精神障害を持つ方の離職率を下げ、定着率を向上させるためのポイント4つ

障がい者の雇用形態の変化

1)精神障がい者の社会進出

近年、法体制の見直しや精神障がいの認知が広まり精神障がい者の社会進出が進んでいます。

精神障がい者の就職状況を確認しますと、平成18年のおよそ6千人から10年後の平成28年には4万人以上にものぼります。(平成29年厚生労働省統計に基づく)

2)精神障がい者の離職~1年で3割の精神障がい者が離職してしまう

しかしながら、採用後の課題である精神障がい者の職場定着が難しく、離職してしまう問題が挙がってきています。入社後1年間続く障がい者が障がい者雇用の方で7割、一般雇用の方ですと半分ほどになり、3割以上の精神障がい者が1年で離職している計算です。

全体的に精神障がい者は入社後3~5年で離職する傾向があり、他の障がい者と比較しても職場定着が短い現状があります。その原因として以下の3点の原因が考えられます。

精神障がい者の離職する原因3つ

1) 障がい特性によって、周囲に求められる対応が多岐にわたること

対人関係を理由に離職することは健常者同様、精神障がい者の離職理由でも上位に挙がります。

この対人関係の改善が困難な理由の一つとして、多様な障がい特性が存在することで、健常者の対応が多岐にわたることが挙げられます。以下の事例を用いて確認していきましょう。

◎事例1 精神障がい者同士での対人関係のトラブルに対する健常者の上司の対応

Aさん・・ADHD(注意欠陥多動性障害)を持ち衝動的に思ったことを口にしてしまう特性を抱えている。
Bさん・・ASD(自閉症スペクトラム)を持ち自分の意志を言葉にする表現が苦手である特性を抱えている

・この2人の関係がうまくいかず対立していると健常者の部下から報告があった。
・健常者の上司C課長の2人への対処
・2人に対して、不満・要望があったら申告してもらうようお願いしている。

【結果】
AさんのBさんへの不満は聞けたものの、反対にBさんのAさんへの不満は申告がなかったため問題がないと判断した。数日後、Bさんが体調不良で長期休暇になってしまった。

この「障がい特性による対応の違い」から健常者に多様な対応が求められます。どの障がい特性を持った方に対しても同じ「障がい者」として接してしまうと、事実とは異なる対応をとってしまう危険性があります。

本質的な対応を行うためには、本人の言葉を聞くだけでなく、行動特性を知り、事実を掴んでいく必要があります。

2) 障がい者の、社会生活に適応していく体力不足

健康上の理由での離職は精神障がい者の離職理由の中で最も多い問題です。ここでの「体力」は運動をする体力とは異なり、社会生活を行うための持久的な体力を指します。天候や環境の変化への適応が困難なケースや、個々の疲労蓄積パターンの違いなどが原因で体調を崩し離職する状況になってしまいます。

◎事例2 気候変化により体調が急変する障がい特性の方の場合

朝、精神障がい者の方が出社した時には元気そうに挨拶していたのが午後になって突然顔色が悪くなり体調不良で早退したいと訴えてきた。本人は「気圧変化で気分が悪くなった」と話していた。

このようなケースに戸惑われた方もいるのではないでしょうか?

3) 障がい者への配慮を行うための、職場の余力不足

社員の少ない企業など、人手不足から障がい者への配慮を行うための余力不足が原因で精神障がい者が職場定着できず離職してしまうケースです。

◎事例3 電話対応が苦手で、免除を受けている精神障がい者の方の場合

繁忙期で顧客からの電話が多いため、普段障がい特性から電話対応を免除している精神障がい者の社員にも対応を依頼した。障がい者の方は「できます」と答えたので、そのまま依頼した。しばらくすると、対応をお願いしていた精神障がい者の方が極度の緊張で体が震えており、パニック状態となっていた。

この3つの原因が、精神障がい者の離職につながる主なケースとして挙げられます。
以降この原因を解消するためのポイントをお伝え致します。

精神障害を持つ方の離職率を下げ、定着率を向上させるためのポイント4つ

1)多様な障がい特性を把握する。

対人関係の問題での離職を防ぐ対策として、健常者が多様な精神障がい特性を把握することが挙げられます。先ほどの離職原因で挙げた事例1のように、特性によっては個々の対応方法が正反対になる場合もあります。それぞれ社員の方の障がい特性を把握したうえでの対応が良好な対人関係を保つポイントとなります。

◎事例1への対策(一例)

ADHDを持ち衝動的な特性の方には、障がい者の方に意志を話してもらいながら受け止め、整理する。
ASDを持ち自分の意志をうまく表現できない特性の方には、健常者から声をかけ、投げかけていく。

2)事前に障がい者の不調時の状況を把握する。

精神障がい者の体調不良による離職を防ぎ職場に定着させるためには、早期に休養を取れる環境が必須です。実際に休暇を取りやすい企業での定着率が高いという統計も出ています。

この不調に対しての対処が遅れるケースは2種類あります。
1、「本人が疲労を自覚していないケース」、
2、「本人は疲労を自覚しているが、遠慮して我慢をしてしまうケース」
です。

したがって健常者の方が事前に精神障がい者の方の不調時の状況を本人と相談しながら把握していき、不調のサインをキャッチすることが早期発見につながります。

◎事例2への対策(一例)

「気圧変化の激しい季節には、一日の中でも急激に体調が変化することがあります。たとえば、顔色が悪くなり、気分が悪くなった場合、その時には早退をする」ということを事前に確認しておく。

3)障がい者のストレスとなる感覚を把握する。

五感のいずれかが過敏であるためにストレスを感じ、体調不良になってしまう精神障がい特性の方もいます。不快な音(の種類)やにおい、光などにストレスを感じるケースなど、精神障がい者本人と相談しながら具体的な対処を考えていくことが必要です。

対処例としては、光が苦手な特性の方には窓際の席を控える、聴覚過敏を特性に持つ方にヘッドフォンの着用を認めるなどが挙げられます。

◎事例3への対策(一例)

電話対応については、特性上苦手(不安障害など)の場合は、本人が努力する姿勢を示してくれたとしても、本人が得意とする仕事内容に集中してもらうよう、促す。

4)就労福祉サービスを活用する。

障がい者の職場定着を向上させる方法として就労移行支援事業所、就労継続支援事業所などの就労福祉サービスがあります。

就職に関わるサービスのほか、採用後の定着支援なども行い精神障がい者の方が職場に定着していけるよう第三者の視点から、事例3の電話対応についての対処法など、障がい者の方や企業の状況に応じたアドバイスを受けることができます。

まとめ

高齢化社会に伴い労働者の人口が減少していく一方で、法体制や医療の発達などにより精神障がいの認知件数は増加しています。

したがって今後は精神障がいの方が職場に定着し、戦力としていかに活躍していけるかが大切なポイントとなっていきます。それぞれの精神障がいのウィークポイントを知り強みを生かすことで、精神障がい者の離職を防ぎ長く職場に定着していく方が増えていくように心がけていきましょう。