「カスタマイズ就業」とはなに?
カスタマイズ就業とは
「カスタマイズ就業」とは、障害を持つ社員と雇用する企業の雇用関係を、双方の要望を満たしかつ、特性を活かし合える方法で個別化することを意味します。
障害を持つ方の安定した生活ができるよう、企業が業務内容を定める「福祉的就労」とは異なります。カスタマイズ就業は、あなたの持つ特性や強みを十分に生かせる業務を、双方で考えて工夫していきます。よってあなたの職場での成長が、企業が求める成長につながります。
関連記事:カスタマイズ就業とは(手段と効果)
従来の「福祉的就労」と「カスタマイズ就業」の違い
1)【企業側】企業も障害を持つ方の強みで成長できる。
福祉的就労において企業があなたに求める目的は、「仕事につき、安定して生活(仕事)をすること」です。就労していない障害を持つ方に働く場を設けて、社会生活の安定を図ります。そのため仕事の成果に関して、企業が障害を持つ方に要求していることは少ないです。
一方、カスタマイズ就業で企業があなたに求める目的は、「あなたが企業に貢献すること」です。違いを分かりやすく説明しますと、
企業にとって福祉的就労の場合→あなたの就職は、企業にとっての「ゴール」です。
カスタマイズ就業の場合→あなたの就職は、企業にとっての「スタート」です。
2)【応募者側】障害を持つ方のモチベーションが保てる。
福祉的就労では、障害を持つ方の求めている仕事とは限りません。企業が予め用意した仕事をします。結果あなたが持つ「強み」を生かせることは少ないです。
企業はあなたが「弱み」に触れて体調を崩さないよう、あなた「でも」できる仕事を任せることが多いです。そのため、「仕事は問題なくできるけど、やりがいがなくて続かない・・」と感じた方も多いのではないでしょうか。
中には「やりがいが欲しくて、もっと頑張りたい。でも、周囲の方に心配されるから頑張れない・・」ともどかしさを感じた方もいたのではないでしょうか?
カスタマイズ就業であなたが行う仕事は、あなた「だから」できる、あなたが持つ強みを企業が必要とする業務です。成長し続けることを求められるため、障害を持つ方は、働く中で「やりがい」を感じることができます。
発達障害は、従来の働き方では『苦手克服』を求められやすい
発達障害を持つ方は、これまでの福祉的就労のあり方では要望に合わないケースがおおくあります。それは得手不得手にムラがあり、平均的なスキルを求めやすいことからです。
どうしても不得手な部分を埋めるために労力を費やすことになり、良さを伸ばせないか、ひどい場合はストレスや負担から体調を崩してしまうことにもなりかねません。
このようなケースが多い発達障害を持つ方にとってカスタマイズ就業は、強みを活かして活躍できるチャンスでもあるのです。
関連記事:【発達障害】苦手克服を求める職場とは?頑張りすぎると適応障害に
【発達障害を持つ方の就職】「カスタマイズ就業」に必要な対策3つ
「カスタマイズ就業」という言葉を初めて目にする方が多いかも知れません。名前だけ聞くと「カスタマイズ・・何か難しいことなのかな・・?」と抵抗を感じる方もいるかも知れません。
しかしながら、「障害を持っていて、かつ就職に向けて努力している」方や、「就労移行支援に通っていて、スタッフの方と相談しながら学んでいる」方などであれば取り組むことができる、あなたにとっても「身近なこと」なのです。
以降、あなたの「カスタマイズ就業」を実現させるために必要な「3つの対策」をご紹介します。
対策1:「特性」を見直してみる。
【あなた自身の特性理解が必要】
カスタマイズ就業では、あなたの持つ特性の強みを「武器」にして仕事をすることになります。弱さや生きづらさに向けた、弱点克服の「穴埋め作業」ではありません。そのため、職場であなたは自分の強みを生かして活躍する「責任」を持つことになります。
あなたの特性を今一度よく見直してみましょう。「強み」と「弱み」をコントロールできるくらいに理解することが必要です。
例.
強み「私は集中力が強みだから、データ入力業務ならとことん集中できる。」
弱み「反面、過集中してしまうから、タイミングや方法を工夫しよう。」
など
対策2:「好きなこと」を書き出してみる。
【あなたの主体性が必要】
カスタマイズ就業では、あなたの主体性を求められます。そのため企業の問題に対してあなたから提案することや、発信することも求められます。
主体性を持つための近道は、「あなたが没頭できるくらいに好きなことを見つけること」です。「スポーツのことだったら何でも知ってる!」「日本の歴史のことといえばあの人だよね」のような、「自分の好きなこと」を思い返してみてください。
あなたの好きなことの方が考える負担がなく、発信しやすいからです。「好きなことと言われても・・仕事にならないような趣味ばかりで・・」と感じる方もいるかも知れません。はじめは好きなことが仕事に結び付く、つかないは関係ありません。
あなたの生活の中で、とにかく思いつくままに「何気なく毎日やっていること」「没頭できるくらいに好きなこと」をたくさん探し出してみてください。その中から仕事に結び付くものを選んでいきましょう。それでも分からないときは、家族や親しい友人などあなたをよく知る方に聞いてみる方法も良いでしょう。
対策3:社会や企業が困っていることを知る
【困っていることを知って、貢献する意欲が必要】
カスタマイズ就業では、あなたも企業の大切な「戦力」です。よってあなたの成果も求めています。そのため周囲の方との関わりも求められます。
電話が苦手、口頭報告が苦手などの弱みをどうカバーしてやり取りをするか。その視点も大事ですが、相手が困っていることをしって、そこにどのように自分の特性や、できること・やりたいことが活かせるか、主体性を持って貢献する意欲が必要です。
そこに加え、しっかりコミュニケーションツールを用いて発信することができれば、なおいいでしょう。
例.
所属する事業部の同僚や上司に、事業部の業務目的や、その目的を実現する上で足りないことを聞いてみる。
電話でのやり取りが苦手。でも文面でのやりとりが得意なので、チャットならやり取りができる。
決められた時間にスカイプのテレビ電話を使用してやり取りしたい。
など
関連記事:【障害者枠での面接・選考】企業の事業課題について質問してみよう
発達障害を持つ方へ。『Salad』がカスタマイズ就業など強みを活かす就職のサポートをします
まとめ
【障害を持つ方でも、誰かを助けていい】
福祉的就労は障害を持つ方に仕事をする生活を設ける、大切な制度です。
しかしながらシステム上周囲から障害を持つ方は「助けが必要な人」という見方をされやすいです。就労経験のある方で「誰かのために頑張りたい」という思いで周囲を助けようとして、「無理をするな」とムッとされた方もいるのではないでしょうか?
目的が見えないまま機械的に仕事を続けるのは、とてもつらいことですよね。カスタマイズ就業は、そんなあなたの「悩み」が仕事の活力です。
本来障害を持つ方、持っていない方に関わらず、人間誰一人として完璧な人はいません。誰かの弱みを他の誰かの強みで補い合うものです。あなたが我慢なく成長できる仕事で、誰かのためになる仕事を見つけるために、今一度、自分を見つめなおすきっかけになってもらえたら幸いです。
【筆者紹介】
salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)と診断される。公務員約10年間で一度、民間企業約5年間で一度と20代、30代の9年間で二度のうつを経験。
【カスタマイズ就業について】ダイジェスト版(1分30秒)
salad編集長の森が説明しています。フル版をご覧になりたい方は、以下のフォームにあなたのお名前(ニックネームでも可)と、メールアドレスを入力し送信してください。折り返し、ビデオのURLをお送りいたします。