アスペルガーは過去の記憶を引きずり、トラウマに悩みやすい
過去の辛い経験などを引きずってしまう
かつて「アスペルガー」と診断されていた障害は、現在の診断名はASD(自閉症スペクトラム)という名称です。しかしながら、便宜上アスペルガーという用語で表現される機会は現在でもあります。
アスペルガーは特性として、「特定の物事へのこだわりの強さ」があります。そのため過去の経験に執着しやすく、記憶力が良いケースが多いです。これが良い面に活きることもありますが、辛い体験が『トラウマ』としていつまでも残ってしまう問題もあるのです。
参照: ASD(自閉症、アスペルガー症候群)|どんぐり発達クリニック|東京都世田谷区 千歳烏山
参考:大人の「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?特性の理解が大切!
関連記事:アスペルガーは過去にこだわる!? フラッシュバックを防ぐ対策3つ
相談しても、理解してもらえない
筆者もまたASDと診断されており、過去のトラウマに悩んでいました。とにかく過去の辛い経験を『きれいにしたくて』、あれこれと悩んでしまうのです。両親や友人に相談しても「そんな昔のことは忘れなさい」と言われてしまうだけでした。
何の根拠もない「曖昧な基準」で忘れる、ということがどうしてもできませんでした。自分の記憶の中にいつまでも汚いものがあるようで、不快だったのです。
関連記事:アスペルガー(ASD)は暗黙の了解が苦手…曖昧な表現への対策4つ
どうやってトラウマと向き合うか?
筆者は現在結婚し、妻のおかげで徐々にトラウマから解放されつつあります。しかし今でも夢に出てくることや、体調が悪い時につい引きずり出してしまうことがあるのです。
そのような筆者がどうやってトラウマと向き合っているのか。実際に行っていることを紹介します。同じように「過去の経験がいつまでも残っている」、「トラウマのせいで行動ができない」など悩みを持っている方の参考になりましたら幸いです。
どんなトラウマを持っているの?
学生時代、嫌がらせを受け続けた
筆者は幼稚園から中学校まで、何らかの嫌がらせを受けていました。生徒だけでなく、先生や生徒の親まで様々な方から嫌がらせを受けました。
嫌がらせの行為そのものは消化できているのですが、自分の中で『自分は否定されるべき存在』という『トラウマ』が身についてしまいました。後に他の方から褒められることがあっても、そのトラウマがあり素直に受け止めることはできなかったのです。どうして当時嫌われたのか、知りたくて仕方ありませんでした。曖昧なものが嫌いなので、「正当な理由」が欲しかったのでしょう。
20年以上たってからSNSを使用して小学校時代の同級生に『どうしてあのころ嫌ったんだ!』と質問したほどです。もちろんほとんどの方の返答は「覚えていない」でした。返答が来たとしても「なんかムカついたから」など、さらに曖昧になるだけでした。
最初の職場を辞めたことで、多くの方に見捨てられてしまった
最初の職場は上司からパワハラを受け、うつ病を発症してしまったことが原因です。何変わることをして辞めた…などの理由ではありません。しかし、『辞めた』という理由だけで多くの同期や友人が離れていきました。
頭の中ではもう考えていないことですが、夢で過去の職場のことを数十回見ています。潜在的なところで、「やり残している」と意識しているのかもしれません。
それにしても、どうしてこれほどまでに過去に縛られトラウマとして悩むのでしょうか。
トラウマに悩むのはどうして?
明確な基準や根拠ないものを処理できない
筆者がトラウマとして残っているのは『人の感情』など、曖昧なものです。曖昧だからこそ、明確な理由がない限り持ち越してしまうのではと考えています。
アスペルガーを持つ方にとって、曖昧な物事は苦しいことになりやすいです。これをただ『忘れる』というのは、お金を払わずに商品を盗んでいるような「ルール違反」な感覚があります。適切な表現方法が分かりませんが、『忘れる条件が足りない』という感覚です。
時が経つにつれて雪だるま式に大きくなっていく
起きた当時には些細なことでも、雪だるま式に『深く傷ついた記憶』として発展してしまうことがありました。これは過去の体験を何度も繰り返し考えることで、意識の大半を占めてしまうことから来ているのではないでしょうか。
このような『過去の記憶からなるトラウマ』を、うまく自分の中で消化させる(マイナスな意識をなくす)方法として、『過去過ごした場所(の近く)に行く』ということをしています。
【体験談】過去の記憶と向き合い、トラウマをなくしていく方法
①自分の母校に行く
筆者はパワースポットとして、『母校』を挙げます。嫌な思い出ばかりの学校なのにどうしてか。
それには2つの理由があります。
①トラウマ対象の当時から現在まで、時間が経っていること
②トラウマを感じた当時の自分から成長していること
この2つを自覚するためです。
トラウマになるような記憶は、今の自分ではなく『当時の自分』の視点から見てしまうことがあることを感じたのです。ですから今は問題なくこなせていることも関係なく、『その当時にできなかった』ことを事実として認識していました。辛い時期から時間が止まっているような感覚です。
学校に行くと、その時から随分と時間が過ぎていることを自覚できます。自分の正確な現在位置を確認することで、トラウマを緩和させる工夫をしていきました。
②辞めた職場の前に行く
根本的には学校のケースと同じで、『今の自分』を自覚するために行くことがあります。『もうここに来ることはなく、長い時間が経っている』ことに気づくと、自然と過去への意識が和らぐ感覚があります。
現在の自分を自覚することが大切になる
過去のトラウマに悩んでいるときは、その当時のままの自分で考えてしまっているケースが多いです。小学校のときであれば小学生のまま、といった形です。このように現在の自分を把握できない状態ですと、今できるものにまで自信を持てないという事態も起きるでしょう。
ですから何らかの方法で、現在の自分を自覚できる方法(過去と今を比較できる方法)を見つけていくことで、トラウマと向き合えるようになるのではないでしょうか。
ほかにトラウマを克服する方法はあるの?
筆者は上記の方法でトラウマと向き合うようにしています。しかしそれだけでは、過去を意識する隙を作ってしまうことがありました。
一番は、過去以上に現在に意識を向けられるような物事を見つけることです。『今どうしたいか』『将来どうしたいか』心配事の矛先を将来に変えることで、建設的な悩みができるようになりました。
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おわりに
いかがでしたでしょうか。
アスペルガーを持ち、過去の記憶に悩んでいると『どうしてみんなは簡単に忘れられるのだろう?』と不思議に感じることがあるかもしれません。筆者も強く感じていました。
しかしトラウマに長く悩んでいる場合、自分の内面と向き合う時間が長いのです。ですから一度消化することができれば、他の方よりも人の痛みに気づけるようになる可能性もあります。
過去に悩んでいるのであれば、まず現在のあなたを明確に知ることができる方法を探してみてください。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。2,3年ほど前まで過去のトラウマに悩んでいた。