大人になって「アスペルガー」と診断された
うつ病発症をきっかけに、アスペルガーの診断を受けた
筆者は30歳の時に、うつ病を発症しました。診察先の病院で検査を受け、「アスペルガー」とも呼ばれる「ASD(自閉症スペクトラム)」の診断を受けました。
診断を受けた最初の感想は「安心」だった
診断を受けた最初の感想は、「安心した」「ほっとした」でした。なぜなら診断される前から対人関係や精神的なことで問題を抱えていたからです。
人とうまく話せない、なぜか誤解される、悪いことをしていないのに嫌われる原因が、自分ではわかりませんでした。
『どうして自分は嫌われるんだ!!』とよく嘆いていました。昔のことをいつまでも引きずり出しては、家族を悩ませていました。
ASDの特性上「はっきりしないこと」があるのは辛いことです。答えのないことにまで根拠を求めようとして、このように家族や友人に迷惑をかけたこともありました。
診断を受けたことで、この「もやもや」が消えた感じがしました。「障害」という、着地点が決まったからです。
アスペルガー(ASD)と診断されて感じているメリット
障害者手帳の活用
障害者手帳の交付を受け、あらゆる場面で活用しています。
筆者が主に活用しているのは
○障害者雇用として働くこと
○公営バスなどの交通機関の割引制度
○美術館の入場料の割引
○携帯電話の通話料の割引
です。
また、障害者アートの団体に登録した時も、障害者手帳が必要でした。無料で美術館を利用している以上、美術でもって社会に還元していかないといけないという意識があります。
また、その他のサービスを利用するときは「支えてくれている」という気持ちで利用しています。当たり前のように使うことで、周囲から「ずるい」と誤解されてしまうからです。
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障害福祉サービスの活用
さまざまなスキルを学べたことはもちろん、自分自身を違った観点から考える機会を得られた事が大きかったです。
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自分の生きる(活きる)明確な目標ができた
筆者はもともと診断を受ける前から、様々な目標を持っていました。ただ、「すごいことをしたい」という漠然なイメージはあったものの、明確なビジョンはありませんでした。
障害の診断を受けたことで、
○自身が障害者として活躍する
○他の障害を持つ方が活躍できるようにきっかけを作る
の2つの目標が見えてきました。
この2つの目標を今後どうやって達成していくか、日々試行錯誤を繰り返しています。このお仕事も、目標の一つです。
参考として特性を知ることで、強みの伸ばし方を知ることができた
「自分の特徴」と言われても、モデルケースがないとなかなか説明できないものです。「ASD」という基準ができたことで、その基準をもとに調整していくことができました。
障害を知ったことで、「強みを知る近道ができた」感覚でした。
弱みの対処に関しては、まだまだ検証していく必要があります。
診断のデメリットは、自分自身は感じていない
それではデメリットはあるのかというと、筆者自身は感じていません。それまでに本当に生き方に関して困っているのであれば、デメリットはほとんど「ない」と言ってよいです。
特にASDを持つ方は、苦手な「モヤモヤ」「曖昧」の大きな要因が消えるので安心できるケースが多いです。筆者もそうでした。
ただし自分自身は受け入れられても、家族や友人が急に受け入れられるかというと、そうではないことがあります。そのため、診断を受ける前や後に家族に「安心」を伝えていくことが大切です。
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おわりに
いかがでしたでしょうか。
筆者自身も診断のデメリットは感じていませんし、同じ当事者のブログなどを見ても主だったデメリットはないとありました。
それなのにデメリットを確認する方が多いです。それは「障害者」という肩書をどう受け止めたらよいか分からなくて不安だからではないでしょうか。
障害者だから、能力が落ちるわけでも評価が下がるわけでもありません。障害を持っても持っていなくても、活かし方を知れば豊かな生活をすることができます。
ですから今生活において困っていることがあれば、勇気を出して医療機関の診察を受けましょう。きっとそこには安心が待っています。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。向上心が強い「強み」の反面、少しでも成長していないとストレスを感じてしまう「弱み」を併せ持っている。昨年就労移行支援事業所で1年間の訓練を受け、強みを活かす就職が実現した。