発達障害を持つ方は、会話以外にもやり取りの課題がある
言葉をうまく解釈・表現できないことに困りやすい
発達障害を持つ方は、コミュニケーションにおいて困難を感じやすく、会話の食い違いに困りやすいです。原因は意図をうまく汲み取れない、情報をうまく処理ができないなど様々な特性がかかわります。
しかし、発達障害を持つ方がコミュニケーションに困る理由はもうひとつあります。
「感謝」「謝罪」をうまく伝えられないことでも支障が起きやすい
それは、「ありがとう」「ごめんなさい」をうまく表現できないことです。厳密にいうと、表現方法が違うために周囲に理解されにくいのです。
自分では伝えているつもりでも、表情などにその思いが見えない場合など、誤解を与えてしまいやすいです。
発達障害を持つ方が、「ありがとう」「ごめんなさい」を言えない理由
1)激しい羞恥心を感じるから
発達障害を持つ方の中には、これまでに他者とあまり関わらなかった方もいるのではないでしょうか。このような方の場合、感謝や謝罪という「気持ち」を伝えることに慣れていないため、感覚が分からず強く恥ずかしい気持ちになるケースがあります。
特に、自分より目上の方には言えても、目下の方には言えないことが多いです。
2)自分には刺激が強すぎる言葉だから
上記と同様、他者との関わりが少ない場合に加えて、もともと感情表現のやり取りが苦手な方の場合です。事務的な言葉のやり取りはできても、感情を伴うやり取りになると刺激が強すぎて耐えられないケースです。
分かりやすく例えると、「極端に辛い物が苦手な方は、甘口のカレーでも食べられない」というような感覚に近いのではないでしょうか。
そのくらい、感情の行き来自体が辛い方には言いづらい言葉なのではないでしょうか。
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3)「言えば終わり」と感じるくらいに追い詰めてしまうから
精神的に追い詰められている場合はもちろん、常に「白か黒かの思考」で考えている方に多いです。
この場合「勝つか負けるか」でコミュニケーションを考えやすいです。常に相手と「勝負」をしていませんか?常に相手より「優位に立つ」ことを考えていませんか?敵だと思うと、気持ちを伝えにくくなってしまいます。
4)自分の非を認めると、罪悪感に耐えられないから
過去にひどく叱責された経験や精神的に辛いことを言われている方に見られます。
明らかに本人が悪くても、非を認めてしまうとこの辛い状況を想像してしまいます。その時の罪悪感や恐怖感に耐えられないため、本能的に感謝や謝罪の状況自体を回避しようとしてしまいます。
こうなると、周囲に「反省の色がない」「生意気だ」と感じさせてしまいます。
5)うまく謝罪を表現しようと考えすぎてしまうから
シンプルな言葉で伝えることが苦手で、ひねった表現を好む方に多く見られます。本人にその意識がなくても、日ごろからのひねった表現がそのまま感謝や謝罪の表現として相手に向けていることがあります。反対に「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉を言うのに耐えられません。
相手から「遠回しな表現だ」など言われていませんか?その場合、あなたの表現方法では、真意が伝わっていないかもしれません。
「ありがとう」「ごめんなさい」が大切なのは、いつまでも大切なこと
「ありがとう、ごめんなさいは小さい子供だけが言えばいい。」「大人はそんなシンプルな言葉は必要ない。」
このような考えを持っていませんか?確かにそのように考える方は多いです。障害を持たない方でも、言わない方がいます。しかし、そのような解釈が原因で、対人関係がスムーズに行かないことも事実です。
シンプルな言葉でありながら、一生どこの場面でも、「ありがとう」「ごめんなさい」を伝えることは大切なのです。
それでは、お互いに負担なく感謝や謝罪を表現するには、どのようにすればよいのでしょうか。
ありがとう、ごめんなさいを伝えるコミュニケーション法
1)始めに感謝や謝罪を伝えてから、事情を説明する
感謝や謝罪を伝えるのに羞恥心を伴う場合、どうしても「言い訳」ととられる事情を先に説明しがちです。事情を説明して、謝罪のダメージを緩和しようとしてしまいます。
しかし、後まわしにするとさらに羞恥心やプレッシャーがかかります。何より、相手に誠意が伝わりません。
伝えやすい方法として、「ありがとう」「ごめんなさい」を最初に言うことです。そうすれば相手ものちの説明を受け取りやすく、あなたも負担なくやり取りができます。
2)簡単なことから言い始める
感情表現に対する刺激が強すぎて言えない、という方は簡単なところから言ってみましょう。「落ちたペンを拾ってもらった」「ウェットティッシュを分けてくれた」ときなど、些細なことから伝えていくのがコツです。
「えっ!?こんな小さなことで?」と感じるかも知れません。しかし、反対にこのような些細なことでも「ありがとう」「ごめん」が言えることが大切なことなのです。
3)「敵」という概念を捨て、「仲間」と考える
自信がないゆえにどうしても、周囲と競争して「自分が『いちばん』でありたい」と考えてしまいます。
この場合、まず競争概念を捨てなければなりません。少なくとも周囲の方は「敵」ではありません。「仲間」なのです。どんなに相手の言葉が攻撃的に聞こえたとしても、仲間なのです。
これを意識するだけで、相手の心情を受け取りやすくなります。それによって感謝や謝罪も言いやすくなります。
4)関わりがある限りは非を責めることはない
分かりやすく説明しますと「本当に罪悪感を持たないといけないような『非』であれば、誰も関わろうとしなくなる」ということです。
ですから、まだ謝罪を言わないといけないような状況であれば、大丈夫です。
反対に、非を避けるような考え方でいくと、相手の非にも厳しくなります。そのような意味でも自分の中の「許される状況」を広げてあげましょう。
5)言葉以外で伝える方法を加える
言葉で表現しようとすると良く伝わらない場合は、行動を合わせてみることです。具体的に言えば、「言葉とともに簡単なお菓子をあげる」ことや「相手が困っていた時に動いてあげる」ことで、言葉の伝わらなさをカバーできます。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
色々方法をお伝えしましたが、「ありがとう」「ごめんなさい」を言うのはなかなか難しいものです。それは発達障害を持たない方でも同様です。それくらい、難しいことなのです。だからこそ、謝罪を求める裁判などが存在します。ですからあなたが言えるようになれば、できない人の中で一歩リードできるのです。