障害者手帳には様々な福祉サービスがある
発達障害の診断を受け、精神障害者福祉手帳を取得した
筆者は31歳の時、発達障害の一つ「ASD(自閉症スペクトラム)」の診断を受けました。そのため自立支援医療の手続きとともに、精神障害者福祉手帳(以下、障害者手帳)の申請も行い取得したものです。
はじめは自立支援医療のみサポートを受けていましたが、当時参加していた精神科デイケアのメンバーの方たちとの話の中で、障害者手帳のメリットを聞き申請に至りました。
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障害者手帳には、様々な福祉サービスがある
障害者手帳には、障害者雇用への応募や就労移行支援などの福祉サービスの利用など、様々なサービスを受けられます。さらにこのほか、映画や美術館の入場料割引や公共交通機関の免除・割引などが受けられます。
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障害者手帳のサービスを利用していて「ずるい」と言われることがある
障害者手帳は先に紹介した通り、様々なサービスを受けられます。これにより障害を持たない方がお金を払って初めて受けられるようなことも楽しめたり、学べたりする機会があります。
これに対して、「障害者ばかりずるい」「楽をしている」と言われたことがあるのです。
今回は、筆者の経験をもとに
○主に「ずるい」と言われているサービス
○障害を持たない方・支援してくれる方に理解してもらえるよう、手帳の利用に関して心がけていること
こちらに関して紹介します。
【体験談】障害者手帳のサービスで「ずるい」と言われるサービス
就労移行支援
就労移行支援では就職に関するアドバイスを受けられるだけでなく、さまざまな知識や技能を学ぶことができます。
筆者も一年間就労移行支援に通った際、事実上無料に近い形でフォトショップなどの描画系のソフトを学ばせていただきました。
就労移行支援に通えない、障害を持たない方がフォトショップなどを使おうとすると、今でも年間数万円の料金を払わなくてはなりません。この「自分だけは払わなくてはいけない」事情だけを切り取られて「ずるい」と言われたことがあります。
映画や美術館などの入場料
障害者手帳を提示すると、美術館や映画館の入場料割引や、場合によっては免除されるケースもあります。受付にも料金表示されていることが多いので、多くの方が「障害者は割引される」ことを知っています。そのため、知人から「お前だけ無料でずるいな」と言われたことがあります。
交通機関の料金免除
障害者の経済事情にやさしいのが、「交通費の免除」です。筆者が結婚前に住んでいたところでは地下鉄料金の免除がありました。そのため、活動範囲や生活の範囲が狭くならずに済みました。現在は市営バスのみ免除を受けていますが、それでも助かっています。
このように交通費がかかることによって、「障害を持つ方の生活の範囲が限られないように」支援をすることが目的なのです。しかし、「障害者は電車賃がタダ」というところのみを切り取られて「ずるい」と言われることがありました。
障害者手帳のサービス利用が「ずるい」と言われやすい原因
障害を持つ方の経済事情などを踏まえずに言われることが多い
障害を持たない方が障害を持つ方と比較してどれくらい賃金を得ているか、障害者の経済事情を知らずに言っていることが多いです。障害を持たない人から「自分だけが損をしている」と思われ「ずるい」と言われることがありました。
特に発達障害は見た目からは困難さが分かりにくい
中でも特に発達障害などの精神障害は、外から困難さが見えにくいです。そのため、「不自由なところがないくせに、ずるい」と思われやすいのではないでしょうか。
障害を持たない方も、決して経済的に楽をしているわけではありません。ですからある程度このような思いを持たれることは仕方ないでしょう。しかし、筆者は周囲へ正しく理解してもらうために、サービス利用の際に心がけていることがあります。
障害者手帳のサービス利用の際に心がけていること
就労移行支援で学んだ項目は、卒業後にも活かす
就労移行支援で学んだ項目は、卒業後にも活かすように心がけています。下記に筆者の活かし方を紹介します。
【就労移行支援で学んだスキルの現在】
・フォトショップ…卒業後に自身でも購入し、利用を続けている
・タイピング…現在のライター業務の際に活きている
・エクセルやワード…通所時に再確認した項目を実際に仕事でも活用している
学んだ項目すべてではありませんが、「卒業したら終わり」にならないよう、できる限り卒業後にも活かせるように工夫しています。
もし、就労移行支援で何を学べばよいか分からない方は、「卒業後にも活かせるもの・活かしたいもの」を意識して探してみても良いかもしれません。
サービスの悪用をしない
障害者手帳のサービスは、障害を持つ方が生活の中で困難に感じていることをサポートすることが目的です。
ですからサービス利用の対象であったとしても、自分が不便に感じていないことに関しては使わないようにしています。ですから「自分と行けば映画が無料になるよ」などを文句に知人を誘うなど、本来の目的ではない『悪用』をしないようにしているのです。
自分の生活の中でかかわってくる問題にのみ、サービスを活用するようにしています。
受けたサービスに関して、できることを還元していく
「サービスを受けているだけ」という誤解を解くために、そのサービスを受けたことを活かし、支援してくれた社会に還元できるように考えることにしました。
例えば、
・美術館を無料で鑑賞することができた分、自分も美術でもって社会に貢献する
・就労移行支援で学んだことなどは、その良さや経験を他者にも伝えていく
このように受けるだけでなく自分なりに形にして、支援してくれている社会に「恩返し」していくことを意識しています。
カスタマイズ就業で、社会に「恩返し」する方法がある
今回は、障害者手帳のサービス利用に関する問題に対して紹介しました。上記でお伝えした心がけに加えてもう一つ、障害を活かして社会貢献できるチャンスがあります。
それが、「カスタマイズ就業」です。これは障害を持つ方の本来持っている長所を活かして働く、新しいスタイルです。自分の長所を活かして働くことで、社会に恩返しできるチャンスになるのかもしれないのです。
Saladでも、この「カスタマイズ就業」を応援しております。長所を活かす仕事として、こちらで非公開求人も取扱っております。
求人について、その他働き方についてなどご不明な点等ありましたら、Salad編集部までご相談ください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
自分の実情すべてを知らないのに、一面だけを見て「ずるい」「偉そうだ」と言われるととても辛いですよね。むしろ実情を知らないからこそ言ってくるケースが多い印象があります。しかし「ずるい」と言われるからといって、受けたいサービスまで遠慮してしまうことはないのではないでしょうか。
このような誤解を解き、理解を得るために筆者も様々な形で「恩返し」できる方法を考えました。もし他にも自分なりのサービス活用法や心がけがありましたら、ぜひSaladまで教えてください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。現在妻と二人暮らし。美術館利用の際同伴として妻を呼ぶ場合は、自分が無料になった分妻の分の半額を自分で支払うようにしている。