【同僚・上司向け】発達障害を持ち障害者枠で働く方の「辛いこと」とは

周囲と感覚が違うが故の「辛さ」が存在する

お互いの意図が噛み合わない様子

発達障害を持ち障害者枠で働く方が、『身近な存在』になってきた

発達障害がメディアで取り上げられるようになりました。その影響もあり、発達障害を持つ方の就職件数が増えています。障害を持つ方の求人応募には、一般枠の他に障害者枠があります。障害者枠とは、採用前に企業に自身の障害を公開して、企業や支援機関のサポートを受けながら働く枠組みです。

参考:平成30年度障害者雇用実態調査

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障害者枠で就職しても職場に定着できず、離職する方も多い。

しかしながら障害者枠での就職でも、職場に定着できずに離職する方がいます。発達障害者の離職理由でに特に多いのが「業務遂行上に課題がある」ことです。

【「業務上遂行に課題がある」に該当する事項(障害者職業総合センター研究部門)】
体力的にきつい、作業環境(音やにおい)が合わない、緊張感が強い、仕事が覚えられない、業務上の意思疎通が難しい(指示が理解できない、自分から話せない等)、作業能率が要求水準に達しない、作業品質が要求水準に達しない、遅刻や欠勤が多い など

参考:障害者職業総合センター研究部門 障害者の就業状況等に関する調査研究 障害者求人のみの追加集計結果の図表(平成29年)
参考:障害者職業総合センター研究部門 発達障害者の職業生活への満足度と職場の実態に関する調査研究(平成27年)

また、発達障害を持つ方の周囲の要望として多いのが「相談できる相手が欲しい」「明確な指示が欲しい」という統計が出ています。

発達障害を持つ方は、独特の感覚を持っていることが多く、周囲の方との感覚や価値観が合わないことがあります。業務にも支障が出てしまい結果障害者枠の方が孤立して、ストレスや不安から体調を崩してしまう…というケースが多いです。

それではまず発達障害を持ち、障害者枠で働く方の離職原因となりうる「仕事で辛いと感じていること」をご紹介します。

【発達障害】障害者枠の方が辛いと感じやすいこと

発達障害からなるストレスに悩む男性

本人の特性と、周囲のサポートが噛み合わない

【障害者枠の方の「助けてほしいこと」と、周囲の方の「助けるべきこと」がずれる】
発達障害がメディアで取り上げられるようになり、障害について知っている方が増えました。職場でも多くの方が、サポートが必要だという認識を持っています。しかし、実際に発達障害を持つ方が「助けてほしいこと」と、周囲の方の「助けるべきこと」「助けたいこと」がずれているときがあります。

この場合、障害者枠の方は「助けてくれない」「分かってくれない」とストレスになります。反対に周囲の方は「これだけサポートしているのに、不満そう」と、サポートする側もストレスになります。結果対処法が分からなくなり、障害者枠の方が孤立してしまいます。

本人のコミュニケーション傾向を決めつける

「何かあったら言ってね」では、何も言わない。しかし「何かあったら言ってね」というと、言いすぎる。

障害者枠の方に「何か困ったら声をかけてね。」「何かあったら相談してね」と声をかけたことはありませんか?発達障害を持つ方の中には、自発的に意思を伝えられない方もいます。こういった方の場合、申告を待つ態勢でいると、「言わないといけないのに、言えない。」とプレッシャーに感じるようです。

ただ、自分の考えを押し付けるタイプ、過剰に発信する傾向の強い発達障害の方もいます。自発的でない方もいれば、相手の考えに一切配慮しない主体性が強すぎるタイプの方もいます。

全く同じ言葉をかけても、それぞれの個別の特性の違いにより、ひとにより全く違う反応で返ってくることが、発達障害の方々の特徴です。発達障害という言葉は一緒でも、全く同じ特性を有する方はいないという前提を理解する必要があります。

「かわいそうな人」「できない人」という見方をする

【頑張って成果を出しても、平等に評価されないと辛い】
発達障害を持つ方は、出来・不出来にムラがあることが多いです。さらに障害を持たない方が「当たり前」のようにできていることが、できないことも多いです。そのため、「かわいそうな人」「できない人」と見られやすいです。

