自分で考える力がないと感じる…
言われたことはできるが、主体的に行えない
発達障害を持ちながら、障害者雇用などで頑張って仕事に取り組んでいる方が増えています。しかし、仕事を進めていく上で様々な苦労を感じやすいのも現状です。その中でも
「自分で主体的に行動することができない」
「自分で考えて動くことの意味が分からない」
このような「主体性」について悩んでいるケースがあるのではないでしょうか。仕事において、
・マニュアルや指示の通りに行うことはできるけれど、自分で考えて行動するとなると何もできなくなってしまう
・自分で判断することを求められると、何をしたらよいか分からなくなってしまう
このような問題に直面し、就職後すぐに離職してしまうケースも少なくありません。
参考:なぜ大人になるまで見過ごされるのか|大人の発達障害ってなんだろう? – 大人の発達障害|NHK福祉ポータル ハートネット
参考:障害者職業総合センター 研究部門 発達障害者の職業生活への満足度と職場の実態に関する調査研究
自分で考えなさいと言われる
考え方が分からず、迷った挙句職場の上司に相談しても「それくらい自分で考えなさい」と言われて困っていませんか?自分ができないことを「できて当たり前」と表現されることで、強い不安やストレスを感じているかもしれません。
さて、このような「考える力」がないと言われたり、感じていたりする際にどのような改善法があるのでしょうか。まず、発達障害を持つ方が『考える力がない』と言われやすい要因から見ていきましょう。
【発達障害】考える力がないと言われる要因
思い込みや先入観が強い
発達障害を持つ方は考え方が一点(一方)に偏ることが多く、多様な考え方をすることが苦手なことがあります。「~であるに違いない」「絶対に~である」と極端な思考をしやすいことで、思い込みや先入観に縛られて動けなくなってしまうのです。
こだわりや不安が強いことで、考える「視野」を狭めてしまいます。
物事の応用や置き換えて考えることが苦手
一つの物事に対して応用したり、別の物事に置き換えて考えることが苦手なケースがあります。
例えばAとBの業務があったとしましょう。障害を持たない方の場合、この2つに共通点などがあれば、Aのマニュアルや指示からBの業務に応用して行うなどの判断ができます。
しかし発達障害で苦労している方の場合、この共通点を見つけ出すことが苦手です。したがってAとB両方のマニュアルや指示を求めがちです。そのため、周囲に「手間」と感じさせてしまうリスクがあります。
言われたことを鵜呑みしてしまう
コミュニケーションでの苦労が少ない方の場合、指示や言われたことに対して自分なりに解釈し、「こうすればいいのでは」というプラスアルファを加えて行動することができるでしょう。言葉だけでなく、聞いた相手の真意も踏まえて行動しようとします。
しかし、発達障害でコミュニケーションに苦労していると、言われたことのみを鵜呑みしてしまうケースがあります。これにより、仕事がスムーズに進まないことがあるのです。
このような事情から、主体的に判断することが苦手なケースがあります。これを改善する方法の一つが、今回紹介する『クリティカルシンキング』です。
クリティカルシンキングで、考える力アップにつながる
クリティカルシンキングとは
「クリティカルシンキング」とは、物事を結論まで導く過程の中で『なぜ?』『本当にそうなの?』と疑問を投げかけてみる思考のことです。考えを一度「批判」することから「批判的思考」とも言われています。
そのままストレートに解釈するのではなく、反対に批判して終了することでもありません。敢えて一度別の考えも想像することで、より確かな結論に導く思考法として注目されているのです。
では、具体的にクリティカルシンキングをどう行っていくのか紹介していきましょう。
クリティカルシンキングのポイント
分かりやすくオフィスである出来事から例を挙げて説明していきましょう。今回は、上司から指示を受けたときのクリティカルシンキングです。
①上司から指示を受ける(言葉や表現を受ける)
仕事中、上司から「『あれ』やっておいてね」と指示を受けたとします。もともと発達障害を持っていると、このような曖昧な表現に苦しみやすいこともあります。普段は上司も気を付けていても、忙しい時などはこのような表現をしてしまうときがあるかもしれません。
このような場合、『あれ』を「きっと『これ』に違いない」と思い込んで別の判断をしてしまったり、『あれ』が何なのか分からずにずっと待ってしまったりしてしまうのです。
このようなすれ違いを防ぐために、クリティカルシンキングではここからさらにイメージを進めていきます。
②今の考えを一度疑って、別の考え方も検討してみる
クリティカルシンキングでは、このようなときに受け身状態にならず、自分で今考えているものを一度疑うことから始まります。
「『あれ』とは言っていたけれど、上司の言っていたのが本当に『これ』でいいのかな」
「もしかしたら、上司の言う『あれ』はこっちの業務かも知れない」
など、一つの考えや結論に留まることなく様々なルートを想像していくのです。
③様々な考え方を見たうえで、改めて結論に辿り着く
一度様々な考え方を想像したうえで、改めて結論に辿り着きます。この例の場合は、上司に「『あれ』とは何なのか確認する」ことが第一です。しかしそのまま「『あれ』は何ですか?」と聞いたことで不満を持たれてしまうことも考えられるでしょう。
そのためクリティカルシンキングで様々なルートを考えたうえで確認することで、上司に与える印象は大きく変わる可能性があるのです。
・様々な結論の中から「選んだ」ことで、自分の判断に自信を持ちやすくなる
・結論を急いで大きなミスやすれ違いを起こすリスクが少なくなる
クリティカルシンキングは、これらの効果が期待されるのです。
参考:【5分で理解】クリティカル・シンキングとは?意味&具体例とおすすめ本を紹介します|Life and Mind+ (ライフ&マインド)
クリティカルシンキングのコツ
本来の目的、根本の目的を理解する
クリティカルシンキングをするうえで大切なのは、「根本的に何が大切か」目的を理解することです。自分には何が求められているのかを理解し、細かなずれをクリティカルシンキングで調整すると、スムーズに進みやすくなるでしょう。
関連記事:ASDを抱える方に知ってほしい、他者とのコミュニケーション改善のヒント4つ
思考の癖を理解する
思考を100パーセント表現できることは、どのような方でも難しいことです。ですから自他ともどの思考にも偏ることなく、「癖があるものだ」「言いきれていない部分があるかもしれない」と自覚するだけでも効果があるでしょう。
他の選択肢を常に意識することで、クリティカルシンキングにつながりやすくなるのです。
常に「どうして?」「なぜ?」と問う癖をつける
相手から受けた言葉に対して、常に「どうして?」「なぜ?」と問う癖をつけることで、クリティカルシンキングがしやすくなります。
ここでは相手にそのまま「どうして?」「なぜ?」を言うということではありません。常に自分に問いかける癖をつけるということです。このような癖をつけることができれば、他人や自分の考えに依存することがなくなり、「自分で考える力」につながるのです。
仕事・働き方に悩んでいたら。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
まとめ
いかがでしたでしょうか。
クリティカルシンキングは、言葉は難しいかもしれません。しかし内容は至ってシンプルです。
・一度受けたこと、感じたことを一度疑うこと
・選択肢が一択ではなく、様々な選択肢の中から選ぶ考え方をする
考える力をつけるために、この点を心がけてクリティカルシンキングを身につけていきましょう。