アスペルガーは、先の見通しがないと不安感を持ちやすい
はっきりしないことに対して判断ができない
筆者は「ASD(自閉症スペクトラム)」と診断されています。これは発達障害の一種で、かつては「アスペルガー」や自閉症などと呼ばれていた障害です。
診断を受けた当初もカウンセラーから「先の見通しがないことが苦手」という特徴を聞いていました。その言葉通り、事前に明確な道筋が立っていないと強い不安に襲われます。
障害特性としても代表的な特性として聞いている
この曖昧な物事への判断が苦手な特性は、アスペルガー、ASD(以下ASD)を持つ方の代表的な特性として紹介されているケースが多いです。
この特性によって「ルーティーンワークや決まったパターンを好む」「変化や臨機応変な対応が苦手」というケースに現れます。
【体験談】先の見通しがない不安感からとった行動
不要なことまでも執拗なほどに準備をする
先が見えないために「どんな事態にも対応できるように」と、準備をしました。具体的にはその時に見なくてもよい書類をチェックする、同じ道具をいくつも用意するなどです。
この準備自体はとても大切なことですが、不安感からくる準備が実際に活きたというケースは少なかったです。それは「事態に対応するため」ではなく「不安を解消して、楽になりたいため」というところからきていたからでしょう。
過剰に作業をするリスクが高くなる
準備をするためには、労力が必要になります。そのため必要以上に作業をしてしまうリスクが高まっていました。事実このような状態の時の心身への負担は激しかったです。
「果報は寝て待て」「人事を尽くして天命を待つ」とよく言いますが、尽くしていたとしても不安で待つことに耐えられない気持ちがあったのです。ですから自分の不安感がなくなるまで作業を進めてしまっていました。
周囲とのすれ違いが起きる
これらを周囲とのかかわりの中ですることによって、すれ違いや相手の不満が生じることもありました。「ひとりだけずれたことをするな」「そこまでやらなくていい」とよく言われたものです。
しかし筆者には安心する根拠が見えないため、どこまでも考え込んでしまい辛い思いをしました。
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先の見通しがなくても問題がないケースがあった
このように、具体的な見通しや道筋が見えないことで過剰に作業をしてしまう問題がありました。
しかし全ての作業においてそうかというと、見通しがなくても全く問題がないケースもあったのです。そのようなケースから、見通しがないことで不安感を持つ原因に気づいたのです。
先の見通しがない不安感の原因
分からない・見えないことに関して悪いイメージしか沸かない
ASDはネガティブなイメージを持ちやすい傾向があります。
先の見通しが立たないということは、「良い方か悪い方かどちらでもないか」どう展開するかはわかりません。しかし筆者は、思い込みが強く「悪い方しか来ない」ものとして考えてしまっていました。
失敗した時に対処できるイメージや対策が見えない
先の見通しが見えないことで、行動をためらってしまうことがありました。これも不安感からくるものです。
しかしその一方で、見通しがなくても不安なくできているものは、「失敗したとしても対処できるイメージ」や「失敗した場合に行うべきこと」が見えていることに気づいたのです。
このように、
・この作業をしていれば、悪いことが起きないことを知っている
・失敗した場合でもカバーできる方法を知っている
ことで、先の見通しがない不安感をクリアしていたのです。
このようなことから「先の見通しがない事態に直面したとき、どう対処すればよいかを考えていきました。
先の見通しがない不安感をクリアする改善法
自分の行動や結果を記録しておき、以降の参考とする
自分がどのような方法で作業して、どんな結果が出たか。これをノートに書き留めておくように心がけました。見通しがないものの中には、過去のケースと似た展開の物事も出てきます。
しっかりと行ってきた経過や結果を覚えておくことで、自分自身で見通しを作れるケースも出てきたのです。
上司と相談し、作業の必要事項を確認しておく
当然仕事の中には、過去の自分の行動の中にはない物事もありました。そのような「全く新しい出来事」に関しては、上司に相談し必要事項や「ルート」を確認するようにしたのです。
それまでは「ありえない展開」の分までも準備や作業をしてしまっていました。しかし上司に必要事項を聞いておくことで、「準備するべきもの」が絞られてくるのです。
これにより、作業での負担が緩和されました。
相談することで見えてくる見通しもたくさんあります。もし相談の仕方が分からず迷っている場合はこちらの記事「【ASD・アスペルガー】悩み事を相談できない…きっかけの作り方4つ」を参考にしてみてください。
失敗した時や想定外のことが起きたときの対処法を確認しておく
上記の「自分の行動チェック」と「上司との相談」の中で、『失敗した時に行うこと』も確認しておくことで安心できました。失敗した時にどうしたらよいか分からなくて動揺します。ですから失敗した場合の道筋も、確かにしておくのです。
上司とも作業や対処のルートを確認しているため、周囲とのすれ違いも少なくなりました。
作業状況を記録し、繰り返し行う必要がないようにする
またどこを作業したか記録せず、闇雲に「とりあえず全部行う」という方法で無駄に労力を費やしていました。
このような無駄を省くために、自分の作業状況を記録するようにしました。それによって同じところや不要な部分を繰り返し作業する手間を省いたのです。
自分を活かす働き方で、先の見通しを生み出していく方法もある
今回は、「先の見通しが見えないときの不安を解消する方法」について、体験談をお伝えしました。これは「正解」が自分以外のところにあって、それに適応させていく方法です。
しかし、この方法以外に自分で見通しを生み出して提案していくという方法もあります。
それが、「カスタマイズ就業」です。これは従来の「苦手な部分の克服に向け努力する」働き方ではなく、「本来持っている個性や特性を強みに変えて働いていく」という働き方になります。
「どう取り組んでも見通しが立たず不安…」「自分のアイディアを提案してみたい」というときは、ぜひSalad編集部にお声かけください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
筆者がこの対処を見つけた最初のきっかけは趣味である「絵」からでした。絵を描いているときは全く完成イメージがないはずなのに、全く不安にならないのです。さらにはどんな事態になるのか想定外の事態を楽しんでいることもあります。
その理由が、
・どんな作品になっても良いものにできるイメージがある
・うまくいかなかったときもやり直し方を知っている
ことだったのです。
この考えが仕事にも当てはめられないかと感じ、対処を考え始めました。
このように、職場の悩みの「答え」が、職場だけにあるとも限りません。もし仕事で悩みが解消されない時は、普段の生活から探してみるのも良いかもしれません。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。30歳の時にうつ病を発症。のちの診察で広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。診断当初は見通しが見えず不安しかなかったが、現在はテレワークにおいて強みを活かす仕事を続けている。