正反対の意見を聞いたとき、決断できない…
コミュニケーションが苦手
アスペルガーは、現在「ASD(自閉症スペクトラム)」という名称で診断されています。発達障害の一つで、アスペルガーを含む「自閉症」「(特定不能の)広汎性発達障害」などが統合されたものです。
アスペルガー(以下、ASD)は、表情などから相手の気持ちを読み取るなど周囲の雰囲気や空気を察することが苦手です。そのため特に言葉に表さず「察すること」に重きを置く日本では、コミュニケーションに苦労することが多いのではないでしょうか。
参照:アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)|ふせき心療クリニック 心療内科 精神科 児童精神科 埼玉県 さいたま市 さいたま新都心
話し合いなど、異なる意見を処理することができない
中でも特に「話し合い」が苦手と言うケースは多いのではないでしょうか。職場では様々な考え方の人が働いていますが、以下の事態で困ったことはありませんか?
・分からないことを2人の方に聞いたら、正反対のアドバイスを受けた
・自分で考えていることと異なる意見を聞いた
・話し合いで誰の意見が正しいのか迷ってしまう
このような場面が生じるケースがあるかもしれません。どちらか一方が「間違い」とはっきり分かるケースであれば迷わないでしょう。しかし、どちらも正しい意見であるまたは正しいと主張してきたときに混乱してしまうケースがあったかもしれません。
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このような異なる意見を同時に受けた時に『どっちにしよう…どっちが正しいのかな…』と悩んでしまい決断できなくなってしまうのです。このような『異なる意見を受けたとき』に有効な思考法が『弁証法』になります。
弁証法とはなに?
弁証法とは
「弁証法」とは、対立する意見を組み合わせ、より優れた案を見出していく方法です。どちらか一方の意見に絞るのではなく、両方の意見を汲んで判断することができるようになります。
これまで職場などで、どちらか一方の意見を選択したことで(意見を聞いてもらえなかった)相手から不満を持たれたことがあったかもしれません。自分自身、意見を聞かなかったことで罪悪感を持っているかもしれません。弁証法を身につけることができれば、このような事態を減らせる可能性があるのです。
【わかりやすく】弁証法の流れ
では、弁証法の流れについて例を挙げて紹介してみましょう。流れは至ってシンプルです。
例:あなたは昼食の飲み物をどれにしようか迷っています。そのため、AさんとBさんに何を飲んだらよいか尋ねてみました。すると、
Aさん「う~ん…コーヒーが良いと思うよ」
Bさん「絶対ミルクがいいって!!」
このような意見が返ってきました。コーヒーでもミルクでも、どちらを選んでも良いわけです。でもコーヒーを選んでしまったら、Bさんに『絶対ミルクって言ったじゃない!』と文句を言われてしまうかもしれません。かといってミルクを選んだら、Aさんに『コーヒーって言ったのにな…』と落ち込ませてしまうかもしれません。
このようなときに両者の意見を尊重し、バランスをとった結論を出す方法が『弁証法』です。ここで言えば、ミルクもコーヒーも踏まえた『ミルクコーヒー』になります。コーヒーでもミルクでもないけれど、どちらの意見も取り入れた飲み物ですよね。
弁証法は、このような両者の意見のバランスを考えて新しい意見を生み出す考え方なのです。
さて、ASDを持つ方が弁証法を取り入れるうえで注意するべきことはあるのでしょうか。
弁証法のポイント
ポイント1:両者の対立した意見を完璧に受けることはできない
当然ですが、対立した両者の意見を完璧に受けることはできません。上記のようなシンプルなケースなら解決しやすいかもしれませんが、実際に職場で直面する「意見たち」は複雑なことが多いです。
ASDを持つ方の場合、様々な特性から「全てを聞き入れよう」と無理をしてしまうリスクがあります。弁証法は両方の意見を完璧に受ける方法ではなく、両方の意見の組み合わせて新しい「第三の意見」として消化する方法だということを念頭に入れておきましょう。
ポイント2:両者の意見の「目的」を押さえる
では、弁証法は両者の意見の「どこ」を組み合わせるべきなのでしょうか。ポイントは「どうしてそのような意見を言っているのか」目的を知ることです。話の中から分かる場合もありますし、分からない場合は相手に確認するという方法もあるでしょう。
上の飲み物の例でいえば、相手が「味で言っているのか」「色で言っているのか」「成分で言っているのか」などを確認する形になるでしょう。
職場で言えば、『業務方針を変えたい・変えない方がよい』という対立が目立ちます。大きな方針だけでなく、課内・係内の仕事の進め方などでも可能性はあります。このようなときも、両者が「なぜ変えたいのか」「どうして変えたくないのか」ポイントを捉えていくことが大切です。
このポイントがずれていると、どんなに意見を合わせても両者の意向を汲んだ結果にならないことがあります。
ポイント3:両者に『意見を汲んでもらえた』と分かる案を出す
弁証法は、両者が『自分の意見を汲んでもらえた』と分かるものであることが大切です。上の例でいうと、ミルクコーヒーではなく他の飲み物にしたとしたら「ミルクは無視したのか…」と誤解されるかもしれません。
ですからできるだけ分かりやすく、相手に「自分の意見を取り入れてくれた」と感じる結論を見出していくのがコツです。上記の職場の対立した意見の際に置き換えると「これまでの部分も残しつつ、問題点のみを変えていく」という形になります。
ポイント4:両者の意見以上の結果が出すことが大切
両者の意見を組み合わせた「第三の意見」がどちらよりも悪い印象になってしまうようでは意味がありません。ですから弁証法でもって「両方を取り入れて、どちらよりもいい案を出していく」という意思を持って考えていくことが大切です。
弁証法でも解消されない対立は、上司に相談しよう
職場で仕事をしていると、相反する意見を同時に受けるケースに直面するでしょう。このようなときに弁証法でもってしても相手が納得しないケースが出てくるかもしれません。そのようなときは一人で抱え込まず、上司に相談するようにしましょう。
もし相談の仕方が分からないというときは、こちらの記事「【ASD・アスペルガー】悩み事を相談できない…きっかけの作り方4つ」を参考にしてみてください。
もし、上司も当事者にいる時など職場での相談先に迷ったら、Salad編集部にお声かけください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今後、価値観や考え方の多様化が進んでいきます。そうなればさらに相反する意見に柔軟に対応していくことが求められるようになるかもしれません。
職場で長く生き生きと働けるように、ぜひ弁証法を取り入れてみてください。