気を付けているのに、よくものをなくす…
子供の頃から紛失を繰り返した
筆者は30歳のとき、診察先の病院で発達障害の診断を受けました。そのため、それまでは障害を持っている意識はありませんでした。
しかしながら、他の人からする「当たり前」のことがなぜかできない、というケースが多くありました。その中で代表的なものが「紛失」です。
子供のころから体操服や袋、道具などとにかく「落とす・なくす」が日常茶飯事でした。とにかくだらしない性格であったため、家族や学校の方をよく困らせていました。
仕事を始めてからも紛失があった
社会人になった後も紛失癖はなかなか治りませんでした。当時の職業柄多くの物事に注意を向けなければならず、臨機応変のオンパレードでした。
そのため注意力が散漫になりやすく、沢山のものをなくしてしまいました。奇跡的にどの案件も実物を発見したり、大事にならずに済んだりしているのは、周囲の方のおかげでしかありません。
では、発達障害の特性からなる過去に起こした紛失トラブルをご紹介したのち、どのように対策を取ったのかをお伝えします。
参考:物をなくす、努力が続かない…は注意欠如・多動症(ADHD)かも 厳しく叱ると「無気力」「反抗」に : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)
【発達障害体験談】過去に起こした紛失トラブル
【子供時代】授業に必要な表を三回紛失した
小学校の紛失で代表的なのは『音楽の縦笛の授業で使う進級表』です。これは先生の前で指定の曲を吹き、合格していくことでさらに上の級を目指していく…というものでした。
筆者はこの進級表を3回紛失しているのです。紛失すれば、そのたび最初からやり直しです。落とすたびに先生に言いに行っていたので、周りにも笑われたのを覚えています。
3回目になくした時には、先生も再発行してくれませんでした。子供でしたから仕方ありませんが、この時は「どうやってなくすのか傾向を把握していない」ことが繰り返した原因でした。
今考えられるのは、「次のこと(授業)を意識していて、今現在の意識が不足している」ことだと感じています。
結果的に全て音楽室で発見され、卒業前に3枚の進級表を受け取りました。
【職場】1週間で3度、仕事中に財布を紛失した
最初の仕事で、当時は職場に泊まる仕事をしていました。さらにはいつどんなことが起きるか分からないという、今から考えれば「発達障害(ASD)が最も苦手とすること」をよくやっていたなという感じです。
常に多くのことを意識していないといけない「マルチタスク」の状況が24時間続くため、ひとつのことに注意を向けにくい問題がありました。
その中、1週間に3回財布を紛失してしまったのです。そのたびキャッシュカード機能停止の連絡をしたり、復帰させたりで大変でした。何よりも先輩や上司の方が車を出して夜中まで探してくれました。3回目の時は、怒りを超えてうんざりされたのを覚えています。
原因として必ず、「他のことに気が向いているとき」に紛失していました。さらに繰り返したのは「また落とすかも…」と意識しすぎてトラウマ状態になっていたことが原因だったと考えています。
落とすことに怯えてしまうことで、注意力が下がっていたのです。
【職場】出張費請求に必要な飛行機の半券を誤って裁断処理した
その後人事異動で、事務職の部署に変更になりました。ここでは筆者は部署の社員全員の出張費の請求の業務をしていました。2年以上行っていたこともあり、業務の流れには自信を持っていました。この自信が、大きなミスを犯す原因となったのです。
部署の社員のほとんど、200人以上が遠隔地に長期出張することがありました。その中には、上層部の方もいます。この時の請求も、筆者が単独で行っていました。
過去にない事例であったため、会計担当の方針が何度も変わるのです。そのため、そのたび書類を作り直していました。
そうして、不要になった書類をシュレッダー処理していました。そのときに誤って上層部の方の請求書類に必要な添付書類も一緒に裁断してしまったのです。これは複製できないものであり、混乱からその日一日は何もできませんでした。
この時も原因は「書類を作り直す」ことに気を取られていて、目の前の裁断作業に注意を向けていないことが原因であったと考えています。
対処は、全て仲間が助けてくれました。「シュレッダー袋の中を出して、かけらから該当物を拾う担当」、「他の対処方法がないか調べる担当」に分けて進めました。どちらにも、筆者は携わっていません。何より、的確に指示をしてくれた上司に感謝をしています。
結果的に別の請求方法を確認することができ、問題なく請求することができました。しかし、その日は部署の方全員の仕事を止めてしまったのです。
この件を機に自分の身の回りに対しての注意をするよう、改善方法を探し始めました。
紛失防止のために工夫したこと
他のことを考えすぎないようにした
一度に多くのことを意識する「マルチタスク」が苦手で、容量を超えると紛失を招くリスクが高くなることが分かりました。そのため、一度に多くのことを考えすぎないよう、目の前のことが終わってから次を考える癖をつけるようにしました。
財布や鍵などはチェーンで決着するようにした
財布や鍵などの大切なものはチェーンなどで、ズボンに結着するようにしました。以降、現在に至るまで財布を紛失はありません。
不要なものを持ち歩かないようにした
マルチタスクは、「物」にあっても同様です。その時に持たなくてもよいものを持ち歩かないように注意しました。
デスクの上は必要最小限のものに留めるようにした
また事務仕事上での混乱は、デスクから現れます。当たり前のことかもしれませんが、使ったものは戻す、捨てるものをためすぎないなど、視界に見えるものを最小限に保つようにしています。
常に「今行うもののみ」を見えるようにして、混乱しづらい環境を心がけました。
書類を裁断するときは、1枚ずつ確認してから行う
書類を裁断するときはホチキス止めしてあるものは外し、一枚ずつ確認しながら裁断するようにしました。また、書類の作り直しをするときは訂正前のものと訂正後のもので混同しないよう、前のものを折り曲げたり印をつけたりして、間違えないように工夫もしています。
参考:忘れ物が多い、優先順位をつけられない。発達障害かも?という人のハック術(ライフハッカー[日本版]) – Yahoo!ニュース
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
このほかにもまだたくさんの紛失事案がありました。しかし、改善を心がけてからは、目立った紛失事案をしていません。余談ですが、書類を裁断した時に拾ってもらったかけらを15年近く経つ今でも持っています。これはその時のことを忘れないためです。
どうやっても治らないと思っていた「紛失癖」ですが、ちょっとした工夫と心がけで管理ができるようになりました。物の管理に困っていたら、参考にしていただけますと幸いです。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。診断を受けたのは30歳のころ。しかしそれ以前にも、子供ころから「他の人とは違う」ことを意識しながら生活していた。過去2か所の職場を経験。