大人の学習障害
学習障害は全般的な知的発達には問題がないのに、読む・書く・計算するなどの特定の学習にのみ困難がみとめられる状態を学習障害(LD)といいます。
文章を読んで正確に理解するのが難しいディスレクシア(読字障害)、文字を正確に書いて筋道を立てて理解するのが難しいディスグラフィア(書字表出障害)、算数や計算の難しいディスカリキュア(算数障害)の3つに大きく分けられます。
小児期に生じる読み書き障害は発達性ディスレクシアと呼ばれます。
発達性ディスレクシアの人はアルファベットを使用する文化圏で3%~12%と報告されています。
子供の頃は「勉強していない」「努力不足」と誤解されて見過ごされてしまう場合もあり、大人になってから障害に気づく人もいます。
大人の学習障害の診断を受けるには
学習障害があるかどうかはインターネット上のテストやチェックリスト、本を読んで自己診断ではわかりません。
学習障害は精神科(メンタルクリニック)の医師によって診断されますが、大人の学習障害を含む発達障害を診る医療機関は少ないのが現状です。
どの医療機関にかかってよいかわからないときは発達障害者支援センターや精神保健福祉センターなどに相談してみるのもよいでしょう。
学習障害とほかの障害
学習障害とほかの障害が併発する場合もあります。
ADHD、ASDなどの他の発達障害もあわせもっていたり、知的障害がある場合もあります。
また、知能指数(IQ)が平均的とされる範囲と知的障害の間の部分にあたる(おおむねIQ70~85程度)境界知能の場合も、計算や読み書きなどに困難が生じる場合もあります。
学習障害と見分けて必要な療育や支援を行う必要があります。
参考:知的障害(精神遅滞) | e-ヘルスネット(厚生労働省)
参考:なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした | NHK | WEB特集
学習障害のある大人が仕事で困ること
読むのが苦手・遅い
仕事の資料やマニュアルなどを読むのが難しいため、仕事の習得や習熟、遂行に支障が出ます。
学習障害のない人は無意識に文や単語のまとまりで文章を読んでいますが、学習障害の人は一文字ずつ読んでいる場合があります。
書くのが苦手・遅い
メモを取ることが遅かったり、できなかったりするために仕事を覚えるときや電話対応などのコミュニケーションがスムーズにできない場合があります。
一般的に「読み」に困難がある場合、「書き(書字)」にも困難がある場合がほとんどと言われています。
数字を扱う仕事ができない
たとえばレジのお金や在庫の品物の数が合わなくなると、業務に支障をきたし、損害が出る場合もあります。
このような数字の正確さが求められる仕事は苦手になる場合があります。
参考:学習障害(LD) | 仙台の心療内科・精神科・美容内科マドレクリニック
参考:学習障害/限局性学習症(LD/SLD)とは – 武田薬品工業 | 「大人の発達障害ナビ」
読み書き障害の人に向けた取り組み
パソコンやタブレットなどデジタル機器
パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデジタル機器には、テキストの読み上げ機能があります。
ICレコーダーで授業を録音したり、デジタルカメラで黒板を撮影したりすることで、復習や時間をかけた学習に役立てることができます。
他にも、読み上げやフリガナ(ルビ)、拡大縮小、ハイライトなどの電子書籍のような機能をもつデジタル教科書が導入されています。
このようにデジタル機器を学習に利用することで、弱視やディスレクシアの生徒の学習をサポートする取り組みが進められています。
ユニバーサルデザイン(UD)フォント
弱視やディスレクシアの人にも読みやすいフォントが開発され、使用されています。
たとえば「ろ」「る」などの形が似た文字や「b」「d」などの左右反転した文字などが区別がつきやすいように工夫されています。
学習障害のある人だけでなく、あらゆる人が読みやすいようにデザインされたフォントで、ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)と呼ばれ、教材やプリントなどに取り入れられています。
UDフォントを小学校のテストの字体に利用したところ、正答率があがったという調査結果もあります。
学校などの教育機関で教材に利用したり、パソコンにインストールしたりして利用されています。
参考:認知されにくい読み書き障害 UDフォントを使うと (1/3ページ) – 産経ニュース
参考:UD書体 | モリサワのフォント | 株式会社モリサワ
ディスレクシアの人を補助する定規やノート
ほかにも、文章の読み飛ばしを防ぎ、今読んでいるところがわかりやすいように示すためのリーディングルーラー(リーディングトラッカー)や、ディスレクシアの人でも読みやすいようデザインされたノートなどがあります。
参考:大栗紙工株式会社 | 発達障がい当事者の声をすくい上げて開発した「mahora(まほら)ノート」 – SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』
参考:目が滑って読書に集中できない時に便利な「リーディングトラッカー」活用術|@DIME アットダイム
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まとめ
機器の利用とサポートで仕事で強みを生かせる
学習障害を含む発達障害では精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)を取得することもできます。
精神障害者手帳を取得すると税金の控除や減免を受けられたり、各種福祉サービスの利用ができるようになります。
また、障害者雇用での就職が見込めます。
関連記事:大人の発達障害が分かっても障害者手帳はもらえる?手続きの紹介!
障害者雇用で就労した場合、仕事(職場)でデジタル機器を利用できるよう合理的配慮を職場にお願いすることもできます。
障害のある方向けのIT・Web系の非公開求人情報や、IT・Web系の技術を学べる就労移行支援事業所の検索ページなどを役立てていただけると幸いです。
参考:精神障害者福祉手帳|治療や生活へのサポート|メンタルヘルス|厚生労働省
参考:リーフレット「「合理的配慮」を知っていますか|厚生労働省
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