メンタルモデルとはなに?
メンタルモデルとは
メンタルモデルとは、個人ごとに持っているものの見方や考え方で認知心理学の用語です。このメンタルモデルが、自他を見る『レンズ』となることかあります。
分かりやすく例を挙げて説明しましょう。
コップの中に『7割くらい』の分量の水が入っている状況をイメージしてみてください。
さて、いまどう感じましたか?「7割『しかない』」と感じましたか?「7割『もある』」と感じましたか?
同じ状況なのに受け取り方が異なります。これも、個々のメンタルモデルの影響なのです。
メンタルモデルは、経験や性格から作られる
メンタルモデルは、これまでの経験や個人の性格により作られます。コップの例で言えば、
・普段、コップいっぱいに水を入れる人
・普段から「足りないこと」に意識を向けがちな人
このような場合は『~しかない』と考えるかもしれません。対して
・普段、半分くらい水を入れる人
・普段から満たされている、与えられている意識を持っている人
このような場合は『~もある』と意識しやすい、という感覚です。
自己肯定感の低さは、メンタルモデルの影響の可能性がある
自己肯定感は、正しく自分を見るため、健全な精神を保つためなど、人が生きていく『軸』になる感情です。これが低いことで、より苦しみやすく、生きにくくなることも考えられます。先ほどのコップの例のようにメンタルモデルによって「足りない」ことへの意識が強いと、自己肯定感も低くなりやすいのです。
今回は、そのような『自己肯定感とメンタルモデルの関係』についてお伝えしていきましょう。自己肯定感について知っておきたい場合はこちらの記事「セルフエスティームとは。自己肯定感について見直してみよう」も併せてチェックしておきましょう。
自己肯定感を下げるメンタルモデルの特徴は?
他者の評価を受けたときのメンタルモデル
他者の評価を受けた時、メンタルモデルによってその後の意識に差が出てきます。
例えば、仕事などで上司から褒められたとしましょう。『褒められた。とても嬉しいからもっと頑張ろう』と感じることも、『自分はもっと評価されるべきだ』と不満に感じるのも、メンタルモデルの影響です。
特に評価に関してのメンタルモデルの違いは、業務完了後などに相手から「何も言われなかったとき」に強く現れるのではないでしょうか。何も言われないことを『問題がなかった』とポジティブに捉えるケースと、『褒められないということは、良くなかったんだ』とネガティブに捉えるのとでは、その後の自己肯定感にも差が出てくるでしょう。
このように、他者への評価に対してどのような「メンタルモデル」で受け取るかによって、自己肯定感の高低にも影響してくるケースがあるのです。
目標達成、成果に関するメンタルモデル
メンタルモデルは他者評価だけでなく、自己評価にも関わります。何か自分で掲げた目標に対して、成果を挙げたとしましょう。そのとき、同じ状況でも『成果を出すことができた』と捉えるか、『もっと良い成果を出すべきだった』と後悔するかも、メンタルモデルが関わるケースがあるのです。
後者の感情はモチベーションが上がるケースもありますが、どのような結果にせよ心身への負担は大きいものへとなるでしょう。
対人関係に対してのメンタルモデル
対人関係やコミュニケーションに関してもメンタルモデルが関係することがあります。相手の反応が理解できない時、『大丈夫。何も意識していないだけだ』と問題視しないか、『きっと何か悪いことを考えているに違いない』と不安に感じるかで関わり方やストレスの感じ方に違いが出てきます。
また対人関係の場合、一度失敗した経験がさらに強いメンタルモデルとして残り、以降の対人関係にも影響してくるケースが多いです。そのため人との関わりの中でのメンタルモデルには、充分な注意が必要なのではないでしょうか。
発達障害、精神障害は不安を感じやすい
ADHD、ASDなどをはじめとした発達障害、うつ病やパニック障害、社交不安障害などの精神障害の多くは、不安を感じやすい特徴があります。
この不安がメンタルモデルから来ていることもあれば、反対に不安から新たな(ネガティブな)メンタルモデルを作ってしまうおそれもあるのです。不安が強い、『絶対こうであるに違いない』という意識が強いなどの理由から、ネガティブな状況を作りやすいことを意識する必要があるでしょう。
不安を抱え続けることで、不安状態が当たり前な状況を作っていませんか?心身の健康を保つこと、パフォーマンス向上のためにも、メンタルモデルの見直しは大切なことなのです。では、メンタルモデルを見直すためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
【自己肯定感向上】メンタルモデル改善のコツ
自分の経験を書き出し、客観的に見つめ直してみる
ネガティブさが強いメンタルモデルを持っていると、自分の中で『ネガティブな記憶』のみを残してしまう傾向があります。無意識のうちに、メンタルモデルを作るうえで邪魔になる『良い経験の記憶』を消してしまいがちです。
これらを改善し、メンタルモデルを見直すためには客観的に自分の経験を見直してみることが効果的です。紙に書き出すなどして整理してみることで、事実と思い込みに差がないかチェックしてみましょう。
これまでと違う経験や対人関係に触れてみる
現在意識している『~であるに違いない』などのメンタルモデルは、これまでに関わってきた人から言われたことや経験したことから得たものなどから作られます。そのため、同じ人とずっと接していれば、その人が変わらない限り新しい見解を聞くことは難しくなるということです。同様に同じことをずっと続けているのみでは、同じ感覚しか得られないことにつながりやすいです。
もしメンタルモデルなど、意識を変えることに苦労している場合は、新しい対人関係に触れてみたり、今までトライしたことないことに興味を持つなどしてみましょう。生活の流れを少し変えてみることで、メンタルモデル改善のきっかけをつかめるかもしれません。
自己肯定感と自己効力感のバランスを見直してみる
メンタルモデルを含め、意識を変えることが最も難しいのは『自分は絶対に間違っていない』と考えているケースです。この様な場合自己肯定感は高いものの、自己効力感(自分なら達成できるかもしれない、できるかもしれないと感じる感情のこと)が低い可能性があります。
物事を正確に受け止めるためには、両者のバランスを保つことも大切です。こちらの記事「自己肯定感と自己効力感(セルフエフィカシー)の違い、要点を解説」を参考にして、自己肯定感と自己効力感の関係についても見直してみましょう。
関連記事:セルフエフィカシーとは。障害者の働く自信を高めることにつながる!
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
障害を持っていると、つい『自分は障害を持っているから…』と自信を無くしてしまうこともあるでしょう。これもまた、「障害はマイナス」というメンタルモデルの影響かも知れません。ですからメンタルモデルを改善することで「障害を持つからこそ気づけること」に目を向けることにつながるのです。
今自分で感じている「ルール」には、異なる一面があるかもしれません。そのような気づきを得るためにも、一度メンタルモデルについて考えてみましょう。