障害者でも、作家になって活躍したい!
本を出版して、作家になりたい
障害を持つ方の中にも「作家になりたい」を考えている方もいるかもしれません。小説や絵本、または自身の障害体験を書いたノンフィクションなど、様々な表現がありますよね。
しかし、同時に「どうやって本を売ればよいのか知らない」「作家になるチャンスがない」などの不安から、状況を確認する前に諦めていることはありませんか。しかし諦めるのは、作家になるための方法や流れを知ったうえで判断しても遅くはありません。今回は
・出版の形態には、どのような種類があるのか
・出版するまでの流れはどのようなものか
・よく聞く「印税」とはどんなもので、どういう仕組みなのか
これらについて、実際に出版経験のある筆者の体験も交えながらお伝えします。
出版形態(契約形態)の種類
ここでは主な出版の種類について紹介していきます。主に「出版費用の負担をするのは誰か」により分類されているものです。
①商業出版(委託取り次ぎ販売)
商業出版は、出版社が編集、校正、印刷、流通のコストを負担する契約形態です。最もメジャーである方法で、書店に並ぶ本のほとんどはこの形態によって出版されています。
【出版チャンスを得る方法】
・出版社からオファーをもらう
・作家からの応募を検討し、契約を結ぶ
【メリット】
・出版社からのバックアップがあり、注目してもらえる可能性が高まる
・出版費用が掛からない
【デメリット】
・出版社に認められる必要がある
・出版社の意向や企画に合わせ、自分のイメージと異なる調整をされる可能性もある
出版するためのハードルは高いですが、出版が決まれば作家として活躍できる可能性が高まります。
②自費出版
自費出版は、出版にかかるコストをこちら(著者)で負担する形態です。
【出版チャンスを得る方法】
・出版費用を用意して、出版社に原稿を提案する
※負担する出版費用は初版の印刷冊数にもよるが、概ね150万~300万円程度
【メリット】
・費用さえあれば、ほとんどのケースで出版できる
【デメリット】
・出版するのに多額の費用を負担する必要がある
・原則出版社のバックアップはないため、売れる見込みは低い
自費出版は、「売れる」ことより「出版経験を得たい」という方向けの方法です。自費出版を続けて作家になるということは難しいかもしれません。
③共同出版、協力出版
共同出版(協力出版)は、自費出版と商業出版の間に位置する形態です。特徴は、著者側も出版社側も費用負担があり、どちらが多めに負担するかはさまざまなケースがあります。ちなみに筆者が経験したのも、この共同出版です。
【出版チャンスを得る方法】
・出版費用を用意して、出版社に原稿を提案する
※負担する出版費用は初版の印刷冊数にもよるが、概ね100万~150万円程度
筆者は原稿を持って直接出版社に行きましたが、本来は事前に連絡してお約束するのが好ましいでしょう。
【メリット】
・費用さえあれば、ほとんどのケースで出版できる
・雑誌掲載など、別途費用を負担することでバックアップを受けられるチャンスもある
【デメリット】
・自費出版よりは低額だが、出版するのに多額の費用を負担する必要がある
・商業出版と比較して、売れる見込みは低い
筆者の経験ですが、出版冊数300部で概ね100万円ほどかかりました(当時仕事でためていた貯金を遣いました)。
作家になるまでの道のりは?
さて、プロの作家としてデビューできる主な道のりは
①出版社が公募している公募新人賞に応募して、受賞する
②ウェブなどに小説を公開し、出版社に声をかけてもらう
この2種類になります。それでは、項目ごとにポイントを見ていきましょう。
公募新人賞にトライするときのポイント
公募新人賞に応募して作家を目指したい、と考えている場合は以下のポイントを覚えておきましょう。
・募集要項やジャンルなどを調査してから応募先を決める(ミステリーならミステリー部門、など)
・受賞すればデビューに近づける。また、受賞できなくても「拾い上げ」と言って別途出版社から声をかけられるというケースもある。
これらが主なポイントです。事前にリサーチし、自分の良さを活かせる公募にトライすることがデビューへの近道と言えるでしょう。参考リンクに公募のサイトをいくつか紹介します。応募前にどのようなものなのか、ぜひチェックしてみてください。
参考:電撃小説大賞 応募要項
参考:『このミステリーがすごい!』大賞 » 募集要項
参考:第42回(2020年) 講談社絵本新人賞 募集要項 | 講談社絵本通信
ウェブ公開の際のポイント
ウェブに上げる方法は、現在は様々な形態があります。個人ブログとして公開するのも良し、小説投稿サイトに投稿するのも方法の一つです。どちらにしても、閲覧する方を増やし注目されるための工夫(SNSなどで紹介するなど)が必要になるでしょう。
編集者の中でも、ウェブ小説からの発掘を精力的に行っているケースがあります。「ブログ本」や「ウェブ小説から映画になった」などよく話題になりますよね。それだけ、インターネットでの媒体も注目されているのかもしれません。
下記の参考リンクは、主な小説投稿サイトを紹介しているページになります。自分に合うサイトを選んで、トライしてみるのも良いかもしれません。
参考:セルフ出版 | Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング
参考:小説投稿サイト・サービス一覧【2019年版】[52件掲載][掲載募集中] | TEXT FIELD
作家としてトライする方法として、主にこの2種類があります。
契約から出版(販売される)までの流れ
契約が成立し、晴れて書店や電子書籍のサイトに「販売する本」として並ぶまでの流れを紹介します。
【本出版までの具体的な流れ】
①編集者と打ち合わせ(企画発案・立案)
②出版契約
③原稿執筆(事前に持ち込みをしている場合は最初になる)
④原稿整理・編集
⑤入稿・校正・校了
⑥製本・流通・販売
筆者の場合(共同出版、事前に原稿はできている)は、出版社に持ち込んでから書店に並ぶまで、概ね半年程度かかりました。
そもそもよく聞く『印税』とは?
印税とは
印税とは、出版社が著者に払う著作権料のことです。原則、原稿の『著作権』は著者に、『出版権』は出版社にあります。そのため出版社が本を出版する際には、著作権者からの承諾を得て出版しているのです。この使用への対価が「印税」となります。ちなみに「税」とありますが、国へ納める税金とは関係がありません。
印税が発生する方法は
原則となる印税の計算方法は、以下の通りです。
【印税の計算方法】
本の販売価格×冊数×印税率=印税額
単純計算であれば、1,000円の本を300部販売、印税率が5パーセントの場合は15,000円の印税収入がある計算です。しかし、印税の仕組みは出版形態によっても異なってきます。筆者の場合は初版を販売した時点では印税はなく、重版となった際に応じて印税が支払われる契約でした。そのため契約の際に印税について確認しておくと良いかもしれません。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
あなたの夢が少し具体的に見えたでしょうか。確かに作家としてデビューし生活するというのは容易ではないでしょう。しかし、トライする前から諦めてしまうのは勿体ないことです。
また、作家として成功できなくても文章力を活かしてライティングの仕事にも活かせる可能性もあるでしょう。そう考えれば、スキルを活かせる可能性は充分にあるのではないでしょうか。
今回の記事をきっかけに、作家への一歩を踏み出せたのなら幸いです。
【筆者紹介】
Salad編集部員。ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受けている。過去に詩集の出版経験がある。この詩集は販売後出版社が倒産してしまったため、現在書籍は販売されていない。