『ソーシャルファーム』とはどんなもの?
ソーシャルファームとは
ソーシャルファーム(Social Firm)とは、ソーシャルインクルージョンの理念のもとに、障害を持つ方など仕事をするうえで不利な立場にある人々の就労の問題に取り組むモデルです。同様に、社会的共同組合(Social co-operative)があります。障害を持つ方のために仕事を生み出し、または支援付き雇用の機会を提供することが目的です。
「ファーム」といっても「農場」を意味する「farm」とは異なり、「当社」という意味になります。
はじめにイタリアで誕生した
ソーシャルファームと同じ社会的協同組合は、1970年末に初めてイタリアで誕生しました。精神医療に従事していた方と精神疾患を経験した方が協力し合い設立されたものです。
当時は授産施設や作業所は存在していましたが、民間企業などで働ける機会がほとんどありませんでした。
※授産施設・・・障害を持つ方を他より隔離された環境で雇用する事業所や団体
そのため、この作業所に代わる新たな就労機会の創出を目的とした「ソーシャルファーム」が生まれたのです。その後、ソーシャルファームは他のヨーロッパ各国に浸透していきました。
それでは、このソーシャルファームが浸透している国において、障害を持つ方にはどのような働き方があるのでしょうか。現状の日本の働く手段をご紹介したのち、その特徴をお伝えします。
参考:日本型ソーシャルファームの推進に向けて―基調講演 参考資料|公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 情報センター
障害を持つ方の、働き方の種類
まず、現在日本で主に取り組まれている働き方をご紹介します。
通所・入所授産施設
福祉制度などに基づく通所・入所授産施設に入り働くスタイルです。心身に障害があり一般企業に就職することが難しい人が「自立」を目指して仕事をします。
日本の場合、授産施設は障害者自立支援法施行に伴い、利用者のニーズに合わせて就労継続支援事業所A・Bや就労移行支援事業所などに移行されています。
民間企業での障害者雇用など
日本でいえば企業に障害者雇用として就職し、様々な配慮を受けながら働くスタイルです。
傾向として、「苦手なものを克服し、どう適応させていくか」というところを重視しやすい傾向があります。そのため、職場に適応できないことで早期に離職してしまう方もいます。
さて、このような働き方に加え、ソーシャルファームにはどのような特徴があるのでしょうか。
ソーシャルファームの特徴とは?
障害を持つ方など働く際に不利な立場にある人を相当数雇用している
主に従来の働き方において不利な立場になりやすい、障害を持つ方などを相当数雇用している特徴があります。
どの企業にも、一定数の障害者を雇うのは「義務」です。しかしソーシャルファームの場合そのような消極的になりやすい雇用ではなく、企業内で活かすために積極的な雇用をするケースが多いのです。
企業と同じビジネス手法で、利益を事業に還元する
従来の企業の障害者雇用の場合、企業の利益に貢献するという意味合いが弱いのが現状でしょう。どちらかといえば「働くことで安定した社会生活を維持する」福祉的な意味合いが強いです。
活躍することよりも「問題を起こさないこと」に注目されることで、チャレンジの意欲がなくなり、がやりがいを感じないケースもあるのです。
対してソーシャルファームの場合、企業と同じビジネス手法です。したがって成果を出せなければ同様の責任を負うリスクはありますが、やりがいは多く感じることができます。何より企業や社会に貢献していると実感しやすいことが特徴ではないでしょうか。
すべての従業員が同等の権利と義務を持つ
従来の障害者雇用では、障害を持つ方は「サポートされる人」「フォローをする人」という見られ方をされてきたケースが多いのではないでしょうか。働くにあたり生じる困難や問題への対処に追われるあまり、どうしてもそのような見方をされがちです。これでは、本当の意味で同等とは言えません。
しかしソーシャルファームの場合は、全ての従業員が同等の権利を持ちます。障害の有無や種類に関係なく、全員が平等なのです。
ソーシャルインクルージョンにより、個々の考え方を活かしていく
ソーシャルファームは、冒頭で触れた「ソーシャルインクルージョン」の考えをもとにいしています。これは「障害」など枠組みで人を見るのではなく、「ひとりひとり」として様々な考えや価値観を受け入れていこうという考えです。そのため、障害も個性として活かせるチャンスが多くあるのです。
これまでの「苦手なものをどうカバーしていくか」に重きを置くスタイルではなく、本来持っている特性を知り、活かしていくスタイルになります。
参考:「知っていますか?『ソーシャルファーム』」(くらし☆解説) | くらし☆解説 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室
日本でも、ソーシャルファームが注目され始めている
ヨーロッパのような法的な枠組みはないが、注目され始めている
日本には組合など、まだソーシャルファームの法的枠組みは存在していません。しかしながら障害を持つ方がさらなる活躍ができるよう、このソーシャルファームへの注目が高まっています。
障害者自らソーシャルファームを起業するケースもある
日本でも「障害を持つ方が活きる働き方を提供したい」と、障害を持つ方が自ら起業するケースも出てきています。
関連記事:障害者の起業!現在活躍している事業、支援制度やサポートを紹介!
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さて、今回は障害を活かす新しい働き方についてご紹介しました。日本には現在ソーシャルファームは浸透していませんが、「障害を活かす働き方」について注目されています。
その一つが「カスタマイズ就業」です。
カスタマイズ就業はこれまでに困難に感じてきた障害なども強みとして活かし、社会に貢献していく働き方です。
Saladでも、このカスタマイズ就業を応援しています。また、長所を活かせる求人をこちらで独自に取り扱っております。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
これまでの「福祉就労」により、障害を持つ方の「就職した数」は増えました。そうしてまず就職できない問題に向き合ってきました。しかし障害を持つ方の早期離職など、職場定着の問題も出てきたのです。ですからこれからは問題として「働き続ける」ことにも注目していかなければなりません。
そのような意味でも障害を活かす「ソーシャルファーム」の今後に注目していきましょう。