日本でも、『障害者』という呼び方に議論がなされている
障害者とは
『障害者』とは、身体障害・知的障害・発達障害を含む精神障害その他心身機能の障害を持つ方を指します。日常生活や社会生活を営む上で様々な困難を感じやすい人をいいます。
日本でも、呼び方を巡り議論がなされている
今、『障害者』と表記しましたが、日本でもこの呼び方について議論されています。障害の『害』の字が「有害なもの」と感じるために「障がい者」と表記する考えや、「障碍者」と表記する考えも出ています。
中には「障」の字に関しても異論を唱える人がいるほど、様々な見解がなされています。
Saladでは、障害者とせず「障害を持つ方」という表現を大切にしています。これは、障害は人の優劣を決めるものではないという考えからきています。『者』を障害として定義づけることはしないということです。障害は人に紐づくものではなく、疾病や症状・先天的な身体や脳の特徴によるものであるため、障害(疾病や、それに伴う症状など)を持つ人と表現しています。
海外で『障害者』は、どう呼ばれているの?
さて、海外で『障害者』は、どのような呼び方をされているのでしょうか。今回は英語表記でのさまざまな表現をご紹介しましょう。
英語でのさまざまな「障害者」の呼び方
handicap(ハンディキャップ)
「障害者」を直訳するとこの表記になります。
日本でもスポーツなどで実力に差がある場合に調整する言葉として「ハンディ」「ハンデ」と呼ばれることが多いですよね。しかしこの意味を考えると、「自分は障害を持たない方(一般的に言われる健常者)より『劣っている』の?」と考える方もいます。
さらには英語独特の感覚として「handicap」が「cap in hand」と連想し不快に感じる人がいるのです。この「cap in hand」は、直訳すると「物乞いをする人が帽子を乗せている状態」となります。そのため、「handicap」と呼ぶことを不快に感じ問題視する見解も出ています。
disabled(ディスエイブルド)
現在、最も一般的に使われている表現です。(ちなみに「障がい者」を翻訳すると「Person with disabilities」、「障害を持つ方」を翻訳すると「Person with a disability」になります。「障害者」を翻訳した「handicap」と比較すると、「Person(人)」が独立して表現されているのがよくわかります)。
NCDJ(障害とナショナリズムに関するナショナルセンター)は「handicap」の表現の問題に際し、発表したガイドラインで「disabled」を使用するように推奨しています。
アメリカでは主に「Persons with disabilities」や「Peaple with disabilities」と表現されることが多く、イギリスでは「disabled persons」「disabled people」という表現が使われているのです。
crippled(クリップルド)
障害者を指す意味として使うと、差別的な表現となります。古い書籍などで使われるケースがあり、言葉自体には「不自由な」という意味があるため、障害者以外の言葉として使われるケースはあるでしょう。
challenged(チャレンジド)
1990年代にアメリカの新聞で使用されてから普及した表現です。意味合いとしては「困難に挑戦する人」というポジティブなイメージです。実社会においても「働くことなどの社会生活に挑戦する人」として使用されています。日本でも『チャレンジドピープル』などの名称で注目され始めています。
しかし「表現が遠回しなのではないか」いう見解も出ていて、現在も議論されているのです。
に「differently abled(ディファレントリー・エイブルド、異なった能力を持つ)」というものもあります。
differently abled(ディファレントリー・エイブルド)
disableは「不可能」という意味がありますが、この「abled」は反対に「可能」という意味を持っています。障害者を「~できない人」と表現するのではなく、「異なったことができる人」と表現した形です。
しかし、これも「challenged」同様、表現が遠回しで分かりにくいのではないかという見解が出ています。
その他、様々な障害の英語での呼び方は?
ここまでは「障害者」全般を指す言葉を紹介してきました。さらに細かく様々な障害を持つ方への英語表現は以下のようになります。
視覚障害
Seeing difficulties(シーイング ディフィカリティーズ)。またはvisually impaired(ヴィジュアリィ インペアルド)と表現されることが多いです。
「blind(ブラインド)」は差別的表現とみなされることが多く、現在では使われていません。これは「blind」だと「盲目」という意味になるためです。
また、直訳するとSeeing difficultiesは「困難を見る=見ることに困難がある」、visually impairedは「視力が大幅に減少した」という意味になります。
精神障害や発達障害
精神障害や発達障害は「mental disorder(メンタルディスオーダー)」と表現されることが多いです。発達障害にあっては「developmental disorder(ディべロップメンタルディスオーダー)」と表現されることもあります。「disorder」は「変調」という意味です。
また精神障害の場合は、「疾患」という意味合いで表現した「mentally ill people(メンタリー イル ピープル)と表記する場合もあります。
英語だけでも、これだけ沢山の表現がなされています。では、その他『障害者』をめぐる文化には、どのような違いがあるでしょうか。
海外の『障害者』に関わる文化の違い
障害者は「弱者」ではないという考えが強い
アメリカは、日本よりも障害者は「弱者」ではないという考えが強いです。日本では現在学校に障害を持つ方が通う「特別学級」がありますが、アメリカにはそれが存在しません。
アメリカは「インクルージョン・クラスルーム」といって、子供のころから障害の有無に限らず、同じクラスで学びます。さらにどのような子供でも同じように学べる環境づくりを「学校の義務」としているのです。
「インクルージョン」は包括や包含を意味し、一人一人を受け入れていくという意味です。日本でも注目されている言葉で、下記の関連記事で紹介していますので、併せてチェックしてみてください。
関連記事:ソーシャルインクルージョンとは?ダイバーシティとの違いや関係は?
関連記事:ソーシャルインクルージョンで、発達障害への福祉はどう変わる?
どんな人も、一人の人間である意識が強い
アメリカでは、「ピープル・ファースト」という考えがあります。これは「どのような人間でも、一人の人である」ということを第一に考えていこうという考えです。
この文化が浸透している影響で、交通機関や公共機関を平等に利用できることが法律で義務化されています。このように、障害の有無に限らず同様の扱いを受けることは常識的なことと考えられています。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本でも、ニューロダイバーシティやソーシャルインクルージョンなどが注目されてきています。これにより様々な特徴を持つ方の個性を受け入れ、個々の違いを活かしていこうという考えや取り組みも始まっています。
まだまだ障害を持つ方の「呼び方」の議論が続いていますが、本当に障害を個性として見る言葉がどのようになるのか、今後に注目していきましょう。