「高次脳機能障害」とはなに?
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、けがや病気により脳に損傷を負うことで起因する認知障害全般を指す障害です。人間の「司令塔」である脳に障害が起きることで、さまざまな症状が起きます。
参考:高次脳機能障害を理解する | 国立障害者リハビリテーションセンター
参考:高次脳機能障害について | 高次脳機能障害支援拠点機関 | 松山リハビリテーション病院
高次脳機能障害の症状・種類
では、高次脳機能障害の症状にはどのような種類があるのか紹介していきます。
記憶障害
物の置き場所を忘れることや新しい出来事を覚えられないこと、同じことを何度も繰り返し聞いてしまうなどの症状があります。
注意障害
ぼんやりしていてミスが多いこと、複数のことを同時進行で行う「マルチタスク」ができない、一つの作業を持続することができないなどの症状があります。
遂行機能障害
自分から主体的に行動できず他者の指示がないと行動できない、自分で計画を立てて物とを行うことができない、約束の時間に間に合わず、守ることができないなどの症状があります。
社会的行動障害
興奮や暴力的な行為をコントロールできない、思い通りにならないと大声を出す、自己中心的な考え方になるなどの症状があります。
高次脳機能障害には、これらの症状があります。また、「注意障害」「遂行機能障害」の症状は発達障害の一つである「ADHD(注意欠如・多動性障害)」の特性と類似している部分もあります。両者の違いとして
・高次脳機能障害は、「後天的」に起きるもの
・ADHD(発達障害)は、「先天的」に生まれ持っているもの
上記の違いがあることを覚えておきましょう。
高次脳機能障害の診断基準は?
厚生労働省で定めている高次脳機能障害の診断基準は、主に4つの段階で構成されています。
①主要症状等:主な症状があるか
脳の器質的病変(機能に障害がある)の原因となる事故でけがをした、病気を発症した事実が明らかになっている。加えて上記の4種類の認知障害により、社会的・日常生活に制約がある(不平等・不便に感じることがあるなど)
②検査所見:医師の診断があるか
高次脳機能障害と認めるためには、MRIやCT・脳波検査などにより認知障害の原因が「脳の損傷(器質的病変)」であることが確認できることが必要です。または医師の診断(診断書)により症状が確認される場合も同様になります。
③除外項目:該当しない要因や他の原因があるか
認知障害のうち、身体障害として認定可能であっても①の主要症状が認められないケースなどの「除外項目」がないか確認していきます。その他先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害や進行性疾患を原因として症状がみられる場合も高次脳機能障害診断の除外対象です。
④診断
これら①、②、③の条件をすべて満たしている場合に高次脳機能障害と診断されます。診断は原則脳の器質的病変の原因となる外傷や疾病の状態が落ち着いてから行うとされているのです。
また、①と③の条件は満たしていても、②の条件を満たしていない場合は慎重な評価により高次脳機能障害と診断されるケースもあります。
高次脳機能障害を持ちながら、働きたい悩みを抱えているケースもある
高次脳機能障害は後天的に発生するため、それまでは全く問題なく仕事ができていたのに突然生日常生活すらも困難に感じる状態に変化するケースもあるのです。こちらの記事「中途障害者とは。発症の原因や当事者の気持ち、職場復帰の方法は?」で紹介していますが、後天的に障害を持つことで様々な苦労をしているケースが多いのです。
では、そのような場合にどうやって改善、対応していけばよいのか。以降、方法を紹介していきます。
高次脳機能障害の主な治療・改善法は、リハビリ―テーションになる
症状や問題ごとに応じたリハビリテーションを行う
治療・改善方法の一つにリハビリテーションの施設で行う「リハビリテーション」があります。手順として
・障害が起きている脳の機能と目標とする生活を明らかにする
・リハビリテーションの回数や頻度、種類などのメニューを作る
これらを進めたうえでリハビリテーションが行われます。各症状によって具体的な訓練は以下の通りです。
【注意障害には】
注意手順訓練
【記憶障害には】
反復訓練
環境調整
外的代償法(記憶補助手帳使用訓練、電子手帳など)など
【遂行機能障害には】
自己教示法
問題解決法
身体運動セット転換法
【社会的行動障害には】
行動療法(模倣行動の訓練)
視知覚訓練
視覚探索訓練
病態認識
言語的手がかり
指さし訓練
実際の行為を通して確認させる
視空間認知の訓練
グループ療法や心理教育 など
これらの訓練を実施し、困難を緩和させていくことが目的です。
就労移行支援で、障害を持ちながら働く為のスキルを学んでみよう
高次脳機能障害を持ちながら、「就職をしたい」「もう一度仕事を始めたい」と感じている方もいるのではないでしょうか。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
高次脳機能障害は、後天的に起きる症状です。そのため、いつ自分が当事者になるかわからないリスクがあります。また、そのために当事者になった際にはどうしたらよいか混乱してしまいやすいのではないでしょうか。
これまでにできていたことができないことで、悔しさや苦しさを多く感じるかもしれません。そのような困難のなか、少しずつでも進むことができれば豊かな生活を送ることができる可能性もあります。
何か一つでも、今日頑張った自分を褒めてあげる。それが積み重なって豊かな生活につながるのではないでしょうか。