【体験談】障害者枠での悩み・職場で特性を活かすために取組んだこと

障害者枠で働くなかにも、悩みはあった

障害者枠で働くなかにも、悩みはあった

配慮と成長の間に挟まれて苦しんだ

障害者枠には、合理的配慮を行うことが法律で定められています。職場でこの配慮を受けられることは、筆者にとって有り難く助かった部分もあります。

しかし、成長したいという意欲の妨げになることもありました。「意欲を見せれば、苦手なことをしなくてはならない。」「苦手なことができないなら、成長はできない」という二者択一を迫られました。苦手なことへの配慮を取るか、リスクを覚悟して成長を取るか、常に挟まれて苦しみました。

今回は、このような課題の中で障害者枠として勤務した際、筆者が感じた悩みを紹介します。なお、「障害者枠はすべてこのような対応」とは限りません。企業によってスタイルは様々です。

参考:障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス(厚生労働省)

障害者枠で勤務した時に感じた悩み

障害者枠で勤務した時に感じた悩み

周囲の方にかかわる情報が足りない

「情報が足りない」とは具体的にいうと、「職場の中で、誰が同じ障害を持つ方なのかが分からない」ということです。

筆者がいた職場でも、明らかに電話を取っていない方や、性格や言動に特徴がある方がいました。しかし「障害を持っているのかな」と感じることはあっても、確認する機会がないことに悩みました。

後輩に関しては、入社時の紹介で知ることができます。しかし、問題は上司や先輩の場合です。この場合は本人が言わない限り、知る機会がありませんでした。

相手の情報を理解していれば、周囲の言動に対しても寛容になれる場面が増えていたかも知れない、と感じています。実際に筆者が感じた事例をご紹介します。

【事例:イライラしている人に対しての受け取り方】
〇相手を知らない場合

→「あいつ、いつもイライラしていて邪魔くさいな」とストレスに感じる

〇相手も知っている場合
→「障害の辛さなのか、何か悩みを抱えているのかな」と対処を考えようとする

事前に対処をしたいのに、自分にとって知らないこと、見えないことがあること自体にストレスを感じていました。

自分でできることとして、後から入ってくる後輩には自分の障害を伝えるようにしたことくらいでした。

「障害者の割には」という評価をされる

どんなに努力をして成果を出しても、「障害者の枠」を超えて平等な評価をされたことはありませんでした。考えられる理由として、

○もともと任せている業務が簡単(という見られ方をされている)
○苦手なことをしていないため、楽なのだから・得意なのだからできて当然と思われやすい
○できないことが目立つぶん、障害者は劣っていると見られている

などがあります。この「枠」を超えようと、担当業務を必死に勉強して取り組みましたが、苦手がなくなるまで評価されませんでした。

業務の改善案を出すと、煙たがられる

筆者は前の職場でも成長を求めていました。障害者枠だから置物のようにじっとしていればよい、という考えが納得できなかったからです。「『障害者枠だからこそできること』でもっと会社を発展させたい」と本気で考えていました。

しかし、実際に提案すると驚かれてしまうか、煙たがられました。仕事への熱意や成長意欲を共有できないことが辛かったです。

「もっとできる」と主張すると、苦手な業務を求められる

上記のように、会社のために自分を成長させたいという気持ちは強かったです。むしろ、「毎日成長できないとストレスになる」くらいでした。

成長を求めて職場にも「もっとできる」と主張しました。口頭で言うだけでなく、業務で目に見える成果として出したこともあります。しかし結果増えたのは、苦手な電話応対をすることでした。

得意を伸ばすことは「楽をしている」、苦手なことに対して取り組むと「頑張っている」という評価にショックを感じました。

最終的には、障害を持たない方と同じことをしないと評価されない

このように、最終的には障害を持たない方と同じことをすることでしか、評価されませんでした。強みがあることよりも、弱みがないことの方が評価をされるのを残念に感じました。

結果的に「障害を持つ方は、障害を持たない方より『下』とは限らない」という思いを伝えきれませんでした。

参考:改正障害者雇用促進法に基づく「障害者差別禁止指針」と「合理的配慮指針」を策定しました |報道発表資料|厚生労働省

強みを活かそうとしても、「出る杭」にしかならなかった

強みを活かそうとしても、「出る杭」にしかならなかった

自分がどうして不満を持たれているかが分からない

このように、自分の良さを知りそれを活かそうとすると、「出る杭」として度々周囲から打たれることもありました。

その打つ人間の心情が「障害を持たない方が不満を持ったから」なのか、「障害を持つ方が嫉妬したから」なのかが最後まで見えませんでした。上司に相談しても自分がどう出ていたのか、良く出ていたのか悪く出ていたのかの回答はありませんでした。

個人情報の問題もあるので難しいことですが、「自分だけ相手に知られていて、自分は相手を知らない」という不平等な関係に苦しみました。

「障害者枠は配慮されるだけの対象」を払拭できなかった

障害者枠に対して、どこの職場でも筆者がいた職場のような反応を示すとは限りません。少なくとも筆者が就労移行支援に通所中に見学した職場では、違う雰囲気でした。しかし、この時障害者枠は「配慮をする対象」でしかなく、「自分たちと違う可能性を持つ」ということを職場に伝えきれず、悔しさが残っています。

参考:発達障害の人に向く職業、向かない職業は何か(ダイヤモンド・オンライン)

対処をしても活かす手段が見付けられず、新しい環境を求めた。

対処をしても活かす手段が見付けられず、新しい環境を求めた。

悩んだ結果妻の助言もあり、「自分の個性を活かして働く」ことを考えて新しい環境を探すことにしました。

就労移行支援事業所に通所して、自分にとってこれまで「趣味」の域を越えなかったことを本気で仕事にする気持ちで臨みました。一年間の訓練の末、強みを活かす仕事に就くことができました。

関連記事:【発達障害を持つ方の就職】あなたもできる「カスタマイズ就業」とは
関連記事:就職手段に就労移行支援を選ぶまで【発達障害を持つ筆者の体験談】

参考:障害者の能力や強みを生かす「カスタマイズ就業」って? – 毎日新聞

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おわりに

いかがでしたでしょうか。

「障害に対する配慮」という解釈は企業や職場の方の価値観によって、様々なスタイルがあります。必ずしも障害者枠で就職すれば、筆者と同じ思いをするとは限りません。

しかし、もし同じ思いをしている方がいましたら、自分のワークスタイルを見直すきっかけにしていただけますと幸いです。

【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。2つの職場をおよそ15年勤務したのち、就労移行支援の訓練を経て強みを活かす就職を実現している。

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