「精神障害や発達障害と診断されたけど、もし障害者手帳をもらったら、どんな使い方があるんだろう?」……そんな疑問をお持ちではありませんか。
精神・発達障害に関する手帳について、詳しく説明していきます。あなたの困りごとが少しでも解消されるように、ぜひ一度お読みくださいね。
※ここに記載した制度の対象や種類、内容、量については、地域や会社、障害の程度、経済状況などによって異なります。実際に利用する場合は、役所や会社などにお問い合わせください。
目次
・障害者手帳を取得するメリット
・障害者手帳を取得するデメリット
・障害者手帳の種類や等級について
・障害者手帳の取得申請の仕方
・障害者手帳と、障害年金の関わり
・まとめ
・障害者手帳のデメリットに対する解決策となるヒントを得たい方へ
障害者手帳を取得するメリットとは?
精神障害や発達障害の方が対象となるのは「精神障害者保健福祉手帳」です(以下、「手帳」と書きます)。
等級は重い順に1・2・3級の3つ。主に次のような優遇やサービスを受けられます。
(1)就労支援、障害者雇用枠の就職
(2)税金の軽減
(3)交通機関の運賃など、各種サービス利用料の割引・無料
(4)その他、行政による対象制度を利用できる
>例
・生活福祉資金貸付制度の対象
・1級と2級の場合は、生活保護の障害者加算
・公共住宅の家賃減額(東京都では1級と2級の場合に特別減額)
・自立支援医療制度と手帳を同時に申請する場合、手帳用の診断書1通でよい
1)就職でチャンスが広がる
事業主は、組織の種類や規模に応じて一定の割合で障害者を雇用しなければなりません(法定雇用率制度)。手帳を持っていれば、等級にかかわらず、この制度の対象となります。
法定雇用率の達成について計算するとき、精神・発達障害者は次のようにカウントします。
●1週間の所定労働時間
・30時間以上の場合:1人
・20時間以上30時間未満の場合:0.5人
精神・発達障害者の場合、手帳の等級によるカウントの違いはありません。
障害者雇用枠について
障害者枠での就職は、特性に応じて合理的な配慮を受けられることが最大のメリット。休日や休憩時間を多めにもらう、静かな所でゆっくり作業できるように環境を整えてもらうなどの例が挙げられます。
就職の前提として、就労移行支援事業所などでサポートを受けられます。仕事で役立つスキルの訓練や面接の練習、就職活動の同行などメリットは多数。利用料も手帳を持っていることで軽減され、無料の場合もあります。
2)税金の減免がある
税金は、所得金額に税率をかけて計算されます。手帳があれば、障害者控除として所得金額から一定の額を引いてもらえますから、納税額は軽減されるのです。
所得税
・2級、3級:27万円を控除
・1級:特別障害者として40万円を控除
※本人が納税者の場合(2018年10月現在)
住民税
・2級、3級:26万円を控除
・1級:特別障害者として30万円を控除
なお、住民税は前年の所得が125万円以下ならば、1・2・3級ともに非課税となります。
※本人が納税者の場合(2018年10月現在)
相続税、贈与税、自動車税
相続税や贈与税なども軽減されます。自動車税は、1級であって、しかも自立支援医療の受給者ならば軽減されます。
手帳のことをオープンにしないで一般的な就職をしている場合で、障害者控除のため、会社を通さずに確定申告をする人もいます。ただし経理に精通した担当者が会社にいると、税金が軽減されたことを後で知られてしまうケースも。注意が必要です。
3)公共料金の割引もある
たくさんの割引制度があるものの、地域や会社によって違いがあり非常に複雑です。ここでは主に東京都の場合を記載します。
水道光熱費などの公共料金
水道料金・下水道料金は減免申請ができます。水道料金は、水道基本料金および基本料金に係る消費税等相当額が減額されます。
下水道料金は、以下です。
障害者本人が使用者本人の場合・・・・・75%以内の減額
障害者が使用者の家族(同居の親族に限る)の場合・・・・50%以内の減額
ただし、東京都水道局の場合は、障害者という括りでは減免申請ができないようです。
お住いの地域により、申請の可否が分かれるようですので、管轄の水道局に問い合わせてみてください。
ガス料金と電気料金については、水道料金と違い民間企業の管轄となるため、障害者手帳による割引きなどは行われていないようです。
医療費の割引・助成制度
・精神通院医療費の公費負担
精神系の疾病で治療を受ける場合、外来への通院や投薬、訪問看護などについて、健康保険における自己負担の一部を公的に支援する制度として自立支援医療があります。
(入院については対象外)
タクシーや、JR新幹線などの交通機関
●都営地下鉄・都バスなどの運賃:無料
●都内を走る民間路線バスの運賃:都内の区間は、基本的に半額。
●都内の一部のタクシー運賃:1割引(※割引のない会社も。東京ハイヤー・タクシー協会 に問い合わせが必要)
