苦手な仕事を頼まれたらどうしよう…
障害者雇用の場合、最初は負担の少ない仕事から始まることが多い
発達障害を持つ方の中には、精神障害者雇用で働いている方がいます。障害者雇用は法律上、企業側に
・障害者雇用の方に対する差別の禁止
・障害者雇用の方が働きやすいよう、合理的配慮を行う
これらが義務付けられています。そのため、就職当初は比較的負担の少ない仕事を担当したケースが多いでしょう。
徐々に仕事に慣れてきたころ、苦手な仕事を頼まれる可能性がある
徐々に職場にも慣れてきて、これまでの仕事もすぐに完了するほどスキルアップしていることもあるでしょう。そうして周囲も「慣れてきたのかな」と意識し始めると、自分にとって苦手な仕事を突然お願いされる可能性があるのです。今回は、この『発達障害を持つ方の苦手な仕事』について、
・どうして苦手な仕事をお願いされるのか
・苦手な仕事を「できない」と伝えるにはどうすればよいのか
この2点を中心に紹介していきましょう。
【発達障害者雇用】苦手な仕事をお願いされるのはなぜ?
「苦手な仕事である」と気づいていないため
就職前に応募書類や採用面接などで、企業に自分の障害特徴について伝えたという方も多いのではないでしょうか。『それなのに苦手な仕事を頼まれるのはどうして?嫌がらせ?』と感じているかもしれません。
しかし、相手にはお願いしていることが『苦手なことである』と気づいていない可能性があります。これは採用時に伝えたことが、働く現場にしっかり伝わっていた場合でもあり得ることなのです。
『採用時に苦手だと聞いていたものと、今お願いする業務は違うから大丈夫だろう』という解釈でお願いされる可能性もあるでしょう。
何をお願いすればよいか分からず、他に任せる仕事がないため
職場は「何ができないか」に関しては理解しているものの、「何ができるか」について分からないこともあります。もちろん、常に苦手ではない仕事を任せられる状況があればベストです。しかし、業務状況などにより「今、任せられそうな仕事がない」というケースも出てくるかもしれません。
このように他に任せる仕事がないために、苦手な仕事しかお願いできなかったというおそれがあるのです。
忙しいため、苦手だと知りつつお願いせざるを得ないため
障害者雇用への配慮は、双方が心身ともにゆとりある状況でないと行いにくいのが現状です。配慮する側も人間です。そのため、上司や職場全体が忙しい場合下記のような事態を招くことがあります。
・上司が出張や外出、会議などに出ていて不在にすることが多い
・他の人を気に掛けるゆとりがないほど、仕事に追われている状況
・繁忙期などで、少しでも助けを借りたい状態
このような事態を招いている場合、発達障害を持つ方にとって苦手な仕事をお願いされることがあるかもしれません。
成長や苦手克服を期待しているため
『今の仕事にも慣れてきたから、レベルアップしてほしい』『苦手なものを克服して、一回り成長してほしい』このような期待から、苦手な仕事をお願いされる可能性もあるでしょう。職場や上司に『どれくらい苦手なのか』という度合いが伝わっておらず、『ちょっと頑張れば克服できるのでは』と苦手な仕事をお願いすることがあるかも知れません。
関連記事:【発達障害】苦手克服を求める職場とは?頑張りすぎると適応障害に
苦手な仕事を「できない」と伝えやすくするためのコツ
苦手な物事に関しては、今の職場に結びつけて具体的に伝える
苦手な仕事だと気づいてもらっていないのは、採用時の伝え方が不足している可能性があります。例えば「電話応対ができません」と伝えたとしましょう。これに対し、職場が『電話応対が苦手な場合、自分の用件で電話を掛けることは可能かも』などの解釈をするケースもあるのです。そのため、電話自体が苦手な場合でも電話を使うように言われるという事態が生じます。
このような「意思疎通のすれ違い」が起きないよう、もう一度伝えた障害特徴を見直してみましょう。より具体的に、より細かく説明することで職場もお願いしてはいけない仕事が見えやすくなります。
電話の例で言えば、
・電話で話していると、緊張から具合が悪くなる(電話が苦手な原因を明らかにする)
・電話を受けることやこちらからかけることも苦手(電話の作業に対して細かく説明)
・電話の代わりに、意思の疎通をメモやメールで行いたい(代わりとなる対話手段を説明)
このように、『原因』『対象となる作業』『代替手段』の3つを踏まえて伝えると分かりやすくなるでしょう。
問題の有無に限らず、定期的に上司と相談する機会を設けてもらう
その時に問題がない場合でも、定期的に上司と相談する機会を設けてもらうようお願いするようにしましょう。「相談」というと数時間もかかるようなイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、上司とこまめにコミュニケーションが取れれば、実際に長い時間をかけて相談するのは困ったときのみで構いません。問題がなければ、付せんのメモやメールで状況を伝えるだけでも良いでしょう。
本当に大切なのは、「常にコミュニケーションを取れる状況を作っておく」ことです。何かあった時だけ相談する…という方法では、いざというときに行動しにくくなることを覚えておいてください。
得意なこともしっかりと伝える
先ほど「苦手なことを具体的に、明確に伝えるのがよい」と紹介しました。これは、「得意な仕事」に関しても同様です。どちらも明確にすることで、職場が『何を任せればよいか分からない』という状況にならないよう、心がけが大切です。
例えば、採用時に『パソコンが得意』と伝えたとしましょう。職場は「パソコンの何が得意なのか分からない」ために、お願いしづらいのかもしれないのです。または「パソコンが得意」ということから、自分が得意でない分野の作業をお願いされる可能性もあるでしょう。
このようなことがないために、得意なことに関しても具体的に伝えることが大切です。「エクセルの表作成が得意です」「ワードの文書作成が得意です」「パソコンの調子が悪い時、原因を調べることが得意です」など、お願いする作業が見えてくるような伝え方を心がけてみましょう。
苦手な仕事を頼まれたら、「できない」と伝える勇気を持とう
中途半端に受けてしまうことが、最も危険なこと
もし苦手な仕事を頼まれたら、しっかり「できない」と断る勇気が必要になります。
一番やってはいけないのが「中途半端に受けてしまう」ことです。『苦手ではあるけれど、やればできなくはないかな…』のように一度受けてしまうと、以降継続してお願いされる状況を作ってしまうことになるかもしれません。
苦手なことをお願いされたら、迷わず断る勇気を持ちましょう。
「できない」ときの伝え方は丁寧に行う
断る際に「できないと言ったら評価が下がってしまう」という不安を感じるかもしれません。このようなことがないように、伝え方を工夫することも重要です。コツとしては、
・なぜできないのか、原因を明確に伝える
・代わりにできることを伝える
・ひとこと、お詫びの言葉を伝える
この3つです。お詫びは『相手の期待や要望に沿えず申し訳ない…』という気持ちを込めて伝えることが大切なのです。
仕事・働き方に悩んでいたら。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「断る」という行為に罪悪感を持つことがあるかもしれません。しかし、発達障害は得手不得手のムラが激しい分、苦手なことに対する精神的負担は大きなものです。これは当事者以外の方には分かりにくいことが多いです。
職場に理解してもらうには、「どんなことが、どれくらい苦手か」明確に伝えていくことが大切です。長く働く為に、もう一度自分の障害特徴の伝え方は大丈夫かどうか、見直してみるのも良いかもしれません。