発達障害を持つ方は職場定着に苦しみやすい
1)発達障害を持つ方の離職が多い。
近年、障害を持つ方の就職が増えています。一方で、職場に定着できずすぐに離職してしまう方も多いです。中でも発達障害を持つ方の職場定着率が低く、早い方で入社後1年以内に離職してしまうケースもあります。発達障害は個別に特性の現れ方が異なるため、企業側も働く障害を持つ方もどう職場で対応したらよいか手探り状態が続きやすいのです。このような環境で発達障害を持つ方は、企業との双方のニーズに合った職場を見つけることに苦しんでいます。
参考:障害者雇用の現状等 – 厚生労働省
参考:障害者職業総合センター研究部門 発達障害者の職業生活への満足度と職場の実態に関する調査研究(平成27年)
職場の多様な価値観に囲まれることが辛かった。
発達障害の特徴として、想定外の物事や臨機応変な対応が苦手な方がいます。そのため独特の「こだわり」や、「自分ルール」の中で生活しているのです。これは臨機応変な対応が苦手なため、固有のペースやルーティーンで行動することで安心しやすいことなどがあります。
筆者も変化を求められるような多様な価値観の中で仕事をしたことがあります。そのときは頭の中で相関図のようになり混乱していました。筆者にとって「こだわり」は職場で働くための「武器」です。しかしながら、こだわり過ぎてしまうと職場に適応しにくくなり、周囲の方を困らせてしまうこともありました。何よりも自分の体調に悪影響を与えていたのです。
今回は、発達障害を持つ方が長く職場に定着するために、辛いピンチを乗り越える「こだわり」との上手な付き合い方をご紹介します。
【発達障害体験事例】障害者枠で働く際に心がけているセルフチェック
筆者はまず、発達障害からなる「こだわり」がどんな影響を与えているか、チェックをすることから始まります。
チェック1:「こだわり」で、自分自身が苦しくないか。
ピンチになったら、今一度自分のこだわりを見直してみます。
○朝はコーヒーを飲む
○電車に乗るときは前から3両目に乗る
○出勤前に自分の手帳を整理する
など、様々なルーティーンがあると思います。その中で「絶対しなければならない」とプレッシャーになっているものを見つけていきます。上の例で言えば
○「絶対」、朝はコーヒーを飲まなければならない
○「絶対」、電車に乗るときは前から3両目に乗らないといけない
○「絶対」、出勤前は自分の手帳を整理しないといけない
これらのように意識している場合、例えば「朝にコーヒーが飲めなかったとき」にストレスになってしまいます。
発達障害を持つ方にとって、「ルーティーン」は生命線です。しかしながら、「やりたくないけど、決まりだからやらなきゃいけない」と負担になっているのであれば逆効果です。
チェック2:「こだわり」で、業務に支障がないか。
次に、仕事中に周囲の方とうまくかみ合わないことなどを探していきます。
周囲の方からはっきりと言われた場合はもちろん該当に加えていきます。ただし、それは言う立場の方にも負担のかかることなので、はっきりと言われることは少ないでしょう。そのため「相手が何か不満そうだな・・」「この行動をしたときに、いつも周りとずれる・・」など、仕事中の状況をよく思い出してみます。
○必ず金曜日に上司に仕事を報告する。
○必ず契約書のチェックは一日50件チェックする。
○毎朝不要なコピー用紙を裁断して、メモ用紙を作る。
上の例ですと、チームにとってそのこだわりがよく影響するのかどうか、念の為上司や同僚に確認してみるようにしていきました。『もしかすると、これは不必要なこだわりかもしれない。』というこだわりを抽出していきます。職場はチームプレイのため、もし仕事中に「違和感」を感じたら、一度見直すようにしているのです。
【体験談】仕事で辛い時の「ピンチ」脱出法
【こだわりの断捨離】
発達障害を持つ方の特徴「こだわり」は、限度を超えてしまうと自他ともに制約がかかり過ぎて負担になります。この状態で生活を続けていくと、うつ病などを発症するケースも出てくるでしょう。そのようなケースを予防するために、次に発達障害を持つ方の「こだわり」の整理法をご紹介します。
