アスペルガー特性も関わって、運転が苦手だった
車の運転で、苦手な臨機応変さを求められた
筆者はASD(自閉症スペクトラム)という発達障害の診断を受けています。
特性として主に、「臨機応変な対応が苦手」「曖昧な物事に対する判断が苦手」という課題を持っています。
この特性が、「車の運転」にも深く関係していました。
当時の職場で必要だったため、練習を重ねた
はじめから運転は苦手でした。免許も期限ギリギリで取りましたし、運転適性検査の結果は「運転すると危険です」とコメントがあるくらいの最低レベルでした。
しかしながら、仕事で必ず運転をしなくてはならないため、練習を重ねる必要がありました。
練習のために車を購入しました。仕事を終えて帰宅後、夜中に運転の練習を重ねました。それでも、全く上達しませんでした。
無理をして運転の練習をしていたことも、後にうつ病の発症につながりました。
運転を苦手と感じた理由
1)失敗体験を引きずってしまう
筆者が運転に関して「トラウマ」としていることが2つあります。
①最初の教習で、教官に怒られたこと。
②新車購入2時間後に物件事故を起こし、販売店の方に笑われたこと。
です。
もちろん、自分の実力や注意が足りないことが原因の他にありません。
しかし、このトラウマが原因で運転を楽しいと思うことが一度もありませんでした。
2)多方面に注意を向けられない
運転をしていると、大量の「マルチタスク」に襲われます。ハンドルやミラーや標識や対向車、歩行者から信号…とにかく気にすることが多すぎました。
これらの操作が一連の動きになることはありませんでした。
3)「信号がない場面での右折」「高速道路の進入」など、判断が苦手
運転をしていると、合図やルールで定められていない場面に直面します。
○右折信号がないところで、対向車を見ながら自分の判断で操作しなければならない。
○高速道路の進入が怖くて出来ない。譲ってくれるわけでも進入してよい合図がないため、どう判断したら良いか分からない。
という場面に、素早く判断するということに苦しみました。明確な基準のない中で決めることが怖かったです。
4)怖くてスピードを出せない
「事故は危ない」「スピードの出しすぎは事故につながる」という意識にこだわりすぎて、スピードを出すことができませんでした。
道路状況に合わない速度は、遅すぎても迷惑になりやすいです。そのため、よく周囲の車にクラクションを鳴らされました。
5)地図を読めず、方向感覚が鈍い
筆者はさらに、方向感覚を掴むことも苦手でした。加えて地図を読むことも苦手です。
このように移動をする技術が全く揃っていない中で、無理を重ねていました。
参考:発達障害傾向のあるドライバーが抱えている問題を明らかにし、それぞれの行動特性に応じた運転教育を提供します。 | 助成研究者インタビュー | 研究助成プログラム|公益財団法人タカタ財団
車の運転が苦手なことで苦労したこと
仕事で運転業務をしなくてはならなかった
運転が苦手でも、運転業務から逃れられないことに苦労しました。
ただ運転するだけならまだしも、上層部の方を乗せることや、突然様々な場所に行かなくてはならないことを求められました。
通常の運転でも緊張するのに、格別なプレッシャーの中での運転を強いられていました。
公私ともに、事故を起こしてしまった。
運転が苦手であったがゆえ、車でもバイクでも数回事故を起こしてしまいました。どの事故も双方大きな怪我や損害がなかったことだけが幸いです。
プライベートだけでなく、仕事でも事故を起こしてしまいました。職場の方が自分のことで頭を下げているのを見るのが辛かったです。
どの部署でも必ず行うため、将来に不安を感じていた
「運転ができなければ、業務変更や部署移動をする」という手段はありません。
どの部署、どのポジションでも運転がついて回るからです。原則、できないことがあってはいけない職業でしたから、凹凸の激しい筆者は苦労することが多かったです。
そのため、「運転できないのにこの先どうすればいいんだ…」とずっと不安に感じていました。
退職後、採用面接で断られたことがあった
結果的にこの職場はうつ病発症をきっかけに、退職しました。
しかし、退職後にも採用面接で苦労しました。面接官から、
「電話対応は女性社員がやります。男性は原則運転をしてもらいたいです。男性ならば、運転はしてもらいんですよ。」
と言われました。今から考えれば差別発言なのですが、当時は実力不足を痛感しました。電話対応も苦手ですから、「自分には何も才能がないのかな」と感じたほどでした。
どんなに努力しても上達せず、安全から運転を諦めた
他の物事であれば、失敗しても努力をする必要があるケースがあります。
しかし、車の運転に関しては、失敗することで命にかかわることになりかねません。ですから安全を考えて、車を手放して運転することを諦めました。
環境を選ぶことで、強みを活かすチャンスができる!
筆者はその後、車の運転が関わらない環境で働くことができました。
環境を変えることで、強みを活かして仕事をするチャンスができることを身をもって体感しています。
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おわりに
いかがでしたでしょうか。
最終的には苦手なことを諦めた結果になりました。しかし、苦手かどうかをしっかりと見極めるために取り組んだ経験は貴重な経験となりました。
どう頑張ってもできないことに直面したことで、環境を選ぶ必要性に気付いたからです。
運転に限らず、どうしてもできないことで悩んでいたら、居場所を見直す良い機会かも知れません。もし迷っていたら、Salad編集部までご相談くださいね。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。運転操作、方向感覚、地理把握、すべてが苦手である。地図が読めないため待ち合わせの時は、周辺の写真を送ってもらうなどお願いしている。