寂しい感情が、仕事への依存につながることがある
仕事に対してこだわりを持つケースも多い
アスペルガーや自閉症は、現在では「ASD(自閉症スペクトラム)」に統合されて診断されています。
特性としてこだわりや執着の強さがあります。こだわりが仕事に向けられることも多く、責任感や使命感として活かされるケースも多いです。
寂しさを埋めるために、仕事で埋めようとする
しかし、中には間違った形で執着してしまうケースもあります。自分の中のネガティブな気持ちなどの寂しさを埋めるために、仕事に依存してしまうケースがあるのです。
この場合、同じ「仕事への執着」でも職場全体の業務に支障をきたすおそれがあります。では、実際にこのような「寂しさ」を埋める道具として仕事がある場合、どのような行動に現れるでしょうか。
【仕事依存】寂しい感情を仕事で埋めようとすると…
ケース1:仕事の情報を共有しなくなる
【大切な仕事は、自分だけが知っていたい】
まず見られるのが、「自分の仕事に関する情報を共有しなくなる」ケースです。他人に教えてしまうと「独占」できなくなることに寂しさを感じてしまいます。そのため、自分だけが知っていたいという感情から情報共有をしなくなったり、影響のない部分だけしか共有しなかったりし始めるのです。
仕事でもって企業や顧客のニーズをクリアしていく…という本来の目的を忘れてしまってはいませんか?
ケース2:仕事が間に合わなくても、他人に任せられない
【自分の仕事を取られたくない】
特性として、他人を疑いやすい場合があります。
さらに依存が進むと、情報どころか仕事そのものも共有しなくなります。
自分の仕事が間に合わない・手に負えない状況のとき、「他者にお願いできる勇気」がありますか?仕事に依存していると、「この仕事がなくなったら何もすることがなくなる」という感情から状況に関係なくすべてを自分一人で行おうとします。
これにより職場の業務全体に支障をきたす可能性が出てくるのです。
どうしようもない状況を上司が見かねて、周囲に手伝ってもらったとき、感謝できますか?「邪魔された」という感情が先行していたら、「依存」状態である可能性が高いです。
ケース3:仕事の書類などを隠してしまう
【自分の仕事を触られたくない】
さらに依存が進むと、「誰にも触られたくない」感情になってしまいます。したがって仕事の対象物を分からないところに隠したり、パスワードをかけて閲覧できない状態にしたりするケースも出てきてしまいます。
アスペルガー(ASD)を持つ方は、几帳面であることがあります。特に仕事への執着が強い場合、潔癖に近い感覚になるケースもあるでしょう。
この潔癖さにより、自分の求めている形式以外で仕事を進められることを嫌がります。「印鑑の濃さ」や「書類の順番」など、本来の目的には影響のない小さなことまで自分の形にこだわるのです。
こうなると周囲も協力する気がなくなり、孤立してしまう可能性も出てくるでしょう。
仕事への依存は、私物化に繋がりやすい
依存を使命感だと誤解してしまう
このように、仕事への依存はまるで私物のように扱うことになります。当事者本人はそれを「使命感」だと誤解しているケースが多いです。「自分がやらなければならない」という責任が限度を超えてしまうと、依存状態になってしまいます。
客観的に見ると「仕事への依存」なのにも関わらず、本人の中では「自分は特別な存在。この仕事を行う使命がある」と誤解してしまっているのです。
仕事をお願いするとき、「取られた」と感じてしまう
このような依存状態の場合、周囲との情報共有がありません。そのため、業務自体の効率も落ちるケースが多いでしょう。にもかかわらず、「大事なもの」を取られないために、無理にでも自分一人で行おうとします。
本来仕事は「企業のもの」であり、それを請け負っているだけなのです。しかし仕事に依存している場合、それを忘れて完全なる「私物化」してしまうおそれがあるのです。
したがって業務上必要な場合、上司の指示などであっても仕事を手放すことをしません。これが担当者・業務変更などがあっても依存が続くことがあるため、新しい担当者との仕事の奪い合いにもなるケースが発生することもあるのです。
仕事依存は職場全体の業務に支障をきたす
以上のケースを踏まえても、仕事への依存は職場全体の業務に支障をきたす可能性が高くなります。
それでは、もし自分も「依存しているのかな…」と感じたときにどう見分けていけばよいのでしょうか。「責任感」と「依存状態」の見分け方をご紹介します。
「責任感」か「仕事依存」かの見分け方
業務の本来の目的が見えているかどうか
業務の本来の目的は、企業が成長することや、事業がスムーズに進むためのものです。責任感がある人は、この目的のためにも自分を成長させます。業務がうまく進むのなら、他の人に任せても抵抗はありません。あくまでも常に「ゴール」を見ているのです。
一方「依存状態」にある場合、「自分を輝かせるため」「自分の存在価値のため」の目的が優先してしまうのです。『仕事をしている自分を感じるため』に行っている場合、依存している可能性が高いです。
人に業務を任せるときの気持ちはどうか
責任感のある場合「申し訳ない」とは思っても、行ってもらうことに不満を持つことはありません。うまくいかないことや分からないことがあれば、うまく進むために教えることを考えます。
これが仕事依存している人ですと、まず「自分の仕事を与えてやっている」という感情になりやすいです。相手に分からないことなどがあったとき、充分にアドバイスをすることも少ないです。
周囲に「その業務は、自分がやるべきだ」と思わせたいために、周囲を傷つけることをしてしまいます。
担当業務が変わった時・なくなった時の自分はどうか
責任感のある人が自分の仕事がなくなった時に感じるのは「申し訳なさ」です。担当の仕事がなくなった時「自分の力不足で申し訳ない」「配慮してもらって申し訳ない」などの気持ちが先行します。
しかし仕事に依存している人は、「職場に大切なものを取られた」という気持ちが先行してしまうのです。
仕事がなくなる寂しさに悩んでいたら、上司に相談しよう
仕事に依存してしまうのは、「仕事しか自分を表現できる手段がない」「仕事しか自分を感じられる手段がない」という寂しさや不安が原因であることが多いです。
そのような不安を抱えていたら、上司に相談してみましょう。自分が今後どう動くべきかを確認し、安心させていく工夫が必要です。
もし、相談するきっかけをつかめない時はこちらの記事「【ASD・アスペルガー】悩み事を相談できない…きっかけの作り方4つ」を参考にしてみてください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
うつ病などで離職し、障害者雇用で再就職した場合「今度こそは頑張らなくては」「拾ってもらった会社に恩返ししたい」という感情になりやすいのではないでしょうか。
責任感や企業への感謝でもって仕事に臨むことは良いことです。しかし思いが強すぎて、いつの間にか「仕事がないと自分がなくなる」という寂しさに悩んでいませんか?
自分自身は、何もしていなくても成立しています。何かをしなければ成立しない「条件付き」なことはありません。ですから安心して仕事と向き合っていきましょう。
もし、働き方に関して悩んでいたら、Salad編集部までご相談ください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。過去の職場で依存状態の社員から仕事を受け継ぐことになった。2年近くまともな引継ぎを受けることができず、結局全て他の周囲の協力を得て業務を学ぶことができている。