ASD(自閉症スペクトラム)を持つ方が、仕事で明確化したいこと4つ

ASDの特性を有する方は、暗黙に対しての了解が苦手

健常者同士で行われる「コミュニケーションの省略」が困難

障がい者の雇用体制の見直しなどにより企業内で障がいを持った方とのコミュニケーションの問題が注目され、適切な関わり方について様々な見解がなされるようになりました。

その中で精神障がいの種類の一つであるASD(自閉症スペクトラム)の特性の方とのコミュニケーションで多い問題が、健常者同士では言葉にしなくても暗黙の了解で進められるやり取りを、障がいを持った方と行うことが難しいということです。

「普通はこう思う・こうする」の感覚のズレから、健常者同士では省略しているやり取りまで求められることへの疲労などが原因で、うつ病などを発症してしまう方もいます。この感覚のズレは、ASDの障害特性によるもので、感覚のズレそのものは変えられるものではないということも理解しておく必要があります。

ただ、コミュニケーションの取り方を工夫すると、仕事の成果はきっちり出してくれます。感覚のズレそのものを変えるのではなく、仕事の仕方、コミュニケーションの取り方を工夫し、仕事での不都合を解決し、活かしあいを実現していきましょう。

今回はそのような問題の解消に向け改善法をオフィス内での具体例を用いてご紹介致します。

オフィス内での具体例(事務作業の場合)

【A係長が、部下に仕事をお願いをしようとしています。】

(A係長の意図)
A係長がコピー機で会議資料の大量印刷の操作をセットしたが、印刷終了まで時間がかかるため、その間は自席に戻って業務をしていたいので、コピー機の付近にいる部下に印刷の状況を確認していてもらうよう依頼したい。

(健常者のAさんにお願いしたケース)
A係長「Bさん、ちょっとここのコピー機を見ておいてもらえる?
Bさん「分かりました。」
(A係長自席にいる間に印刷終了)
Bさん「係長、印刷が終わってきたのでお持ちしました。こちらに置いておきましょうか?」
A係長「ありがとう。助かったよ。」

個人差はありますが印刷が終了していれば、A係長のところに持っていく又は「印刷が終わりましたがいかがしますか?」と伺いに行くという流れが自然でしょう。

(ASD特性のCさんにお願いしたケース)
A係長「Cさん、ちょっとここのコピー機を見ておいてもらえる?
Cさん「分かりました。」
(A係長自席にいる間に印刷終了)
A係長、しばらくして終了しているコピー機に向かう。
Cさん「コピー機を見ておきました。」
A係長の心中「(持ってきてくれたっていいのに・・)」と不満顔。
Cさんの心中「(A係長はなんで表情が曇っているのかな・・・?)何か僕、悪いことをしたのかな・・・?

『見ておいてもらえる?』では、わからない。

このように、「印刷の状況を見た」健常者のBさんと異なり、言葉通りの「コピー機を見た」に留まりその後の状況判断までつなげることが苦手であるケースが多くあります。

ASD特性の方は健常者の反応や表情を見て違和感だけを感じ取ってしまうことで、ストレスにつながり体調悪化やさらにコミュニケーションに対しての自信を無くしてしまう可能性もあります。

そこで改善法として、今回の事例を基にしたASDを持った方の4つの「明確にしてほしいこと」をお伝えしたいと思います。

ASD(自閉症スペクトラム)を持つ方が「明確にしてほしいこと」4つ

1) 行動範囲(目的)を明確にする

ASDを持つ方に多いのは曖昧な物事に対しての判断が苦手という特性があります。

今回のケースですと「コピー機の状況=(ASD特性の方の中で)決まっていない曖昧なこと」に応じてどこまで動いて良いのかが分からず、不安やストレスが強まるケースがあります。

これをマニュアルなどにして「決まり」としてこちらの意思を明確にすることでASD特性の方も「ここまでは許される範囲だから」と安心して行動できるようになります。

〜具体例〜
「コピー機の印刷が終了していたのを見つけたら、係長に印刷終了のメモを渡すこと」
この時、どういった状態が印刷終了なのか、図面やランプの色などの見た目で判断できる基準、指示以外の物事が起きているときの対処法があると、理解を得やすくなります。

