うつ病で休養中に、アルコールに依存した経験がある
30歳の時にうつ病を発症した
筆者は発達障害の一つであるASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けています。30歳の時に職場でのストレスからうつ病を発症し、通院先の病院で検査を受けたことで分かりました(経緯に関して詳しくはこちら)
。
休養中、飲酒なしにはいられない時期があった
うつ病を発症後は長期休養、のちに退職することになり、復帰までには4年間かかっています。その間特にうつ病が回復されていないころは、自分の精神状態を保つことが難しい状態でした。
「将来」と言う言葉を聞きたくなくなるくらい、今後に関して強い不安を持ちながら生活していたのです。この不安感から抜け出すために、一時期飲酒なしにはいられない時期がありました。
参考:アルコール依存症とは|アルコール依存性について|東京アルコール医療総合センター
参考:発達障害と依存症(マリアの丘クリニック)
今回は筆者の経験をもとに
・精神不安定の時に飲酒したときの心理状況
・現在、発達障害と向き合いながらアルコールに関して注意していること
この2点を中心にお伝えします。
【体験談】アルコールに依存していた時の心理状況
味を楽しむというより、酔いたいために飲む
筆者はもともと、お酒が飲めるようになったのは20代後半くらいからでした。飲酒歴が浅いにもかかわらず、自分の限度を考えずに飲酒をすることもあったのです。当時は今以上に服薬量・種類も多く、もちろん過度の飲酒は認められていません。
暴れたり、暴言を吐いたりするような行為には至りませんでしたが、『味を楽しむというより、酔いたい』ために飲んでいた印象があります。
自傷的な感覚で飲む
うつ症状がひどい時、自分を責める癖が強く現れていました。『仕事をリタイアしたなんて、出来の悪い人間なんだ』『いつまでも就職できない自分は、ダメな人間なんだ』と常に自分を責める癖がついていたものです。
このような『ダメな』自分に対して『罰を与える』自傷ともいえる感覚で過度に飲酒をしたこともありました。「これぐらいのひどい仕打ちを受けるべき人間なんだ」と思い込んでお酒を飲むことで、体調を崩すことも多くありました。
不安や緊張から逃げるために飲む
先ほど触れたように「将来」という単語を聞くだけで具合が悪くなるくらい、今後のことに関して悲観していたのです。うつ発症当時の記憶が繰り返されて、失敗するイメージしか沸きませんでした。
この不安から一時的に逃れられるのが「飲酒」だったのです。他の方と比べれば飲酒量は少ないですが、自分の限度を超えていたことは間違いありません。
アルコールとの付き合い方を考えるようになった
このような経験を乗り越え、今ではお酒との距離感を保てるようになりました。改善されたきっかけは
・家族の支援があったこと
・どんな条件や状態でも「週一回ハローワークに行く」ことを決めて、実行していたこと
・根気よく医師や病院専属のカウンセラー、ケースワーカーの方と連携を続けたこと
・就労支援センターのスタッフの方の支援などから、就職に対する具体的な道筋が見え始めたこと
これらが重なって、社会復帰することができました。
では、現在筆者がアルコール依存症を予防するため、お酒の飲み方に関してどのような注意をしているかお伝えします。
参考:相談窓口・支援機関|これって“依存症”? ―“やめたいのにやめられない”あなたへ―|NHK福祉ポータル ハートネット
【ASD・うつ病経験者】アルコール依存症を予防するために注意していること
①お酒は、味を楽しむために飲む
先ほど「味を楽しむより、酔うために飲むときがあった」と紹介しました。うなずく方もいるかもしれませんが、酔うために飲むときは飲酒自体を楽しんでいません。そのような思考すら止めたいがために飲んでいた記憶があります。
このようなときがあると、依存傾向にあると感じたのです。そのため根本的に「お酒は、味を楽しむためにあるもの」と意識するようにして、お酒を自暴自棄のスイッチにしないように心がけています。この意識ですと『今日は一杯くらいでもいいか』など、飲酒量にこだわらなくなる効果を感じています。
②飲酒をルーティン化・習慣化しない
お酒を飲むこと自体が「癖」になっている時期がありました。決まった時間になったら何となく買いに行って、何となく飲んでいて…というように、お酒を飲むことが生活パターンの中に組み込まれていたのです。このような状態だと、精神的に不安定なときに飲酒に触れる機会が多くなってしまいます。
特にASDを持つ場合、特性から普段通りの行動に傾きがちです。健康のために意識的に習慣を変えることもありました。
そのため、「飲みたいな」と感じた時だけお酒を飲むようにしています。もちろん、自宅に常に常備するということもほとんどありません。
③ネガティブな心情の時は、飲まない
ネガティブな心理状態のときは、飲酒をしないように心がけています。『暴飲』につながることはもちろん、このようなときは疲労がたまっていることが多いこともあるのです。
ですから心身共に疲れている時、精神的にネガティブになっているときはお酒を飲まないようにしています。
④限度の7割くらいにとどめる意識を持つ
特に飲酒が習慣化されていると、自分の限度を知る感覚が鈍くなります。そのため「まだ大丈夫」と感じている段階で、すでに限度を超えているというリスクが高くなるのです。
このような状態にならないよう、意識的に「7割くらいまでにとどめる」ように心がけています。
アルコール依存症に悩んでいたら、医療機関に相談しよう
筆者はもともと飲酒量の限度が低いために、何とか自力で改善することができました。しかしもともとお酒に強い方など、アルコールとの適切な距離感を保てない「お酒なしにはいられない」ことで悩んでいる方もいるかもしれません。
このような場合は、かかりつけの医療機関もしくはアルコール依存症専門の医療機関に相談するようにしましょう。自分では「大丈夫」と感じているかもしれませんが、その「大丈夫」のうちに、行動に移すことが大切です。
迷っていたら、勇気を出して医師に相談してみましょう。
参考:4.依存症は治るの?|アルコール、薬物、ギャンブルなどをやめたくてもやめられないなら...それは「依存症」という病気かも。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
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おわりに
いかがでしたでしょうか。
筆者はお酒のほかにも「夜眠ってから無意識のうちにものを食べてしまう」「夜中出歩く」など、さまざまな形の依存を体験しました。買い物にも依存しかけ、職場からいただいた退職金のほとんどを遣ってしまうなどもあったのです。
そのような状態から抜けられたのは、他者に頼る「勇気」を持てたことです。ですから人に頼ることは恥ずかしいことではありません。辛かったら、家族や医師に相談する「一歩」を踏み出しましょう。
もし相談先に迷ったら、Salad編集部までご相談ください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれ、男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。うつ病発症から元の生活を取り戻すまでに2年間、社会復帰までに2年間、計4年間のリハビリを要した。