うつ病になると、些細なことでも自分で決められない
うつ病になると、何をするにも不安になる
筆者は30歳のとき、うつ病を発症しました。さまざまなリハビリを経て、さらには再就職も経て発症から4年後に社会復帰することができています。
このようにお話しするとスムーズに再就職が決まったように聞こえるかもしれません。しかし、実際には違います。
再就職はおろか「今日は遊びに行くか行かないか」や、レストランなどで「メニューの中からどの料理を頼もうか」などの些細な判断までも自分で決められなくなっていました。
「決める力」が低下し、再就職のタイミングを見失っていた
その「決める力」が低下したことで、再就職へ踏み出すタイミングも見えなかったのです。発症から3年ほど経ったとき、すでに体調は回復していて支援施設や医療機関の方からも「次の職場はどうなの?」と聞かれるくらいになっていました。
しかしながら、自分で「GOサイン」を出せないのです。「今はまだ、その時期では無いかもしれない…」という気持ちを持ったまま、週に一回ハローワークに行く「ポーズ」だけをするという時期がありました。
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さて、今回は
○うつ病になると、どうして自分で決めることができないのか
○再就職のタイミングを決めるために行った対策
についてご紹介します。
【うつ病】再就職のタイミングを決められない理由
先が不安。不安なことは決められない
うつ病になると、とにかく先が不安になります。これは症状である「意欲の低下」「気分の低下」も関係しているでしょう。
もちろん、「再就職に有利な資格などがない」「うつになった職場の悪いイメージが判断の軸になっている」という点もあります。しかし最も大きく占めていたのが「先の見えない、漠然とした不安」でした。
分からないものや知らないもの、見えないものに関しては「とりあえず疑う」という癖がついていたのです。そのため、再就職へ一歩踏み出すという「見えないものに対して行動する」ことができませんでした。
自分の意思を信用できない
さらに、当時は自分の意思そのものを信用することもできません。職場で辞めたのは「自分の能力が低いから」としか思っていませんでした。ですから仕事探しも、自然とできないものを条件から外す「消去法」の探し方になっていたのです。
そうして辿り着いた求人や就職のチャンスでさえ、「決めた自分なんて信用できない」と思ってしまっていました。ちなみに前の職場の退職すら、自分で決められずに上司に後押しされた形で辞めています。
仕事を探す幅も狭く、かつネガティブに見ることでタイミングをつかむことができなくなっていたのです。
迷うことで本来の目的を忘れてしまう
うつ病になったことで、決める力そのものが低下したとお伝えしました。これは心の中がたくさんの「どうしよう…どうしよう…」で溢れていたからです。「『どうしよう』と悩む理由が分からない、どうしよう…」の繰り返しで、本来の目的を忘れてしまうことがありました。
自分の意思で決められないからこそ、沢山の支援を求めた
筆者は「自分では決めることが難しい」と考えました。先のことを意識するほど上記の「どうしよう…」が増えるだけなのです。これでは解決しないと考え、様々な支援を求めました。
再就職のタイミングを決めるために求めた支援先
①医療機関のカウンセラー(臨床心理士)
【各支援施設との情報共有、健康状態の確認】
生活での悩みや、申告した健康状態から就職できるコンディションなのかどうかなどを相談しました。
また、以降ご紹介する就労支援センターや民間の就労支援事業、今回の再就職の時の就労移行支援にあっても、このカウンセラーの方から受けたアドバイスから始まったものです。就労支援センターの方とは、随時情報を共有してもらっていました。
カウンセラーからは「再就職できる健康状態であること」を確認したのです。
②地域の就労支援センター
【職場とカウンセラーとの情報伝達、求人の企業に関しての相談】
上記のカウンセラーから、2か所就労支援センターを案内していただきました。初めの場所は退職前に「復職方法」を、2か所目は退職後に「再就職の方法」を相談する形になっていました。障害者雇用の存在を知ったのも、この就労支援センターの相談の中からです。
当時はまだ自分の障害や症状について説明する力がありませんでした。そのため、再就職後も職場に障害特性を踏まえたアドバイスをしてもらえたことは助かりました。
就労支援センターからは「仕事ができる技能や知識があること」を知ることができたのです。
③民間の就労支援事業
【さまざまな働き方を知る】
カウンセラーの方から、民間の就労支援事業にも見学に行きました。筆者はそれまで公務員で、どんな職種や働き方があるかはほとんど知りませんでした。
再就職を決められないのは、「はじめから選択肢が少なすぎる」ことが原因でもありました。「自分ができる仕事」を知らな過ぎたのです。選ぶ項目が少なければ、仕事も見つかりにくくなります。そのたび「できるものがない」と自信を失っていたのです。
そのような意味でも、民間の就労支援事業で働いている状況を見られたことは大きかったです。
民間の就労支援事業の見学からは「自分ができる仕事の幅や種類」を確認できました。
④ハローワークや就職関連のセミナー
【就職に関わる情報を確認】
筆者はそれまで公務員であったため、求人票を出して面接して…という就職活動は初めてでした。そのため、履歴書の書き方も知りませんでした。
そのため、上記のカウンセラーの方や精神科デイケアのスタッフの方などと相談して、応募書類の書き方のセミナーに参加し改めて学びに行ったのです。
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今回の再就職では、就労移行支援事業所を利用した
上記の支援先を一元化できる
さて、この再就職活動を経て、障害者雇用で民間企業に就職が決まります。
仕事をしていく中で、自分自身でも障害の特性への理解も進んでいきました。さらには「障害特性を知ったからこそ新しい環境で仕事をしたい」という気持ちにもなってきたのです。
そこで今回の再就職では、就労移行支援事業所を利用しました。就労移行支援事業所では上記の支援先でお願いしたことを、就労移行支援一か所で行うことができます。
そのため、前回のような「理由もない不安」というものは少なかったです。さらには自分の障害特性に応じた働き方に辿り着くことができたので、スタッフの皆さんには感謝しています。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回筆者が支援を求めたときには、まだ就労移行支援事業所が浸透していない頃でした。そのため、時間と労力をかけて再就職に辿り着きました。何より、自分以上に支援をしてくれた方たちの労力が大きいことは言うまでもありません。
現在は、就労移行支援事業所があります。そのため少し前より、「再就職を決めるタイミング」が分かりやすくなったのではないでしょうか。そのような観点からも、もう一度再就職への一歩を踏み出してみませんか?
就労移行支援についてや、その他就職に関して悩んでいることがありましたら、ぜひSalad編集部までご相談ください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。32歳の時にうつ病を原因に当時勤めていた職場を退職。公務員で雇用保険が適用されないため、焦りや不安が強く現れていた。