2) 成果指標を明確にする

ASD特性の方は自分がどれだけ仕事ができているか、明確な指標がないモヤモヤな状態によって精神的負担がかかります。

ASD特性の方が業務をどれだけ行えたのか点数などのできる限り公的で明確な評価で伝え、不安を解消させる方法です。点数が低かった場合に精神的負担をカバーする目的でどうすれば改善できるか両者で意見交換する旨もあると効果的です。

〜具体例〜
「コピー機印刷の状況を確認してもらえたことで、会議がスムーズに進みます。」このような目的を常に伝達することを徹底してください。この場合(例)の成果(目的)は、会議をスムーズに進行させることです。

どうすれば改善できるか両者で意見交換することについて、たとえば、「赤ランプがついているときはコピー機がエラーのため、次回以降同じことが起きた場合は用紙を渡す前に係長に伝える。もし不在の場合は、Bさんに伝える。」など想定を具体的に、対処法も具体的にすることが肝要です。
「誰でもいいから聞いて」など、対象を指定しない言い方は反対に誰に聞いたら良いか分からなくなることが多いため控えましょう。

3) 自分(健常者)ができないことも明確にする。

ASD特性の方に、こちらから一方的にその方の苦手な事項を聞いていってしまうと、過度な期待のかかった健常者に依存したコミュニケーションになる可能性があります。

自分が上司となる場合は、現場の仕事を1から10まで出来ない(事業牽引、社外折衝など行うべきことが多い)ため、いつでもフォローできるわけでないことも、具体的状況を交えて説明を行ったほうが賢明です。依存された姿勢で、業務に臨まれてしまうと、のちのちトラブルの元(何もしてくれない、、)になります。

また、同僚となる立場の場合は、お互いの知る情報が均等になるよう健常者の苦手な部分なども同じように伝えることでASD特性の多くの方が抱えている劣等感が緩和され、精神的に対等な関係を保ちやすくなります。相手の方の性格によっては、こちらから積極的に情報開示する姿勢を示していったほうが、協力関係を築きやすくなります。

〜具体例〜
コピーが終了し、不在の場合は、「印刷終了 〇〇時〇〇分」と記載したメモなどでも構いませんので、メモとともに、デスクに書類を置いておいてください。
※不在であったことが理由で、その後に声をかけたときに、嫌な顔をしてしまう場合は要注意です。不満を不満のまま残さずに、お互いが気持ちよく仕事ができる環境をつくることも上司の役割のはずです。

4) 報連相の機会を明確(定例化)にする

個人差があるものの、結論を自力で明確にしやすい「報告」と「連絡」は問題なく行える方も存在しますが、相手の意志を確認してからでないと結論が見えない「相談」にあっては特に苦手であるケースが多いです。相談を主体的におこなうことが、躊躇われてしまうケースが多いようです。

報連相の機会を決まり(週次など)として指定されていると、ASD特性の方でもコミュニケーションを取りやすくなります。

様式は双方のタイミングに関係なく、上司が求めているASD特性の方の仕事中での困りごとや要望などを予め項目として作成した書面やメールなどを用意しておくと、ASD特性の方の負担が軽減されます。

〜具体例〜
提出時期を指定。書面形式の項目例として体や精神の調子を数値表記、困ったことや要望など。ASD特性の方の書いたことに対する上司側のレスポンス欄があると、ASD特性の方の不安が解消されるようです。感覚のズレは個別に異なるので、詳しい設計は仕事内容と本人の特性により、カスタマイズする必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

同じASD特性の方でも経験や環境の違いで個人差があります。しかしながら共通して言えるのは曖昧なことに自分で区切りをつけるということに関して困っているASD特性の方が多くいるのではないでしょうか。

ASD特性の方とのコミュニケーションがスムーズに進まなくなるリスクと不安を解消するために、上記の4つを明確にしお互いが負担なく業務を行えるよう心がけましょう。