睡眠障害とは
睡眠障害とは
睡眠障害とは睡眠に関連したさまざまな病気のことです。
睡眠の質や量が不足して生活の質が低下する不眠症が有名で患者の数も多いですが、他にも過眠症や睡眠時無呼吸症候群などが主なものとして挙げられます。
▼睡眠障害について詳しくはこちらの記事もごらんください。
関連記事:辛い『睡眠障害』とはどんな症状?発症の原因や治療・改善方法は?
不眠症とは
不眠症とは睡眠の問題が長期間続き、日中に不調がおきる病気のことです。
原因に応じた対処が必要で、環境や生活習慣の見直しに加えて、服薬による治療を行う場合もあります。
メディアなどで誤った危険なイメージが広まっており、服用を不安に思う人もいるかもしれませんが、現在の睡眠薬は医師・薬剤師の指示のもと適切に使用すれば安全です。
▼服薬による不眠の症状の治療についてはこちらの記事もごらんください。
関連記事:【体験談】睡眠導入剤からの卒薬。うつ発症から服薬卒業までの9年間
過眠症とは?
過眠症の人は不眠症の人より少ない
不眠症の人が日本においては約5人に1人とも言われるほど多いのに対して、過眠症の人はナルコレプシーで1,000~2,000人に1人、突発性過眠症や反復性過眠症はもっと少ないと言われています。
睡眠時間が長い分には自分の健康状態に問題があると気づきにくいので、受診・治療に至らないケースも多いと考えられます。
参考:不眠症とは|睡眠障害の種類|睡眠障害の種類|不眠・眠りの情報サイト スイミンネット
参考:過眠症|東京都港区新橋 新橋スリープ・メンタルクリニック 心療内科 精神科
ADHDとASDと過眠の関係
発達障害の人に多い、昼間の強い眠気の問題
また発達障害のある人が昼間の耐えがたい眠気で日常生活や仕事(学業)に支障をきたすと訴えるケースが非常に多いことも報告されています。
約85%のADHDのある成人の患者が、昼間の眠気や睡眠の質の悪化を訴えているという調査結果もあります(Sleep and daytime function in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder: subtype differences)。
ADHDと診断される人だけでなく、ASDと診断されるケースでも多く見られるようです。
まれに不注意はあっても多動の症状がなく、学業の成績が悪くないために問題にならなかったり親(保護者)が問題を認めなかったりして子ども時代に見過ごされてしまうケースもあるようです。
そのような場合、睡眠の問題が困りごととして明らかになるのは就職後で、朝から始まる一般的なフルタイムの勤務に適応できないためです。上司の叱責が原因でうつ状態になり、精神科の受診のきっかけとなる場合もあります。
発達障害のある方が障害者雇用で働いている場合、上司・支援者や家族など周囲の人も、このような障害に特有の睡眠の問題に原因がある可能性を考慮し、まず先に病気の症状として標準治療を受けるよう勧めることを優先するのが合理的ではないでしょうか。
精神論・根性論やエビデンスのない代替医療などを押し付けて応援しているつもりになったり、「社会人として非常識」と決めつけて反省を促し、トレーニングとして無理をさせて矯正したりすることは、当事者からの信頼を失い、うつ状態などの二次障害を引き起こしたり悪化させたりする可能性があります。
参考:第102回 発達障害の睡眠問題、実はほぼ半数が悩む | ナショナルジオグラフィック日本版サイト (2019年4月11日)
参考:発達障害の患者さんに見られる日中の眠気(改訂版)|すなおクリニック Q&A (2018年8月20日内田 直((執筆者 すなおクリニック院長・医学博士・早稲田大学名誉教授))
参考:Sleep and daytime function in adults with attention-deficit/hyperactivity disorder: subtype differences – PubMed
参考:標準治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
過眠症の治療
日中の眠気の症状を抑えて生活するために
現在、過眠症(ナルコレプシー・突発性過眠症)を治す根本的な治療の方法はないので、日中の眠気を和らげる作用のある薬を服用する対症療法が行われています。
この薬には依存性があり薬物依存のリスクがあるため、医師・薬剤師の指導を守り、正しく服用しましょう。
参考:発達障害が引き起こす眠気の問題【岐阜駅すぐ】阪野クリニック
参考:過眠に効く眠気覚ましの薬とは何ですか | 阪野クリニック
体験談:問題を正しく認識し、専門医を受診する
障害者雇用における「支援者」の対応
この記事を書いている筆者は、障害者雇用でSalad編集部に勤務する30代のASD当事者(専門医による診断済)です。現在 障害者雇用での就労12年目、テレワーク2年目です。
幼児のころから無意識に歩き回る症状(気づいたら覚えのない場所にいる)があり、中高生の頃は授業中いつも寝ていてそのことを文集に書かれ、20代半ばごろまで起床時に転倒する起立性調節障害の症状に悩みました。
障害者手帳を取得し障害者雇用で就労した後も、毎朝起床時に強い頭痛が続き、出勤が遅れることがありました。
支援者や上司には「早く寝てますかぁ? ゲームしたりテレビドラマなんて見て夜更かしとかしてないですかぁ? 社会人なんだから生活リズムを整えることを目標にしましょうね。」などと言われます。
現実は仕事を終えて帰宅すると常に体調が悪く、何年もの間、テレビドラマを観られるような自分の時間をゆっくりとれたことがない状況でしたので、非常に憤りを感じました。
あまりにも頭痛の症状のがひどいので当時勤務していた特例子会社(*1)の標榜する障がい者雇用で働く人の利用できる通院のための休暇の制度を利用して通院しました。
