就労移行支援事業所の訓練中にさまざまな問題があった
1)「就労移行支援事業所」とは
「就労移行支援」とは、障害者総合支援法に基づいて運営されている福祉サービス施設です。利用期間は原則2年間です。就労したい障害を持つ方のニーズに合わせて、スキルアップと就職のサポートをします。年々、事業所数は増えています。
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筆者は就労移行支援事業所に通い始め、ちょうど一年で就職、「卒業」となりました。
その間スムーズに就職に進んだかといえば、そうではありません。今回は
〇筆者が就労移行支援に通う前、及び通所している間に起きた問題
〇問題への対策やサポート
についてご紹介します。
【就労移行支援体験談】事業所利用前・利用中に起きた問題
利用前の問題:認定調査に時間がかかった
就労移行支援事業所の利用を開始するには、区役所など地方の公共団体の認定が必要です。
区役所に行き認定調査という、役所の担当の方の質問に答える形式を行います。その後、利用に該当する者かどうかを判断する・・という流れになります。この間に3か月程度かかりました。筆者はクラウドソーシングでライティングやデザインの業務を受託していました。就労移行支援は、原則として利用中の就業は禁止です。
このクラウドソーシングが「就業にあたるのか」の判断で時間がかかりました。また、「それだけ自分で収入を得る手段があるのなら、就労移行支援で学ぶ必要はないのでは?」との意見もありました。「学びたいのに、自分の苦しみを理解してもらえない・・」そんな不安が募っていました。
問題1:体調をキープするのが難しい
就労移行支援では、様々な障害を抱えた方が利用しています。筆者は物音が気になってストレスになることがありました。しかし、その物音を発している方は「物音を発していないと耐えられない」方なのです。
このような周囲の方の「特性」との関わり方、気圧変動や室温などの影響で具合が悪くなることもありました。
問題2:利用中収入がないため、経済的な問題がある。
先ほどご紹介しましたように、就労移行支援利用中は原則「就業禁止」です。
地方によって「就業」の解釈はまちまちで、申請時、筆者が住んでいた地域の区役所は「バイト程度の収入なら可」という解釈でした。しかし、利用開始後の転居先を管轄している区役所では、完全に就業を禁止していました。そのため、学ぶためにクラウドソーシングを休止することになりました。
利用の間、収入は1年間の雇用保険のみ。妻と2人で生活しないといけない。いつ就職が決まるかも分からない状態で、経済的な問題に悩みました。
問題3:自分の強みが見つからない
就労移行支援事業所の利用を始めて最初にすることは、自己理解です。
スタッフの方との相談の中で、自分はどんな強みを持っているかを探します。筆者は「強みじゃないかな・・」と感じるものは当初からありました。しかし、これまでの職場では、自分の個性を受け入れられませんでした。そのため「人に受け入れられないものは強みではない」と自分に言い聞かせていて、苦しみました。
【就労移行支援体験談】事業所利用中に起きた問題への対策は?
1)申請から利用開始までに「自主トレーニング」を行った。
【利用前の課題:認定調査に時間がかかった に対して】
筆者は障害の特性上、目的が見えない曖昧な状態が苦手です。
認定が下りるまで何もできない状況は筆者にとって、苦痛でした。それを見かねて妻が、スマートフォンのデザイン系のアプリを紹介してくれました。妻には利用が始まったら、イラストレーターやフォトショップを学ぶことを伝えていました。そのため利用開始後、すぐに覚えられるように配慮してくれました。このアプリではイラストレーターなどで使う専門用語が出てきたので、結果的に早く習得できました。最終的には、事業所のキャラクターのデザインを作って提案できるまでに習得できました。
2)メリハリのある生活をして、不調時は早めに対処する
【課題1:体調をキープするのが難しい に対して】
妻が仕事をしている間、家では家事をしていました。日中に活動して夜にしっかり休む、メリハリのある生活リズムをキープしています。
調子が悪いときは早めにスタッフに伝え、リフレッシュしました。結果長期に体調を崩すことはなく、安定して通うことができました。(出席率は9割以上です)
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3)家族の経済的サポートが大きかった。
【課題2:利用中収入がないため、経済的な問題がある に対して】
生活費は筆者の雇用保険、貯金などでも賄いましたが、何より妻の理解があり、仕事をしてくれているお陰で生活することができました。
利用前はクラウドソーシングで仕事をしながら通うことも考えました。妻と相談した結果、クラウドソーシングをせず事業所のトレーニングに専念することにしました。収入がないことを踏まえたうえで、利用を後押ししてくれた妻には感謝しています。
4)事業所の支援スタッフの方との二人三脚を心がけた。
【課題3:自分の強みが見つからない に対して】
筆者の「強みを強みだと言い切れない」という状態は、およそ半年間続きました。
そんな中でも、スタッフの方が何か月もかけて、筆者が強みだと気付けるまで優しくアドバイスをしてくれました。そのようなスタッフの方との二人三脚を続けて、少しずつ強みを受け入れていくことができました。
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就労移行支援事業所の利用を検討している方へ。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
『自分の得意な部分を活かして仕事をしてみたい』『好きなことを仕事する方法を知りたい』このように悩んでいませんか?このサイト『Salad(サラダ)』では、障害を持つ方のそのような働き方に対する悩みに対し、さまざまなサポートをさせていただきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
就職に至るまで、家族やスタッフの方のサポートがありました。家族はもちろん、事業所の方にも恩返しがしたい、と感じていました。そのためこのような形で就労移行支援事業所の良さをお伝えできることをありがたく感じています。
この記事が、今就労移行支援事業所に通っている方、これから利用したいと考えている方の課題をクリアするきっかけになりましたら幸いです。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれの男性。大人になってから発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)と診断されている。公務員として10年間勤務、障害者枠の事務職として民間企業に4年間勤務。特徴として、「聴覚が過敏」「周囲からの感情の影響を受けやすい」「細かい作業が得意」などがある。
就労移行支援事業所に週5日、一年間通所してトレーニングを続けた。地道な就活の結果、職種を変え、強みを生かせる就職が実現した。利用申請時は実家に住んでいたが、事業所利用途中から転居。現在は障害を持たない妻と二人暮らし。