメージがいつまでも残り、自分の表現や意図を理解してもらえない不安に襲われました。理解されないと、自分を否定されているような感覚に遭ったからです。うつの原因となった上司からは「考えて動け」と言われていましたが、そうして考えて発した言葉が理解されなかったことで深く悩みました。
・相手がどんなことを聞きたいのか
・相手は自分の何を知りたいのか
・何が原因で理解されないのか
・話し方や表現で足りないことは何なのか
これらが全く分かりませんでした。また、不安が強すぎて「どうやって理解してもらえばよいか」という建設的な発想になりにくかったことも覚えています。
相談のタイミングが見つけられない
報連相のうち、もっとも苦手なのが「相=相談」です。これは今でも最も苦手なコミュニケーションです。理由は以下の通りです。
・報告・連絡はあらかじめ『台本』を用意しやすいが、相談は相手の反応次第で展開が変化しやすい
・報告・連絡は情報を伝えるのみで良いケースが多いが、相談は苦手な感情表現を伴うケースが多い。(感情を表に出すこと自体が得意でない)
・相談によって、相手の感情による刺激を受けたくない
この3点の特徴から、どう伝えればよいのかタイミングを見つけにくいことがあります。昔から「(筆者は)『間』が悪い」と言われた経験もあり、『空気を読まなきゃ、タイミングを見つけなきゃ』といつまでも時期を待ってしまうことも伝えられない原因の一つでした。
参考:自分の思いを伝えられない:困りごとのトリセツ(取扱説明書)|発達障害プロジェクト
参考:“自分勝手な人”、“場の空気が読めない人”、“人の話を聞かない人”、“物忘れやミスが多い人”、“衝動的に行動する人”、“根気がない人”、“期限を守れなかったり遅刻が多い人”、“片付けられない人”は性格の問題?一般社団法人 小郡三井医師会
関連記事:アスペルガーは『ロボットみたい』!?相手に伝わる感情表現とは?
関連記事: ASDを持つ方が「空気読めない」と言われるのはなぜ?改善法は?
これらの不安を抱えた状態で、次に障害者雇用として民間企業に転職しました。その中で少しずつ「伝わりやすいようにするにはどうすればよいのか」を考えられるようになりました。では、報連相で工夫している「コツ」を紹介します。
【障害者雇用】仕事の報連相で工夫しているコツ
①定期的に対話する機会を設けてもらう
普段から対話していないと、話しかけたときに相手に驚かれてしまいます。「普段は話さない人がどうしたんだろう…」という警戒心を相手も持つからです。また普段話していないと、相手は
・話し手(ここでは報告する自分)の困っている傾向が分かりにくい
・話し手の表現や言葉の癖を理解されていない
筆者はこの「基本情報」を飛ばして本題のみを伝えようとして、相手を困らせてしまうことがあります。その「本題」を伝えやすくするために、普段から対話する機会を設けてもらうことが大切だと感じています。
そういった意味で、この職場では常時メモのやり取りでもって対話する機会を持てたので有難かったです。
②『結論』『意思』から先に話す
筆者はどうしても「誤解されたくない」不安から、「1から10まで順に全てを説明しようとする」癖がついていました。しかし聞く側からすれば、これは理解に労力を要します。これは自分が反対に「聞く側」に立って理解したことです。
そのため、報告などの際には「結論」「意思」を最初に言うように心がけています。
・報告のタイトル(相談があります、○○に関して報告です、など)
・相手にどうしてほしいか
・自分がどうしたいのか
例えていうならば報連相は、「ミステリー小説」とは反対です。最後まで答えが分からない言い方ではなく、むしろ小説のタイトルが「犯人は○○」くらいのように『ゴール』を最初に言うように心がけるようにしています。
これを心がけてから、あらゆるコミュニケーションツールで伝わりやすくなった感覚があります。
③相手に求めるのは判断ではなく、選択してもらう形で伝える
特に仕事の進め方などで活用している方法です。上司に仕事について聞きたいとき、
「この仕事、どうすればいいですか?」
これだと相手はさまざまな情報や条件を考えなくてはなりません。これでは回答を受けるのが遅くなることや、難しくなりやすいと気づいたのです。そのためこれを
「この仕事、ルートAかルートBのどちらかにしようと思いますが、どちらが良いですか?」
という形に変えて伝えるようにしました。これであれば相手の返答は具体的になり「AかB」で済むことが多いです。考えてもらう負担も減らすことができるので、伝わりやすくなると感じています。
その他、報連相やコミュニケーションに困っていたら
その他コミュニケーションや報連相の方法に迷っていたら、下記の記事もチェックしてみてください。
【話し合いがうまくいかない場合】
「アスペルガーは話し合いが出来ない?相手に意見を伝えるヒント4つ」
【ADHDの特性によって報連相が苦手な場合】
「【ADHD】会話による「報連相」ができないときの改善のコツ5つ」
【相談のきっかけをつかめない場合】
ASD・・・「【ASD・アスペルガー】悩み事を相談できない…きっかけの作り方4つ」
ADHD・・・「【大人のADHD】仕事で辛い悩みを相談できない…原因と打開策4つ」
障害特性や悩む項目ごとに関連記事をまとめました。このいずれにも該当しない悩みがありましたら、Salad編集部までご相談ください。
仕事・働き方に悩んでいたら。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
まとめ
いかがでしたでしょうか。
もし苦手なものを克服することができれば、初めから得意だった場合よりも印象強く習得できると感じています。それは、できないからこそ「できるまでのプロセスや具体的な方法」をかみしめてクリアしているからです。
もしコミュニケーションの不安を解消したい、そう感じている方に少しでもこの記事が力になれれば幸いです。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれ、男性。ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。加えてHSPの傾向も強い。