●国内の航空運賃:新たに割引開始(詳細は航空各社に問い合わせが必要。最大で半額割引。付添い1名も含む)
(例)日本航空グループ:2018年10月4日の予約分から割引開始
●JR、新幹線につきましては、現段階で精神障害者の割引制度はないようです。
身体・知的のみ「障害者」として割引があります。
スマホ、携帯電話料金、NHK受信料、郵便などの通信料の割引
●携帯電話の利用料
(例)NTT docomoの場合:対象プランの基本使用料が1,700円割引、各種サービス(留守番電話等)の月額使用料が60%割引など
●NHKの受信料
・手帳を持つ人のいる世帯で、世帯員全てが住民税非課税の場合:全額免除
・1級の手帳を持つ人が世帯主で受信契約者の場合:半額免除
ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、東京スカイツリーなどの施設も割引がある?
ディズニーランドについては料金割引ではなく、待ち時間などを別の場所で行うことができるサービスのようです。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンについては、障害を有する方向けの割引チケットがあります。東京スカイツリーについても同様に割引チケットがあります。
テーマパークやアクティビティで、割引があるケースがあります。
●都立の美術館、スポーツなどの公共施設:基本的に無料(付添い1名も含む)
●都立公園内の駐車場:無料
※東京都の場合
4)生活負担を減らせる制度を活用できる
公営住宅へ優先入居も!裁量階層制度とは何か
東京都や、神奈川県、埼玉県などで、特別な住宅枠が設けられているケースがあります。また、裁量階層制度を導入している地域もあります。
裁量階層制度とは、収入基準(世帯の月収額)を一般世帯に比べ緩和し、入居しやすくする制度です。
障害者手帳を取得するデメリットはある?
建前としては「手帳を持つデメリットはない」とも言われています。サービスや優遇を受けたい場面でのみ手帳を提示すればよいし、手帳のことをオープンにする必要もありません。
しかし、ひと昔前よりも改善されているものの、手帳を持っている人に対する偏見のようなものが、まだまだ消えていないようです。何かのはずみに手帳について周囲に知られる可能性はあります。
手続的には、手帳の有効期間は2年間。自分で更新申請をしなければなりません。「更新がめんどう」という声も聞かれます。
1)仕事内容によっては、キャリアパスで不利になるケースがある
形式的には、障害の有無にかかわらず誰もが自分の能力に応じて一般的な就職をすることができます。
しかし「障害者雇用率制度」によって企業は一定の割合で障害者を雇用する必要があります。雇い主としては、手帳を持っている人ならば障害者雇用枠のなかにカウントしたいというのが本音かもしれません。
この『障害者雇用枠』での就職の場合、会社の組織風土によっては、任せられる仕事に限界が設定されており、責任ある仕事に就くチャンスが限定される場合があります。
障害者手帳の取得は、事業部長や役員など、責任のある仕事にトライしたい方にとっては、不利となる場合があります。
また、ご自身の価値観により、手帳を持っていることをオープンにしないで一般的な就職をしている人もいます。雇い主は、本人の意思に反してプライバシーについて聞き出すことはできません。手帳によって税金を減免してもらう場合、会社を通さずに自分で確定申告する人もいます。
いっぽう、健康状態に関連して、面接などで事実とは異なる回答をした場合は、後でトラブルになる可能性があります。
デリケートな問題ですから、一般的な就職をするか障害者枠の就職をするかどうかを決めるときは、支援機関に相談することをお勧めします。
2)結婚に影響があるかも
お相手の家族に障害に対する偏見がある場合、生まれてくる子供に影響があるのでは?と考える方々もいるようです。根本的な解決に近づけるには、お相手だけでなく、その家族に対しても障害の特性理解を得ていく必要があるようです。
3)ローンや生命保険への影響
住宅ローンを利用するときは、通常「団体信用生命保険(借りた人が死亡した場合などに保険金をローン返済にあてる仕組み)」に入る必要があります。
ところが障害のために、この保険に加入できないケースが多く、結果としてローンを組むことは難しいようです。もっとも団体信用生命保険への加入が必須ではないもの(フラット35)もありますので、不可能とも言えません。金融機関にお問い合わせください。
通常の生命保険への加入も、同様に難しいかもしれません。障害のことを隠して加入した場合、死亡時に「告知義務違反」となって保険金が支払われない可能性もあります。
ただし、持病や障害があっても入れる新しいタイプの保険は増えています(保険料は通常より割高)。
障害者手帳の種類や等級とは?