1)今あるこだわりを書き出して、「こだわり一覧」を作る。
次に、今思い出せる「こだわり」を全て書き出してみます。これは書き出すことで客観的にこだわりを見ることができるためです。「生活のこと」「仕事のこと」など、分かりやすく分類すると整理しやすくなります。
例【こだわり一覧】
「生活のこと」
○朝はコーヒーを飲む
○電車に乗るときは前から3両目に乗る
○出勤前に自分の手帳を整理する
「仕事のこと」
○必ず金曜日に上司に仕事を報告する。
○必ず契約書のチェックは一日50件チェックする。
○毎朝不要なコピー用紙を裁断して、メモ用紙を作る。
2)定期的に、あなたの「こだわり」を見直す。
こだわり一覧として挙げられた項目を、定期的に見直していきましょう。
ただしここで注意してほしいのは、「絶対月に一回、こだわりを見直さないといけない」と意識しすぎるのは控えましょう。反対に負担になってしまいます。『こだわらないことにこだわる』では元も子もありません。
自身でこだわりを見直すタイミングを決めるのは難しい・・という場合は職場の上司や家族などと相談して、タイミングを確認するとよいかもしれません。
3)その中で、不要なこだわりをやめてみる。
最後に、書き出し、見直した「こだわり一覧」をよく見ていきます。前述したセルフチェックのように「自身が辛くないか」「チームにとって必要か」このような視点で、いらないこだわりがあれば、自分のこだわりの中からなくしていきます。なくすことに抵抗があるときは、『いったん置いておく』イメージを意識します。
例を挙げますと、
○出勤前に自分の手帳を整理する→負担だから前の日のうちに済まして「なし」にしよう。
→出勤前に自分の手帳を整理する
○必ず金曜日に上司に仕事を報告する。→前日のうちに上司に報告が必要か聞くようにする。「必ず」を「なし」にしよう。
→必ず木曜日に直接上司に確認して、指示があった時のみ翌日上司に仕事を報告する。
○毎朝不要なコピー用紙を裁断して、メモ用紙を作る。→「毎朝」はやめよう。作ってよいときを上司に確認しよう。
→毎朝不要なコピー用紙を裁断して、メモ用紙を作る。
このように定期的に「こだわりの断捨離」を行っていくことで、不調のピンチを脱出することができました。。
障害を持つ方へ。『Salad』が強みを活かす就職のサポートをします
今回は苦しい状態や環境の中での対処法について一例をお伝えしました。しかし、自分だけで解決できない問題が多いのも事実です。『働くスキルに自信がない…』『自分に合う働き方が分からない』など悩んでいませんか?そのようなときはこのサイト『Salad(サラダ)』にその気持ち、教えてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
発達障害を持つ方は、想定外の判断が苦手なため、事前にこだわり=ルールを設けて生活します。そうして不安を解消させて生活しています。しかしながらそのルールで負担を感じるようでしたら、自身や周囲の方を苦しめるものになってしまいます。
発達障害を持つ方の「こだわり」は、うまくコントロールできれば職場でも高い集中力や向上心になります。ですからこだわりと上手に付き合いながら、職場で長く定着できるように心がけていきましょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれの男性。大人になってから発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)と診断されている。公務員として10年間勤務、うつ病を経験し民間企業の障害者枠の事務職として4年間勤務。この時にうつ症状に遭い、めまいや不眠、倦怠感などに襲われた。しかし上記のセルフケアを行い、一日で回復し職場復帰した経験を持つ。
特徴として、「聴覚が過敏」「周囲からの感情の影響を受けやすい」「細かい作業が得意」などがある。その後も担当業務は問題なくこなしていたが、自分の強みを生かすために転職を決意。就労移行支援に週5日、一年間の通所の結果、職種を変え強みを生かせる就職が実現した。