会話の中でも勝負にこだわるケースがある
会話に『勝敗』を求めていることがある
職場や私生活の中で、発達障害を持つ方はコミュニケーションに苦労するケースが多いです。その中の一つに、『会話の中に勝敗を求める』ことがあります。
会話のひとつひとつに「勝った」「負けた」を意識することで、常に相手を圧倒しようと考えてしまう傾向があるのです。
参考:発達障害 | 地方独立行政法人山梨県立北病院 – 山梨県立中央病院
参考:そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? – 大人の発達障害|NHK福祉ポータル ハートネット
勝負にこだわることで、相手を思いやれないことにつながる
「相手を圧倒しよう」「相手を打ち負かそう」と考えれば、当然相手を思いやることはできなくなるでしょう。この様な行為によって、対人関係が悪化し、孤立してしまうことやうつ病などの二次障害を招いてしまうことになるのです。
関連記事:発達障害の二次障害ってどんなものがあるの?事前にできる予防法は?
しかし、発達障害を持つ方にはなぜ『勝負にこだわる』ケースがあるのでしょうか。
今回は、
○発達障害を持つ方の『勝負にこだわる』話し方には、どのようなもの(種類)があるか
○勝負にこだわり、相手を思いやれないのはどうしてか(原因)
○相手を思いやるにはどうすればよいのか(改善方法)
この3点について紹介します。
まずは勝負へのこだわりから「相手を打ち負かそうと話し方」について見ていきましょう。
勝負にこだわる話し方の種類
知識で打ち負かそうとする
知識で上まろう、圧倒しようとして相手を打ち負かそうとすることはありませんか?「自分の方が知っている」と示したいためだけに知識を話すことは相手にプレッシャーをかけています。アドバイスのつもりで言っていても、それは思いやりではありません。
また、自分が知っているものを相手が知らなかったときに「そんなことも知らないの?」と話したり、そのような素振りを示したりすることも同様です。
一方的に話し、主導権を持とうとする
常に自分が会話をリードしていたい。テレビのバラエティで言う「MC=司会」のように、常に会話の中心は自分でいたい。と感じることはありませんか?これは複数人で話す際に起こりやすいです。
常に話しながら誰が一番かを意識していると、相手を思いやることはできません。周りからは「蹴落としてでも一番になりたい」ように見えることもあります。このように、会話の中で常に「順位」を考えている場合は注意しましょう。
また、障害特性として無意識のうちに一方的に話してしまっているケースも同様です。
怒鳴る・大声を出すなど、話し方で圧倒しようとする
会話の内容で相手を納得できない場合、声を荒げたり、大声を出したりしていませんか?このように「力と勢いで相手を圧倒させる」行為も、勝負へのこだわりから来ているケースがあります。
強引に聞かせようとするのですから、当然思いやりのある行為ではありません。
この場合言われている相手はもちろん、話している本人にも精神的負担がかかっていることが多いです。
卑屈な発言をして、相手に否定させようとする
「どうせ自分はダメな人だから…」「こんなダメな人間に…」と敢えて話して、相手から「そんなことないよ」と言われることを期待していませんか?
この場合、表向きでは圧倒しようとはしていません。しかし相手を自分の思い通りにしたいという気持ちが強すぎて、結果的に相手を圧倒する形になってしまうのです。
思いやれない原因は、自己肯定感の低さにある
ではなぜ、このように会話の中にまで勝負にこだわってしまうのでしょうか。主な原因の一つとして「自己肯定感の低さ」があります。自己肯定感とは、自分が自分であることを受け入れ、認める感覚のことです。これが低いと、自分だけで自分の精神を成り立たせることができなくなります。
その結果、「他者との勝敗」という分かりやすい指標に意識が向いてしまうのです。自己肯定感の回復法については、下記の関連記事を参考にしてみてください。
関連記事:【発達障害】自己肯定感が低い原因は?働く自信が持てない時の対処法
この改善方法としては、認知行動療法が効果的
認知行動療法は、あらゆる考え方のくせを改善できる
それでは会話で勝負にこだわる気持ちを抑え、相手を思いやる気持ちを保つためには、どのような方法が効果的なのでしょうか。
その方法の一つに「認知行動療法」があります。認知行動療法とは、物の受け取り方や考え方のくせを見つけ、客観的な視点から行動を変えていく治療法です。
勝負にこだわる『考え方のくせ』もこの認知行動療法で改善できる可能性があります。
それでは、どのようにして「勝負にこだわる気持ち」を改善していくか、認知行動療法の流れを紹介します。特に特別な知識は不要で、手軽に行えるものですから、安心してください。
勝負にこだわる気持ちを抑え、相手を思いやるための認知行動療法
ステップ1:なぜ勝たないといけないのか、振り返ってみる
まずはどうして「勝たなければいけないのか」、改めて考え直してみましょう。
「そもそも、どうして『勝たないといけない』と思うのだろう?」など、頭に「そもそも~」をつけて疑問に思ってみることがコツです。
ステップ2:勝負にこだわる原因を見付ける
ステップ1を進めていくと、自分の根底にある主観「勝ちたい理由」に気づくようになります。ここでどうして会話の中に勝負を求めているのか、こだわる原因を見つけていきましょう。
ステップ3:行動や話し方を改善していく
原因を見つけていく中で『負けている』『劣っている』ことは誰も言っていないことに気づいたのではないでしょうか。自分の中の思い込みの中で事実と異なることを改善し、「そもそも勝負をする必要はない」ことに気づいていきます。
自己肯定感を高めるために、職場環境を見直す方法もある
今回は、自分の中の「勝負にこだわる」気持ちの抑え方についてお伝えし、その原因が「自己肯定感の低さから来ている」ともお話ししました。自己肯定感は自分の意識を変えることで改善されることもありますが、「活きる環境」によって改善されることもあります。
そのきっかけのうちの一つが、「カスタマイズ就業」です。これは従来の障害を持つ方にとって苦手なものを克服させていく働き方とは異なり、本来持っている強みを伸ばして活かしていくスタイルなのです。ですから自然とポジティブな気持ちに目が行きやすくなるかもしれません。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
心の中で「負けている」「劣っている」と言う気持ちを持っていると、それを取り返そうとして必死になってしまいます。しかしながら、実際には誰も劣っていると思っていないがゆえに、結果周囲を圧倒しているケースが出来上がってしまうのです。
このような「周囲との捉え方の違い」は、自分だけでは気づきにくいものです。もし自分が「負けている」と感じていたら、いちど上司に相談してみましょう。あなたが知らない、あなたの良さを知っているかもしれません。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。