直接聞かずにSNSから知ろうとするケースがある
コミュニケーションに困難を感じやすい
ASD(自閉症スペクトラム)は、コミュニケーションに困難を感じやすい発達障害です。かつては「自閉症」「アスペルガー(症候群)」と呼ばれていた障害も、現在はASDに統合されています。
主なコミュニケーションの問題として、
・対人不安で、他者に話しかけることができない
・相手の話を理解することが苦手
・心理的な距離感をつかめず、一方的な関わりになりやすい
などを抱えていることが多いです。
相手に関心があっても、うまく聞くことができない
「他者に関心がない」特徴があるとも言われるアスペルガー(ASD)ですが、全員に対して関心がないケースは少ないでしょう。職場や友人関係など、興味を持つ人も出てきます。
しかしアスペルガーを持つ方は、コミュニケーションに自信を持てません。さらには「自分なんて相手にしてもらえない」というネガティブさから、直接関わることができず悩むこともあるのではないでしょうか。
他者の情報収集のためにSNSを使用するケースがある
SNSとは
「SNS」とは、ソーシャルネットワーキングサービスの略称です。インターネット上に自身のプロフィールを公開し、社会的なコミュニケーションを行うサービスです。
日本国内では主に
・LINE(およそ8,000万人)
・Twitter(同4,500万人)
・Instagram(同3,300万人)
・Facebook(同2,800万人)
などのサービスが使われています。※()内は2019年6月現在の利用者数です。
ちなみに、Salad編集部もTwitterを活用しています。
対人緊張や対人不安を伴わず、相手を知ることができる
SNSはもちろん、インターネット上のやり取りの利点は「相手と対面せずに会話することができる」「自分のタイミングで情報が得られる」ことでしょう。
アスペルガーを持つ方は、対人緊張や対人不安を併せ持つケースが多いです。そんなアスペルガーを持つ方にとってSNSは、手軽に情報を得られるツールなのではないでしょうか。
参考:SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の仕組み|インターネットを使ったサービス|基礎知識|国民のための情報セキュリティサイト
相手を知るために、SNSやネット依存になりやすい
本人の知らないところで相手を調べようとする
興味を持つ相手に関わる情報を直接聞くことなく、SNSから調べようとするケースがあります。これにより、様々なすれ違いや相手の不満を生むことにもなりかねません。
では、なぜアスペルガーを持つ方がSNSやネットに依存しやすいのか。特性とのかかわりも踏まえて詳細の原因をご紹介します。
情報収集でSNSに依存する原因
対話による緊張や不安を感じなくて済む
まず、苦手である対面での会話がないことが原因の一つです。SNSやネット上であれば、空気が読めないことやうまく言葉にできるかなどの心配をする必要がありません。話しかけるタイミングなども考えなくてよいわけです。
相手のことを知るだけなら見るだけで分かりますし、自分のことを言いたいときも公開前に何度も見直すことができます。
このようにアスペルガーを持つ方にとって『低燃費で』情報を得られるため、ついSNSやネットに依存してしまいがちです。
表現したいこと、言いたいことをまとめて公開することができる
アスペルガーを持つ方は、会話のキャッチボールが苦手なケースが多いです。会話のなかで自分を説明・表現しようとして一方的な会話になってしまったこともあるのではないでしょうか。
関連記事:アスペルガーはすぐに話の腰を折る…自分の話ばかりするときの改善法
自分の情報を開示しなくても、相手の情報を知ることができる
相手のことを知りたいとき、会話ならばある程度自分の情報を開示する必要があります。しかしアスペルガーを持つ方は自分の情報を開示することに抵抗を持っていたり、表現できなかったりすることがあるのではないでしょうか。
結果「自分のことは伝えずに、相手のことだけを知りたい」という思考になる場合もあるでしょう。また、話す前に相手のことを調べておきたいという気持ちにもなりやすく、ついSNSで情報収集しすぎてしまうリスクがあります。
SNS依存は、相手との距離感が分かりにくくなる
先回りしても「空回り」するリスクが高い
上記のように、SNSで事前に相手の情報を調べる方がいます。相手の好みや思考を調べて、気を利かせたり話題を出したりした時の反応はどうでしたか?
…おそらく、驚かれたり覚えさせてしまったりしたのではないでしょうか。お互いの関係を深めるために調べたのに、「知り過ぎた」ことで拒否されてしまうこともあるのです。
お互いが分かりあうには、相手にも知ってもらう必要がある
お互いが分かりあうには、「自分が相手を知っている」ことと同様に、「相手もそれを把握している」ことが大切なのです。
相手はあなたがどれだけ自分を知ってくれているのかが分からないと、不安になります。自分が伝えていないことまで知られていると、「どこで知ったんだろう?」と驚くことでしょう。
ですから、「自分が知っていればうまくいく」とは限らないことを覚えておきましょう。では、SNSやインターネットを使いながら良好な対人関係を築く方法はあるのでしょうか。
参考:スマホやSNSに「依存」するのは理由があった | The New York Times | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
SNSを用いた情報収集・公開時の注意点
直接会う関わりの場合は、SNSは相手の同意の上で閲覧する
SNSを見ること自体は、悪いことではありません。相手のSNSがどんな人でも閲覧できる状態になっているのであれば、法律上は問題のないことなのです。
もともと離れた場所同士のかかわりの場合は、SNSからのやり取りになっても問題はありません。しかし、職場や知人など「直接会うこともある関係」の場合には注意が必要です。相手の知らないところで自分だけ知ろうとすることを、『不法侵入』のように嫌悪感を持つ人もいるからです。
ですから相手のSNSを見るときは、必ず相手の同意の上で閲覧することが大切です。
SNSやネットで知ったことを話すときには注意が必要
問題は「自分が知っているということを、相手も知っているか」です。例えば相手がインターネット上でしか発言していないことについて行動をとった場合、相手は「覗かれている」という気持ちになります。「気を利かせてくれた」とは思いません。
ネット上で知り得たことを直接対面した時に活かそうとすると、逆効果になることを覚えておきましょう。
普段とSNSのギャップに気を付ける
いわゆる「ネット弁慶」のケースです。普段対面するときは大人しいのに、ネット上では雄弁であったり、中には大胆な言動をしたりすることをいいます。
自分の情報を公開するときは、普段の自分とのギャップに気を付けなければなりません。「ネットであれだけ言えるのだから、普段ももっと言えるだろう?」と思われてしまいます。
普段の自分とのギャップが激しいと誤解のもとになりますから、注意が必要です。どうしても普段とは違う自分をネットで楽しみたい、という場合は非公開にするなどの措置を取りましょう。
自身の情報セキュリティを心がける
反対に「あなたの知らないところで、他の方があなたの情報を見ることができる」のもSNSです。
ですからSNSを使用する際には、できる限り
◎SNS内でもって、どのような人と関わりたいのか
◎SNSでもってしたいこと・目的はあるか
を明確にして、対象以外には公開しない・非公開にするよう心掛けなければなりません。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今、職場でも「分からない時は聞く前に調べて」と言う企業が出てきたほど、インターネットの情報はあふれています。だからこそ、使い方を間違えると大きな痛手を負うことにもなるのです。
ルールやマナーを守って、周囲との距離感に気を付けましょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。HSPの特徴も併せ持つ。現在もブログを書いているが、前の職場の方の「見ているという雰囲気は示すのにはっきりと『見ている』と言わない」という態度が不快だった。