発達障害者雇用の方で、ルーチンワークを希望するケースがある
ルーチンワークを希望して就職活動を進めているケースがある
発達障害を持ち障害者雇用など、社会復帰への一歩として「ルーチンワーク」を希望しているケースがあるかもしれません。かつて筆者もうつ病を発症し、再就職の際にはこのルーチンワークを希望していました。
・カウンセリングなどの相談の中で、『ルーチンワークの仕事ならできるかも』という話が出た
・障害の特徴などを調べているうちに『発達障害は、ルーチンワークが得意』などと紹介されていた
筆者の場合は前者でしたが、就職活動の中でこの『ルーチンワーク』という言葉をいちどは聞いたことがあるのではないでしょうか。
参考:職場での知恵と工夫|発達障害を生き抜くために – 大人の発達障害|NHK福祉ポータル ハートネット
参考:ゆたか内科消化器科クリニック » 産業医研修会 発達障害
ルーチンワークって、具体的にどんな業務なの?
しかし、相談の中で『ルーチンワーク…ルーチンワーク…』と何となく耳に入ってはいるものの、具体的な説明となると困ることはありませんか?ルーチンワークとひとまとめにいっても、様々な業務があります。採用面接などでも
①『ルーチンワークが得意です』
②『ルーチンワークの中の○○の業務が得意です』
この2つのうち面接官や採用担当者(企業側)に伝わりやすいのは、後者の②ではないでしょうか。それはルーチンワークの中でもし苦手な業務に直面した時、ストレスなどから体調を崩してしまうリスクが考えられるからです。
そこで今回は『ルーチンワーク』について
・どのような業務があるのか
・メリット・デメリットはどんなところか
このようなポイントを改めて振り返っていきましょう。
そもそも、ルーチンワークとは?
ルーチンワークとは
『ルーチンワーク』とは
・仕事の中で日常的に行う、定型的な業務
・ほぼ毎日のように繰り返し行う同じ業務
・その他あらかじめ定められたルートやフローに沿って行う業務
これらの意味を持つ業務のことです。見通しが立ちやすいこと、業務内容に大きな変化がないことから、生活リズムを保ちやすいことが特徴と言えるでしょう。
ルーチンワークの業務にはどんな種類があるの?
業種によって、さまざまなルーチンワークが存在します。今回は、業種ごとに行われる代表的なルーチンワークをまとめました。
製造業:パターン化・フローに沿った仕事
製造業の場合、下記のルーチンワークが考えられます。
・工場で定められたポジションに沿って、同じ作業を続ける(全体の作業フローの一部を担う)
・毎日、同じ部品、製品を作り続ける(同じ製品を作る「パターン化」)
これらが製造業で行われる主なルーチンワークです。特に大量生産を行う工場では「ライン作業」とも呼ばれるケースがあります。
IT業界:確認作業
IT業界は、主にパソコンでの確認作業が多くなります。具体的には、下記のケースが考えられます。
・サイト・ソフトなどコンテンツのチェック作業(動作チェックなど)
・あらかじめ定められた項目を入力し続ける作業(入力業務など)
これらが主なルーチンワークです。中には「パソコンでずっと作業をする」と言う点でルーチンと感じるケースもあるかも知れません。
事務職:指示やマニュアル通りの仕事
事務職でのルーチンワークについて、どの部署でも共通して行う可能性が高い業務を紹介しましょう。
・書類作成(書類の内容を作るというより、規定分印刷する、製本するなど)
・ファイリング(書類や関連データのチェック・整理など)
・電話や来客対応(応答や対応の内容があらかじめ決まっているものなど)
・データ入力(あらかじめ『住所』『氏名』『番号』など、入力項目が決まっているもの)
・その他あらかじめ作成されたマニュアルに沿って、手順通り行う業務
このような業務が考えられます。事務職を希望している場合は、このようなポイントを把握し『具体的にどのルーチンワークができるか』を履歴書や面接などの際に伝えるようにしましょう。
発達障害にとって『ルーチンワーク』のメリットは?
試行錯誤や自分で考えて生み出すケースが少ない
ここまででお伝えしたように、ルーチンワークはあらかじめ決められたパターンやフローに沿って行うケースが多いです。したがって何もない状態から自分で考えて試行錯誤していく…というケースが少ないでしょう。
・まだ仕事や企業について知らないのに、自分で考えるなんてできない
・何が『正解』か知らないまま仕事をすることが辛い
・自分で考えたことで上司に怒られたらどうしよう
このような不安を持ったことはありませんか?その点、ルーチンワークの多くは職場から『正解』を提示されています。何をすればよいかがあらかじめ分かっていることで、安心して業務を行えるメリットがあるのです。
関連記事:【アスペルガー体験談】先の見通しがない不安感の影響や原因、改善法
効率的に仕事を進めやすくなる
同じ作業でも作業ルートなどが決まっておらず、自由に行えるシステムだとすればどうでしょうか。場合によっては遠回りをしてしまったり、無駄な作業をしていたり、そのたび考えるためにミスも多くなるでしょう。
これを「ルーチン」として順番や内容を決めておけば、行う作業は明確で、かつシンプルです。
・同じ作業を繰り返すことでスピードも上がりやすい
・より無駄がなく行いやすい
・臨機応変な対応が少ない
・自分以外の社員にも作業状況が分かりやすい(業務管理をしやすい)
このようなポイントから効率的に仕事を進められるメリットがあります。
集中力を活かせる
あらかじめパターン化されているため、頭の中の迷いがなくなりシンプルに仕事に集中しやすいです。そのため集中力を活かし、上記の「効率」をさらに高めるよう工夫することもできるかもしれません。
デメリットはあるの?
ここまでルーチンワークのメリットをお伝えしてきました。では、デメリットについてはどのようなものがあるのでしょうか。
・発想力や想像力を活かす場面が少ない
・自分の意思に反したことでも、パターンとして守らなければならないこともある
・単調な作業で、退屈を感じたりやりがいが見えなくなったりすることがある
・落ち着いて作業することが苦手な場合、ルーチンワークが苦痛に感じやすい
これらのデメリットがあります。ADHD(注意欠如・多動性障害)などの特性を持ち、同じ場所や状況にいることが耐えられないケースは、ストレスになりやすい一面もあるのです。
また、上記のように自分のアイディアで行うケースが少ないため、ルーチンワークから『自分らしさ』を見出すことは難しいかもしれません。
参考:ルーティンワークの意味は?メリットとデメリットも紹介します | 生活百科
参考:ADHDの症状―年齢に対して落ち着きがない、ミスが多い場合は注意 | メディカルノート
関連記事:【ADHD】落ち着きがない特性はクリエイティブな面も?理由を解説
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
企業には、より具体的に行える業務を伝える必要があります。就職後に困ることがないように、『説明できるように』知識を身につけていきましょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれ、男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。ルーチンワークは得意だが、やり過ぎて周囲との足並みがずれる、過集中してしまうリスクがあった。