アスペルガーは、例え話が分からない…
例え話は、聞き手に理解してもらいやすくする手段として活用される
会話の中で、例え話を活用するケースは多く見られます。会話のみならずスピーチなど、大勢の前で話す際にも例え話が出てきます。これは聞き手に身近な話などに置き換えることで、「自分にも関わることなんだ」「そういう意味なんだね」など吸収しやすくなる効果があるからです。
アスペルガーを持ち、例え話に苦労しやすい
アスペルガー(=ASD)を持つ方は、例え話に苦労するケースがあります。その影響で会話にうまく入れないことはもちろん、「空気が読めない」と思われるケースにもつながってしまいます。
そこで今回は、アスペルガーを持つ方と例え話について
・例え話で苦労しやすいポイント
・例え話を聞くときのヒント
・例え話を話したいときのヒント
この3点を中心に紹介していきます。
参考:アスペルガー症候群|名古屋市栄,心療内科・精神科・メンタルクリニック ひだまりこころクリニック栄院,大人の発達障害,アスペルガー障害
【アスペルガー】例え話で苦労しやすいポイント
聞く側1:不安から、冗談か真面目な話なのかに迷ってしまう
例え話はよく、冗談を言うときに活用するケースが多いです。アスペルガーを持つ方は相手がどういう人か掴めない場合、不安を伴います。心の中で『これは冗談なんじゃないかな…』と感じていても、そうでない場合も考えるのです。『もし相手が真面目に話しているのに冗談と受け取って返してしまったら、怒られてしまう…』このような不安や迷いを伴うケースがあります。結果的に安全策として『真面目な話』と受け取ることで、冗談でも真に受けてしまうなどの「会話の温度のすれ違い」が生じやすいです。
聞く側2:会話の前後、背後の関係をつかめない
特に「他人」に対しての関心が薄い時に多く見られます。例え話は双方の共通認識があってこそ成り立つことが多いです。よって相手がどんな人なのかが分からないと、例え話の真意が見えてこないことがあります。
例えば会話の相手が「サッカーが好き」な人であったとしましょう。『挑戦しなければ成功はない』を『シュートを打たなければ点は入らない』と例えて話したとします。この場合、これまで「挑戦することについて話していたなどの経緯」や「今挑戦できないことで悩んでいた背後関係」などを意識せず「『シュート』って?」と不思議に感じてしまうことがあるのです。
このように会話の前後・背後関係をつかむ・思い出すことが苦手なために、例え話に苦労しやすいことがあるでしょう。
参考: No.1 職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害:専門家向けお役立ちトピックス~メンタルヘルス不調関連~|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
話す側1:相手に合わせた例え話をしていない
アスペルガーを持ち、例え話が好きという方の場合、相手の知らない(知ることに労力を要する)ことに例えて話してしまうケースが考えられます。具体的には
①全く相手が知らない物事(ジャンル)に例えて話してしまう
→例.サッカーを知らない人に対して、サッカーの話に例えて話をしてしまうなど
②知っているジャンルではあるが、相手に深い知識を要する例え方をしてしまう
→例.『挑戦しなければ成功はない』を『インローを攻めないと、本当の意味で打者を打ち取ることはできない』(野球のピッチングに例えている)など、例えになる物事を詳しく知っていないと分からない表現になる
この2つのケースになりやすいです。『例えること自体』に執着しすぎて、相手に分かりやすく伝えることがおろそかになってしまうことがあります。例え話は本来伝えたいこととの共通点が見つかることで成り立つのですが、これを探すのに苦労させてしまうことはありませんか?
このようなケースで相手とうまく意思の疎通が取れず、苦労してしまうことがあるのです。では、例え話に対してどのような工夫が必要なのでしょうか。
例え話を聞くときのヒント
真意に近い話し方をお願いする
例え話の意味が分かりくい、かつ相手の真意が分かりにくいという方もいるでしょう。職場などではあらかじめ「例え話など、他の何かに置き換えた話が苦手です」と伝えておくことが大切です。
例え話に関わらず、『顔は笑っているのに、本当は怒っている』など真意が見えにくいコミュニケーションが苦手な旨を伝えておくことも大切になります。このように真意に近い話し方をお願いする方法が効果的です。これはストレスになりやすい『ダブルバインド』にもつながります。下記の関連記事を参考に、対策を準備しておくと良いでしょう。
関連記事:アスペルガーが悩む上司の『ダブルバインド』とは?体験から得た対策
前に何を話していたかを思い出してみる
会話の中で『あれっ?この人突然何を言っているの?』と感じたら、例え話かもしれません。突然変なことを言うというケースは少ないですし、それは聞き方が問題なのではなく相手に原因があります。ほとんどの場合、『それまでに話したことからつながっている』のです。ですから『例え話かな』と感じたら、
・それまでに何を話していたかを思い出してみる
・相手や自分のそれまでの行動を思い出してみる
・相手や自分にどんな問題があったかを思い出してみる
これらを試してみてください。それは上記の中に、例え話の理解に重要な『共通認識』が隠れていることが多いからです。
例え話を話すときのヒント
相手との共通点を探す
もっとも分かりやすい方法は、相手との共通点を探すことです。自分も好きで詳しいことが相手も知っていたら、話す側も例えやすく聞く側も想像しやすくなります。好きな漫画やスポーツ、番組などお互いが共通して好きなものがないか思い出してみましょう。
例え話は相手の身近な物事に例えるからこそ、その度合いや感覚が分かりやすくなるのです。ですから相手がどんなことに詳しいか・どんなことが好きなのかを知り、その物事に例えることで効果が高まります。
例として、『挑戦しなければ成功はない』の例え方として以下のケースを紹介しましょう。
・サッカーが好きな人に対して → 『シュートを打たなければ点は入らない』
・野球が好きな人に対して → 『バットを振らなければボールは打てない』
ポイントとしては、その物事を知らない人でも分かるようなレベルに例えることです。これが『オフサイドを恐れていては、敵の裏を突くことはできない』や『ストレートを投げずフォークばかりでは、三振を取ることはできない』ですと、その物事に深い知識を要する場合があります。
ちなみに前者はサッカーで、後者は野球での例えです。例え話のあと、こうして『サッカーの話です』『野球の話です』と説明する必要がある場合は、例え方を見直してみましょう。
生活に身近な物事に例える
相手との共通点を知る機会がない場合は、普段の生活の中で多くの人が行っている・経験しているであろう物事に例えると分かりやすくなります。あくまでもサッカーも野球も、基本的にはその物事を知っている人にだけ効果があります。ですから例え話をしたいときに不安を感じていたら、『食べること』『学校で経験したこと』などに置き換えると伝わる可能性が高くなるでしょう。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
例え話は分かりにくくなる一面もありますが、相手との共通認識が加わればより身近なこととして受け取ってくれる効果もあります。
コミュニケーションに困っていたら、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれの男性。ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けており、かつHSP傾向も強い。よく精神・発達障害を持つ方にとって差別だと感じた表現に「今の言葉は車いすを使用している方に『走れ』と言うくらいにひどいこと」と例えている。