アスペルガーは、発達障害固有の特性を持っている
ASD(自閉症スペクトラム)とは
ASD(自閉症スペクトラム)とは、「Autism Spectrum Disorder」の略称で、アスペルガー症候群、自閉症もASDの一種です。発達障害の一種で、先天的な脳機能の障害になります。
【主な特性】
○社会性やコミュニケーション、言葉を介さないやり取りが苦手
○変化を嫌い、決まりや定型パターンを好む。
○こだわりが強い。
○感覚過敏。など
参考:発達障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
参考:ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群) | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
このような方の中で、「記憶力がいい」ケースがあります。これが実は、アスペルガー=ASDを持つ方の特性に関係することがあるのです。
【大人の発達障害】ASD(自閉症スペクトラム)を持つ方が、記憶力がいい理由
ASDを持つ方は、なぜ記憶力が良いケースが多いのでしょうか?その理由をご紹介します。
1)こだわりが強いため、過去への執着も強い。
ASDを持つ方に多く見られる特徴が、こだわりの強さです。過去へのこだわりを強く持っていると、高い記憶力を発揮しやすくなります。
【例】
○幼稚園や小学校時代など、過去の些細な出来事を覚えている。
〇過去に会った人の名前や顔を覚えやすい。
2)視覚的な情報を処理するのが得意
ASDを持つ方は、相手の言葉など耳で聞いた物事の処理が苦手です。
反面、目で見た情報の処理が得意なことがあります。この場合、視覚的な情報に関して、記憶力を発揮しやすくなります。
【例】
○一度見た住所を暗記して覚えていた。
○他者からは「カメラのようだ」と言われている。
○不規則な数字の羅列を覚えるのが得意。
3)過敏な感覚に関わる場合、強く印象に残りやすい。
ASDを持つ方の特徴に、感覚過敏があります。過敏な感覚に直面したとき、障害を持たない方と比べて、強く印象に残り、記憶しやすくなります。
【例】
○過敏な音や雰囲気を、情景を思い浮かべながら詳しく表現できる。
4)決まりや定型パターンに忠実なため、関係事項を覚えやすい。
ASDを持つ方は、変化や臨機応変な対応が苦手です。そのため、決まりや定型パターンなどのルーティーンワークが生命線になります。したがって、生活に必要なため関係事項を記憶しやすくなります。
【例】
○毎日のスケジュール内のルーティーンワークを覚えている。(『月曜日はごみの日』などの日程、日用品の場所や配置など)
【大人の発達障害 個性を活かすヒント】記憶力がいい人の適職は?
法律、医療関係
弁護士などの法律関係や医療関係など、法律の文章や、医学などを覚える際に記憶力を活かすことができます。
文面を覚え、実行する際には言葉の裏が少なく、額面通りに忠実に行うことを求められます。そのため高い記憶力を活かすことができます。
研究職や専門職など、興味のある分野の仕事
ASDを持つ方はこだわりが強いです。興味のあることにも、とことんこだわれます。必要な物事を追求して記憶することで、社会で活躍できる力を発揮します。
ライターやイラストレーターなど、感覚を表現する仕事
過敏な感覚を鮮明に覚えていることで、より相手にリアルに伝わる、繊細な表現ができます。
記憶力がいいことでの、デメリットはあるの?
1)過去の辛い体験を引きずりやすい
昔のことが忘れられなくて辛い思いをされている方はいませんか?記憶力がいいと、このような悪い記憶も鮮明に覚えています。そのためトラウマやフラッシュバックなどに悩む方も多いのではないでしょうか。
【例】
○子供時代の辛い体験を鮮明に覚えているため、ネガティブになりやすい。
○「そんな昔のこと忘れなさい!」と怒られても忘れられない。
○一度怒られたり激しい感情をぶつけられると、その相手にはずっと印象が残ってしまう。
※対策
現在の物事がうまくいかないときに、過去の体験を持ち出すことが多いです。現在の課題への対策に焦点を当てる工夫をしましょう。
関連記事:アスペルガーは過去にこだわる!? フラッシュバックを防ぐ対策3つ
2)失敗したときなど、切り換えが苦手。
失敗した記憶が鮮明に残っているため、「前回もミスしたから、今回もミスをするに違いない」という発想になりやすいです。そのため、ミスをしたときの切り換えが苦手で引きずりやすいです。
また、記憶力がいい反面、記憶を頼りに行動し過ぎてしまうケースがあります。
【例】
○過去の失敗体験を持ち出して、今の課題に当てはめてしまう。
○前例にこだわりすぎてしまい、想定外の物事に動揺してしまう。
※対策
ミスをしたときなどは、「前回はこの方法でミスしたから、今回は変えてみよう。」など、建設的に考えるくせをつけましょう。
関連記事:【体験談】同じ悩みが無限ループのように離れない…止め方の工夫は
3)対話の中で相手との温度差を生みやすい
相手にとって覚えていて欲しくないことを話してしまったことや、何気なく話した言葉で、相手に「せっかく忘れていたのに!」と怒られた経験はありませんか?
他者と対話するときは、過去の話に注意が必要です。結果として、相手を傷つけてしまうかも知れません。記憶力がいいと相手との共通認識がずれ、温度差を生みやすくなります。対話の際には注意が必要です。
【例】
○過去の話をすると、他者と温度差がある。強く印象に残っているため、同じ話をしても自分だけ傷付くことがある。
○相手が忘れていた思い出を、何気なく話したら、相手を傷付けてしまった。
※対策
過去の話について相手から話してこない場合は、こちらから話すのは控えましょう。
このように、記憶力がいいことで苦しむ部分もあります。反対にこのようなことに苦しんでいたら、記憶力の良さを活かせる可能性があります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
あなたの個性、強みは今悩んでいるところにあるかもしれません。この記事で記憶力がいい方はもちろん、他の特徴を持つ方にも、自分の個性に気付くきっかけになれれば幸いです。
(筆者紹介)
30代男性。大人になってから発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)と診断されている。
公務員として10年間勤務、民間企業の障害者枠の事務職として4年間勤務。過去の物事を思い出すことで不安が高まるなどの経験がある。1年間、就労移行支援事業所に通所して、トレーニングを行った。就活の結果、強みを生かす就職が実現した。