「障害者枠で、担当業務のスペシャリストになった。それなのに、周囲は『電話が取れない人』というイメージでしか見てもらえない。」「電話が取れないくせに偉そうだ」など、発達障害の弱点のイメージばかりが先行しやすいです。成果を上げても評価されないことが分かると、障害者枠の方は「認められていないのかな・・」とやりがいをなくしてしまいます。

障害者枠の方は職場でこのような「辛いこと」を抱えています。それではこの3つの辛いことに関してどのような解決策があるのか。以降、そのための3つのヒントをご紹介します。

障害者枠で働くひとの「辛いこと」解消のヒント

障害者枠の課題改善に向け説明する男性

本人の「できること・できないこと」を整理し、適切な職域設計をおこなう。

障害者枠の方のできること、できないことが明確にならないと、周囲の方も適切な支援ができません。これは本来、人事や職場上司の役割になってくるので、同僚として苦労されているようでしたら、部門責任者や人事に働きかけるべきです。あなたが上司の立場であれば、本人のできることとできないことを整理し、適切や仕事の割り振りを設計するなど、職域の個別設計(カスタマイズ就業)を試してみてください。

また、成果が出ていることなのに、相当の評価をせずに、できない社員としてサポートし続けることも不要な配慮です。障害を持つ方も持たない方も、努力や成果に対して相応の評価をすることが必要です。できないことを支援するよりも、できることを評価する指標に変化させると、劇的にパフォーマンスが変わることがあります。

担当業務に関して自立できているのであれば、組織としては良いことです。障害者枠の方が「できる」ことと「できない」ことを、しっかりと見定めていきましょう。過剰な配慮は必要ない、というスタンスで接してみましょう。

定期的にやり取りする場を設ける。(上司の場合)

発達障害を持つ方は、察するコミュニケーションが苦手なケースが多いです。そのため周囲への報連相(社内独特なルールなど)の方法に困っています。周囲に同じ感覚の人間が少ないため、「こんなことでみんなは悩まないから我慢しよう」「こんなことを相談したら怒られるのではないか」と、申告せずに我慢しているケースがあります。

その結果、ストレスを抱え込んで体調を崩してしまいます。あなたが上司や人事の場合は、定期的にコミュニケーションを取る場を設けましょう。あなたが同僚の場合は、相談を受けたらいつでも乗ってあげるという姿勢を示すにとどまり、積極的に関与することをやめてみてもいいかもしれません。あなたにはあなたの仕事があり、そこがおろそかになってしまうようであれば、双方にとっていい結果となりません。相手から過剰にコミュニケーションを受ける場合は、上司や人事に相談しましょう。その方にとって適切な役割を見出すことは、同僚であるあなたの責任ではなく、人事や経営者の役目です。

定期的に面談することが決まりとなっていれば、障害者枠の方も相談するタイミングがつかみやすく、ルールとなっているので安心できるようです。また、双方の業務事情などで相談の機会を作るのが難しい場合は、メモの交換などでも問題ないようです。

成果に対して適切な評価をする。

発達障害を持つ方の多くは、過去の経験などからネガティブになりがちです。障害者枠の方の努力が受け入れられないことが分かると、落ち込んでしまいます。障害者枠の方は業務上、つい「サポートしなければいけない対象」として見てしまいがちです。そのため周囲は障害者枠の方の「できないこと」にばかり注目しがちです。

マイナスな面も多いかもしれませんが、業務の成果を挙げていたら、適切に評価をしましょう。例えば、「よくやってるな」「頑張っているな」など声をかけることも「評価」です。マイナスな面については、職域から外すことも検討してみましょう。

まとめ

豊かな実りある社会へ

いかがでしたでしょうか。

周囲の方は障害者枠の方に対して、「苦手なことに対して、努力せずに逃げている」というイメージを持っていることが多いです。そのイメージを払拭するには、「障害者枠の方が、周囲の求めている努力をしていることを、双方が確認できること」が必要です。

マイナスな面を否定しすぎてしまうと、障害者枠の心身が崩れてしまいます。発達障害を持つ方は、居場所を確かにできれば、企業の戦力として活躍することができます。

お互いに活かし合える関係を築くことができるよう、課題の改善のヒントとなりましたら幸いです。

【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれの男性。大人になってから発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)と診断されている。
公務員として10年間勤務、うつ病を経験し民間企業の障害者枠の事務職として4年間勤務。就労移行支援に週5日、一年間通所してトレーニングを続けた。就活の結果、職種を変え、強みを生かせる就職が実現した。

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