障害者手帳の種類は次の三つ。どれも主に都道府県知事から交付されます。
等級には、障害の程度を表す意味があります。1級(度)が最も重度で、数字が大きくなるほど軽度になります。
精神障害者手帳の等級について
統合失調症その他の精神疾患のほか、知的障害を伴わない発達障害の人などが対象になります。1級から3級までの等級があります。
どの手帳も重い等級になるほど、受けられる優遇やサービスの種類・範囲・量などが多くなります。
※種類・範囲・量などは地域によって異なります。
身体障害者手帳の等級について
手足・体幹の障害や、視覚・聴覚の障害、心臓その他の内部障害の人などが対象になります。障害の種類ごとに、1級から6級(7級)までの等級があります(7級は障害が二つ以上のとき対象になります)。
療育手帳
児童相談所等で知的障害と判定された人が対象になります。障害の程度として、重度(A)と、それ以外(B)の二つがあります。ただし地域によって異なり、例えば東京はAとBを二つずつに分けて1度から4度までがあります。
申請はどこでするの?
障害者手帳の申請窓口
提出先や相談先は、本人の住民票が登録されている市区町村の障害福祉担当窓口(福祉事務所や福祉担当課)です。
精神障害者手帳の申請について
・申請書(障害者福祉担当窓口で受け取り)
・診断書(医療機関で受け取り)※初診から6ヶ月経過後
・顔写真(履歴書に使われるような小型のサイズ)
・マイナンバーがわかるもの(住民票や個人番号カードなどで確認)
これらを準備する必要があります。申請後、審査を経て交付されます。期間はケースバイケースで、東京の場合は2~3か月で交付される人が多いようです。2年ごとに更新が必要です。
また、診断書は精神疾患の初診から6ヶ月以上経過している必要がありますので、ご自身の障害や疾病が手帳の交付条件に当てはまるかどうか、住んでいる市区町村の障害福祉担当窓口に問い合わせてみましょう。
身体障害者手帳の申請について
市区町村の障害福祉担当窓口に申請します。
医師による診断書、申請書、写真、マイナンバーカード、印鑑などが必要です。東京の場合、心身障害者福祉センターの障害認定を経て、通常は1か月ほどで交付されます。有効期限はありません。
障害者手帳と、障害年金の関わりとは
障害者手帳制度は主に都道府県が扱うのに対して、障害年金制度を運営するのは日本年金機構です。手帳の場合とは異なって、年金に関する相談・申請の窓口は年金事務所です(管轄する地域が決められています)。
障害者手帳を持って障害年金の受給をしている人もいますし、手帳無しで年金を受給している人もいます。さらに、手帳を持っていても、受給条件を満たさないため年金の無い人もいます。制度が別ですから、手帳の等級と年金の等級は一致しない場合があります。
間接的に関わる場合はあります。例えば精神障害の手帳申請時に「年金証書の写し」を提出すれば、診断書は必要ありません。
まとめ
障害者手帳を持つことのメリットとデメリットは、ご自身の障害の程度や特性、また「行いたいこと」や「やりたいこと」などの価値観と照らし合わせ、専門医療機関や、就労移行支援事業所などの支援機関と相談し、きちんと把握し活用していくことが重要です。
手帳を取得することで、メリットとなることも多いですが、デメリットも存在はします。ただ、デメリットとなる部分を把握し工夫することで、メリットを活かしデメリットを軽減することができます。
その方法を模索するためにも、まずはご自身の障害について詳しい方々(医療機関や支援機関)に相談してみましょう。
障害者手帳のデメリットに対する解決策となるヒントを得たい方へ
デメリットとなる要素の不安解消に向けて
就職、結婚、ローンなど、、デメリットを解消するための手立てはあるのでしょうか。それぞれのヒントを動画で紹介しています。
【障害者手帳のデメリット解消のヒントを得るための紹介動画】
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