これは障害者雇用における合理的配慮(*2)として、障害者雇用で働く社員に体調不良の治療のための通院のための(無給)休暇を認めるというものでした。
なぜこのような表現をするかというと、この企業ではこの制度は対外的(CSR・広報活動やの求人募集などの際)には大々的にアピールされていますが、実際には利用はさせたくない制度である印象を受けました。
実際に障害に起因する症状で通院している社員たちがこの制度の利用をすすめられることなどなく、利用する際は具体的に制度の名を指定して要求しないと申請のための手続きの方法を教えてもらうことすらできません。
つまり障害や病気によりコミュニケーションが困難な社員、知的な障害のある社員に利用するのは非常に困難(普通に考えて実現が不可能)なのです。
この制度を利用して体調不良による通院の許可を得るために、毎回、まずは前もって1ヶ月以上前からリーダー(役職のない、先輩のリーダー的な障害者雇用の社員)に「ご迷惑をおかけして申し訳ないのですが、体調不良で通院のためにお休みさせていただいてもよろしいでしょうか?」と必ず謝罪した上でお願いし、もしお許しをいただければ、次は部署の全員に「体調不良で通院のためにお休みさせていただきます。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。」と、上司の好むタイミングと言い回しで、必ずまず最初に謝罪をしてお願いし、さらに次は上司とその上司に確認の上で押印していただき、給与課に提出する必要があります。
なお上に述べた工程にどこか一つでも抜けや上司の気に障る部分があると叱責されます(謝罪が不足している、謝罪の際の言い回しが良くないなど)。
べテランの障害者指導員(60代の男性)には、この制度を利用して通院の休暇を取ったことを理由に頻繁に「面談」と称する吊るし上げの場を設けられて「通院はあなたのライフワークなの?」と言われました。
私もほかのほとんどの人と同じように、必要がなければ通院はしたくありません。
この人は健康保険の加入者(被保険者)の権利である傷病手当金(*3)についても「支給されちゃう、しなきゃならない」と言い放ちました。
このベテランの人が特例子会社という場所で、指導者としての立場を通じて、自分の気持ちを言葉にできない障害のある人を今までどれだけ傷つけてきたのだろうか? と考えると今でも腸(はらわた)が煮えくり返る思いです。
起床時は頭が割れるように痛み、頭痛薬を飲んでも効果がなく、起きている間も耐え難い眠気と頭痛が続いて、仕事をしているとき以外は倒れこむように寝ている状態で、ほぼ最低賃金で生活しながら「生活習慣」改善のために必死に自律し生活環境を整える努力を尽くしても、支援者や専門家と自称する人たちには「なまけている」「甘えている」と、人間性や性格の問題としてどんどん評価を下げられていく状況でした。
相談しようという気持ちと、支援者への信頼は失われる一方です。
異常に気づいてくれたのは1人だけ
その後、医療関係の専門家ではない一般の方で「あなたは睡眠時間が長すぎなのではないですか? おそらくどこか体の調子が悪いせいだと思うから、専門医を受診したほうが良いのではないですか? とても具合が悪そうだからできるだけ早いほうが良いですよ。」と言ってくれた人が1人だけいました。
専門医につながった後は非常にスムーズでした。
特定不能の過眠症として日中の眠気を和らげる薬を処方してもらいました。
医師の処方した日中の眠気を和らげる薬には非常にはっきりした効果がありました。
日中の頭痛と眠気の8割減(体感)、起床時のつらさも少しは楽になり、起きていられる時間が長くなりQOLが向上しています。
個人的には、100万回 個人の経験に基づくアドバイスや叱責、ライフハックをご教示いただくよりも、1ヶ月に1~2回、1回あたり3分の診察で専門医に薬を処方して治療してもらう方を希望します。
参考(*1):障害者雇用にチャレンジ『特例子会社をつくる』|静岡県(PDF版)
参考(*2):改正障害者雇用促進法に基づく「障害者差別禁止指針」と「合理的配慮指針」を策定しました |報道発表資料|厚生労働省
参考(*3):病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金) | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
参考:発達障害が引き起こす眠気の問題【岐阜駅すぐ】阪野クリニック
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まとめ
症状のある人は主治医や専門医に相談を
過眠の問題は自分では気づきにくい症状も多いうえに、周囲の人に「起きられないなんて なまけている、甘えている」などと否定を繰り返されてきているため、受診に至らず長い間つらい思いをされている場合も多いのではないでしょうか?
日中の眠気や起床時のつらさに加えて、特に家族や支援者にも理解が得られず「なまけ癖を治す」ための日々のきつい指導や叱責、心ない言葉に「自分はダメな人間で、なまけ者だ」と思いこまされ、すっかり落ち込んでしまっている方もいらっしゃるかと思います。
自分にも睡眠に関する問題があるのではないかと思った方は、主治医または専門医に改めて具体的な症状や困りごとを説明し、相談してみてはいかがでしょうか?
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参考:中枢性過眠症 | 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部
参考:睡眠医療 | 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部