【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれの男性。ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。HSP気質も強く、周囲の負の感情に最も苦労した。20歳からおよそ12年間公務員として勤務(うち2年間休職)。うつ病を経験し、退職したのち今回紹介する障害者雇用の仕事に就職。およそ4年間の勤務ののち退職。1年間の就労移行支援でのトレーニングを経て、現在に至る。
障害者雇用として、企業で仕事をしたことがある
障害者雇用で、事務職の仕事を経験した
筆者はおよそ4年間、障害者雇用で民間企業に勤めたことがあります。仕事は事務職で、それまでに経験していた業務でありました。しかし取り扱うものや目的が違うため、前の職場とは別の仕事として意識するようにしていました。
主な業務内容としては内部書類の作成や請求書類のチェックなどです。初めの一年は先輩方のお手伝いという形で進めていき、2年目からは単独で仕事を担当することになりました。以降、退職まで同じ業務を続けながら、スキルに応じて様々な業務が加わっていきました。
障害者雇用の職場環境について、疑問を持っていた
およそ4年間、特に長期休養をすることなく仕事を続けてきました。これは特に就職当初から続いていた、上司との日誌のやり取りによるコミュニケーションができていたことが大きいです。常に自分の状態を伝えられる安心感と、状況に応じた配慮を受けられたのも、この上司の意向が大きかったと考えています。
しかしながら、一方で職場環境に関して疑問を持つことがありました。今回は、『障害者雇用の職場環境』について、体験をもとに紹介します。
【体験談】障害者雇用の職場環境について感じた疑問
戦力として期待されていない
どんなに障害特性があり、苦手なことをサポートしてもらいたい…という要望があっても、それが「仕事にやりがいがなくてよい」という結論にはなりません。ですから仕事でもって自分も活躍したかったですし、会社の企業利益の向上に貢献したいとも考えていました。
しかし障害者雇用は『戦力という意思を持ってはいけない』という暗黙のルールを感じたことがあったのです。理由は障害者雇用が活躍してしまうと、管理職の方たちが管理しきれなくなるからなのかな…と考えています。
必要とされていない感覚から『自分は企業のペットなのか…』『自分は置物なのか…』と落ち込むことも何度もありました。また、自分のできることを他の人に頼らず行うことで『必要としていない』『頼ろうとしない』と不満を言われることもあったのです。そうして『頼ってくれる存在』として、反対に依存されていると感じ悩んだこともあったのです。
こちらの記事「【体験談】障害者枠での悩み・職場で特性を活かすために取組んだこと」でも紹介していますので、併せてチェックしてみてください。
『障害者の特徴』に障害者雇用全員を当てはめようとする
障害者雇用が浸透し、発達障害や精神障害にあっても情報を収集する方が増えてきたと感じています。しかし、例えば発達障害であれば障害者雇用全員を発達障害の特徴に当てはめて考えようとするケースもありました。「発達障害なのだから、みんなこんなタイプだろう」と考え、いち個人として向き合ってもらえていない感覚がありました。
これは自分だけでなく、他の障害者雇用の方も同じ状況でした。
対等な条件でコミュニケーションができない
障害者雇用として自身の障害を公開していると、その際にどのような人物か情報も共有されました。しかし、周囲の方の情報については、誰も教えてくれませんでした。したがって『周囲は筆者のことを知っているけれど、筆者は周囲のことを知らない』という事態になるのです。
これはサポートを受ける・受けない立場の違いもあるため、致し方ない部分もあるかもしれません。しかし自分だけ知られていることへの「気持ち悪さ」を感じた事があったのも事実です。お互い同じだけの情報を知り、平等な条件でコミュニケーションが取れればもっとスムーズにできたのかな、と感じています。
またよく見られたのは、精神障害や発達障害を持つ社員に対して、小さな子供に話しかけるような口調で話す方です。本人は配慮のつもりで行っているようですが、「馬鹿にされている」と感じ落ち込んだものです。
企業に勤務した体験から考える、良い職場環境とは
戦力として認められており、それを感じられる機会がある
筆者もそうですが、周囲の障害者雇用の方も『人として認められるために必死』な状態でした。「馬鹿にされたくない」「サポートされている分も頑張りたい」という『負い目』と常に向き合う形でいるのです。これによって限界以上の仕事を行おうとしてしまい、障害者雇用の同僚が体調を崩すケースも見てきました。
それも原因は「このまま仕事を行うだけでは、戦力になっていない」という認識があるからです。ですから障害者雇用も他の方と同様、戦力として見てもらいたいと考えていました。また自分でそれを感じる機会があることで、安心感を持って仕事に臨みやすくなるのではないでしょうか。
できることに関しては、頼ってくれる
確かにサポートを受けることはとてもありがたいことです。しかし、得意なことやできることにまで『大丈夫?』と気にされてしまったら、『自分、信頼されていないのかな…』と感じてしまいます。
筆者は当時、周囲に「障害者はかわいそう」「障害者に頼ってはいけない」という先入観が周囲にある感覚がありました。これは頼ることでプレッシャーになってしまうかもしれないという不安から遠慮していることもあるでしょう。しかし、できることには他の方と同じように頼ってくれるからこそ、働く自信につながると考えているのです。
「一般的な特徴」ではなく「個人の特徴」を軸に接する
発達障害や精神障害などの「一般的な特徴」がすべての障害者雇用にあてはまるわけではありません。個人個人の特徴や悩みを受けて考える…ということは確かに大変なことかもいしれません。しかし、そうした一般的なイメージで自分を見られるたびに、「理解してもらえていない…」と落ち込むことがあったのです。
筆者は一般的な障害特徴は補助的な情報であり、あくまでも個人個人と向き合うというスタイルを求めていました。難しいことだとも理解していたので、自分からも周囲の批判覚悟で向き合う姿勢を見せることもあったのです。
機能的なサポートのみを行う
周囲の方の中には「障害者」という存在が『未知の世界』という方もいたのではと感じています。やはり知らないことで、どう接したらよいか分からず「恐怖感」を持たれることもありました。このように過剰な意識が筆者にも伝わり、自分自身も障害を持つことにネガティブな感情を持ったものです。
障害者も一人の人間です。したがって配慮やサポートは『機能的な部分のみ』に重点を置いていくことで、困ることなく自信を持って働けるようになるのではと考えています。
関連記事:【体験談】障害者雇用の職場環境に感じた、働き方改革に期待すること
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
これまでのスタイルでは、障害者雇用を活かすことは難しいのではないでしょうか。確かにサポートをする側にも求めたいものはあります。しかし筆者も含め、サポートを受ける側も『相手に分かりやすい(サポートの)受け取り方』を考えていく必要があるかもしれません。
お互いが向き合いながら歩み寄っていくことで、より早く相互理解に辿り着けるのではと考えています。