アンコンシャスバイアスとはどんなこと?
アンコンシャスバイアスとは
「アンコンシャスバイアス」とは、無意識のうちに感じている物事への見方・受け通り方の歪み・偏りを指す言葉です。素早く思考をするためのもので、少なからずどのような方にも持っている思考です。
しかしこれが強く現れてくると、差別や偏見、コミュニケーションでのすれ違いを生む原因になってしまいます。
関連記事:アンコンシャスバイアスとは?職場で嫌われやすいときは要チェック!
ASDは、アンコンシャスバイアスによるすれ違いを起こしやすい
かつて「アスペルガー」など呼ばれていた発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)はこのアンコンシャスバイアスが強く出る傾向があるのです。
その理由として以下のポイントが挙げられます。
・こだわりが強く、関心のある物事への思いが強い
・失敗などを引きずりやすいため、過去の経験を基準に考えることが多い
・変化が苦手で、考えを改めることが苦手
これらの特性により、アンコンシャスバイアスによって悩むケースがあるかもしれません。
アンコンシャスバイアスの思い込みで、困ったこと・困らせたことがあった
筆者もまた、ASDを持っています。
過去の体験の中で
・他者のアンコンシャスバイアス(思い込み)により、困ったこと
・自分のアンコンシャスバイアスにより、他者を困らせてしまったこと
この2つを経験しました。
今回は、この2点について紹介します。
【体験談】他人のアンコンシャスバイアスで困った例
物事の得意・苦手なことへの思い込み
【これができるのだから、これもできて『当たり前』】
ASDを含む発達障害は、得意・苦手のムラが強いケースが多いです。さらに一般的に考えられている成長段階と異なることで、周囲の理解を得にくいことがあります。障害を持たない人の中で、潜在的に「成長の順番はこうであるに違いない」とあるのです。この考え方に苦労することがありました。
発達障害を持つ方は、障害を持たない方が「簡単」だとしていることができず、反対に「難しい」としていることができるケースがあるのです。
こういったケースを見て周りから「簡単なこともできないくせに偉そうだ」と不満を持たれることがありました。
『みんなができることなのだから簡単だ』という思い込みに苦労したわけです。
性別に関しての思い込み
【男なのだから、『できないといけない』】
筆者は、最も苦手な業務の中に「車の運転」がありました。同時に多くの物事に注しなければならないことが、どうしてもできないのです。さらに方向音痴、地図を読むことが苦手なことも加わって、うまく運転できません。
過去に勤めた業務では、部署内の上層部の方を送迎する業務が予定されていました。職場全体に「男なのだから、運転できて当たり前」という先入観があったのです。どうしてもできないことをやらなくてはならないというプレッシャーが、うつ病になった要因のひとつでもありました。
『障害者』という立場への思い込み
【障害者は、こうで『あるべきだ』】
障害を持たない方から見る『障害者』という先入観にも苦しみました。「障害者とは、こんな人だ」というイメージを持っていることが多いのです。ですから普段見た目からは目立ちにくい発達障害の苦しみを理解してもらえないことがありました。
「話せているし、障害なんて言い訳だ」と職場や友人関係の中で言われる機会が複数回あったのです。
また、発達障害は得意なことに関して大きく活躍できるチャンスを持っています。しかし「障害者は(一般的にいう)健常者より下」という思い込みの影響で、業務での提案やアイディアを聞き入れてもらえないことがあったのです。
業務の中で意見を主張とすると、「サポートしてもらう立場の人間が偉そうにするな」と周囲から嫌がらせを受けることもありました。このときは、悔しさしかありませんでした。
このような事情から、他人のアンコンシャスバイアスで悩むことがありました。また、自分の強い思い込みから『周囲の誤解は正さなければいけない』とプレッシャーをかけていたことでさらに苦しんだのです。
では、反対に筆者の持つアンコンシャスバイアスによって他者を困らせてしまったことを紹介していきましょう。
自分のアンコンシャスバイアスで困らせてしまったこと
思いやりが空回りしてしまう
【他人のためにしてあげることは、『全て』良いこと】
筆者は良く、職場で気を遣い過ぎてしまうときがありました。常に周囲の状況にアンテナを張り、「コピー機の紙がなくなったら補充する」「ゴミがたまったらまとめて捨てに行く」など、こまめに動いていたのです。
筆者としては、「良かれと思って」行動していました。しかし周囲からすれば『自分のことは自分でやる』と感じていたので、筆者の行動は「余計なお世話」であったのです。
なんでも「してあげれば良い」とは限らないのに、思いやりだと思い込んで周囲を困らせていたことがありました。以降は、本当に必要なことを確認してから動くようにしています。
コンプレックスに関する思い込み
【大学生は、『遊んでいる』】
筆者は大学に行っていないことをコンプレックスに感じています。4年間がっちり勉強している人よりも、楽しく遊びながら「キャンパスライフを満喫していそうな人」に対して抱くことが多いです。自分がそのような期間なくすぐに就職したため、遊ぶ期間が少なかったためです。楽しそうなキラキラ感を見てしまうと、イライラしてしまうことがありました。
そのため、大学生らしき人を見ただけで睨み付けてしまうことがあったのです。相手がどんな気持ちで学んでいるのか、そもそも大学生なのかどうかも分からないのに『大学生っぽい』というだけで行動に出てしまうことがありました。
現在ではコントロールするようにして、『自分の中で、違いを感じすぎない』『頑張って勉強している大学生もいる』と言い聞かせるようにしています。
多様化や個別化が浸透すると、柔軟な考え方が必要になる
今後、様々な価値観や個性が受け入れられる時代になるよう、ニューロダイバーシティやソーシャルインクルージョンなどの考え方が出てきました。
このような『ひとりひとりの個性』が受け入れられてくるようになると、より一辺倒な考え方ができなくなるかもしれません。そのため、今以上に柔軟に物事を考えられるスキルを身につけておく必要があります。
参考:ニューロ・ダイバーシティとは? 企業で注目される理由 – 『日本の人事部』
参考:ソーシャルインクルージョン – 障害保健福祉研究情報システム
アンコンシャスバイアスを日々見直す心掛けが必要
コミュニケーションのすれ違いをなくすためには、根本となる思考を見直さなければなりません。
自分が普段どのような思考の偏りがあるのか。常に自分のアンコンシャスバイアスを見直す心がけが必要です。下記の参考リンクで自分のアンコンシャスバイアスを確かめられるテストがあります。興味のある場合は、ぜひチェックしてみましょう。
その他改善策や対策に関しては、こちらの記事「アンコンシャスバイアスから発達障害の自分ルールや思い込みを改善!」を参考にしてみてください。
参考: IATテスト ホームページ
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
ASDの特性上、つい何でも「ルール」として統一させたくなるかもしれません。そのたび違うパターンを想像することが苦手なため、つい同様のケースとして考えたくなることもあるでしょう。
しかし、このような考え方こそ「知らない間に嫌われる」「誤解される理由が分からない」事態を招きかねません。ですから定期的にアンコンシャスバイアスを確認して、思い込みの偏りを見直していきましょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。30代男性。広汎性発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。