企業の生産性の低下の原因は、社員の状態把握不足にあり?
アブセンティーズムとは
アブセンティーズム(absenteeism)とは、「欠席」を意味する言葉です。欠勤や休職、遅刻早退などにより、職場で業務を行うことができない状態を言います。
近年、アブセンティーズムは企業の生産性が低下するとして問題視されてきました。長期休暇を要する状態になると、職場全体の業務に支障をきたします。そのため、企業はアブセンティーズムへの対策をしてきたのです。
現在は、生産性低下の原因が変化している
しかし現在は、企業の生産性低下に最も関わっているのは「アブセンティーズム」ではないと考えられています。
現在問題視され始めたのは、「不調でありながら我慢する」もしくは「不調を自覚しないまま働き続けている」ことに変わってきたのです。
それが「プレゼンティーズム」になります。
参考:アブセンティズムとプレゼンティズム (absenteeism / presenteeism)|株式会社こどもみらい
プレゼンティーズムは、企業の経営にも影響する
プレゼンティーズムとは
プレゼンティーズム(Presenteeism)とは、「出勤しているものの、心身の健康上の問題により、充分な仕事ができない状態」という意味です。
「健康上の問題」といっても、風邪で高熱が出るなどだけではありません。特に春先に見られる花粉の時期であれば、花粉症の人の作業効率が下がると考えられています。貧血や倦怠感などの身体疾患は、継続的にパフォーマンスを低下させる原因になってしまうのです。
プレゼンティーズムに関わる健康問題の種類
アメリカの調査で次の10種の健康問題が、プレゼンティーズムによるパフォーマンス低下につながるとみられています。
【プレゼンティーズムに関わるとされている健康問題】
①アレルギー
鼻炎や食事などに反応するアレルギーなど、様々な症状があります。
②関節炎
関節が炎症を起こすリウマチや細菌感染によるもの、外傷によるものなど様々です。
③喘息
気管に慢性的な炎症が起きることが喘息です。それにより痰が詰まることが多くなったり、呼吸困難になりやすい症状があります。
④首や腰の痛み
デスクワークなどに多く見られる首や肩の凝り、肉体的な労働にも多い腰痛などです。姿勢によるものや、椎間板ヘルニアなどの症状からなるものがあります。
⑤呼吸器系の疾患
気管支喘息以外の呼吸器系疾患です。肺炎など様々な症状があります。
⑥うつ
うつ病や双極性障害をはじめとした気分が低下する、意欲がわかないなどの症状全般です。
⑦糖尿病
インスリンの不足や機能低下により体内の高血糖が長引いてしまうことにより、腎臓や網膜、神経などの合併症を引き起こす病です。
⑧偏頭痛
目の疲れやストレスなど、様々な原因から偏頭痛になることがあるでしょう。気圧の低下などからも起きるケースがあります。
⑨循環器系疾患
循環器に関わる様々な疾患です。心臓病と脳卒中である「循環器病」や、その原因となる高血圧や高コレステロールにも不調のリスクがあります。
参照:循環器病
⑩胃腸の疾患
食生活によるものや日頃のストレスのものまで様々な原因が考えられます。
健康問題が起きやすくなる原因は?
従業員の健康意識が低いことが挙げられる
このような健康問題が起きやすい原因として、「従業員の健康意識の低さ」があると考えられています。
例えば、
・食生活の偏りや運動不足などの、生活習慣の乱れ
・不調を自覚せず、医療機関にかかろうとしない
・定期的に健康状態をチェックしていない
など、注意すれば防げるところでも発生してしまっていることが原因と言われています。
企業側に原因があるケースもある
また、原因は従業員側のみにあるとは限りません。従業員に残業を強いていたり、本人の望まない勤務時間で労働を強いる(深夜勤務を強いるなど)など、企業側にも原因があるケースがあります。
最も問題視されているのは、睡眠とストレスの問題
さらに、最も問題視されている健康問題は、睡眠とストレスです。夜更かしなどによる睡眠不足はもちろんですが、ストレスによる不眠のケースも問題になります。
形として眠れていたとしても、眠りが浅いことでも様々な不調を招いてしまうのです。日本人の2人に1人は睡眠に何らかの問題を抱えていると言われています。
また、ストレスや不安、緊張を抱えたまま仕事をしているだけでも十分な集中力を保つことは難しいのではないのでしょうか。体への負担が大きくなり、うつやパニック障害などの精神障害を発症してしまいます。
精神障害の多くは治療や回復に長期間を要します。発症前のサインにいち早く気づき、対処を行うことでこれを防がなくてはなりません。
企業は「健康経営」を目指している
このようなアブセンティーズム、プレゼンティーズムを防ぐため、企業は「健康経営」と称し問題解消を目指しています。
この「健康経営」とは「企業が従業員などの健康に配慮することで経営面にも大きな効果が期待できる」と考え、健康管理を経営的な視点でとらえ対策を行うことです。
具体的な対策として「健康診断による従業員の健康状態の把握・管理」「効果的な就労支援」が必要であると考えられています。
プレゼンティーズムを防ぐためにできることは?
それでは、従業員一人一人がプレゼンティーズムを減らすためにできることにはどのようなものがあるでしょうか。
生活習慣の改善
まず、生活習慣を改善することが重要です。
・暴飲暴食や食事時間が不規則など、食生活の偏り
・睡眠習慣の改善
・運動不足の改善
など、日頃の生活習慣を見直す必要があるでしょう。
健康状態のチェックを行う
日頃の健康状態を知っていれば、「いつもと違う」と感じて些細な変化にも気づきやすくなります。そのような意味でも定期的に健康診断を受けるなど、健康状態のチェックや管理を行うことが大切です。
定期的に上司と相談する機会を設ける
職場でのストレスは、一人で解決できないことが多いでしょう。このようなことまで一人で悩みこんでいれば、ストレスがたまりやすくなります。
できる限り定期的に上司と相談する機会を設け、ストレスや不安を解消させる工夫をしていきましょう。
医療機関と相談する
既往症など、不調になりやすいポイントを知ることが大切です。その弱点をもとに疲労やさまざまな症状を招くリスクが高いからです。
ですから医療機関に相談し、既往症の有無や対策などを確認しておきましょう。
参考:アブセンティーズムとプレゼンティーズム 従業員の体調が企業に与える影響 | 中小企業の健康経営・働き方改革を支援する情報メディア
就労移行支援など、支援機関に相談してみる方法もある
ストレスの原因として、職場内でのコミュニケーションや、精神障害・発達障害による業務上の問題があるかもしれません。この場合、職場だけでなく支援機関に相談する方法もあります。
就労移行支援事業所は、障害を持つ方がより自分らしく働けるために助言を受けたり、スキルを磨くことができる施設です。
今の職場に不安を感じていたら、一度就労移行支援事業所に相談してみましょう。事業所は全国各地にさまざまなタイプの事業所が存在します。
Saladでは、各地の就労移行支援事業所の紹介をしております。こちらに実際に取材させていただいた事業所をご紹介しています。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
大人になると「腰痛持ち」「膝が悪い」など、完全に健康な状態でいるケースは少ないかもしれません。ですから成果を出し続けるためには、不調のパターンを見つけ、対処していかなければなりません。
健康管理は、仕事を行う上での重要な「スキル」です。まずは日ごろの生活習慣を見直すところから始めてみませんか?