発達障害の人がペットに関わるには? 飼う以外の方法も
発達障害を持つ人がペットを飼うには?
ペットは終生飼育が原則です。
ペットは長命で、犬や猫なら20年程度生きることも多くなってきています。
費用(医療費は健康でも毎年、予防接種や予防薬の費用は掛かる)もかかります。
特に老年期は病気で月に数万円~の医療費がかかることも珍しくありません。
「動物の愛護及び管理に関する法律」は改正されて2013年に施行され、動物の終生飼養が動物の所有者の義務として明記されました。
そのため都道府県等(保健所)は終生飼養に反する理由により引取り(動物取扱業者からの引取り、繰り返しての引取り、老齢や病気を理由とした引取り等)を拒否できるようになりました。
その結果、「自分の都合で飼えなくなった動物を保健所に持ち込んだものの引取りを断られ、保護団体に直接相談する飼い主が増えている」と、筆者は犬の保護団体の代表から聞いたことがあります。
終生飼育ができないのなら安易に飼い始めるべきではないでしょう。
発達障害をもつ人がペットの世話をするということ
ペットの世話をするのが得意な人もいる
すでにペットと暮らしていたり、家族と住んでいたりしてペットの世話をしている人もいると思います。
食事・投薬・散歩などはルーチンワークなので、決まったスケジュールを好むASDの人には苦にならずできる場合もあるのではないでしょうか。
排せつ物の処理はしつけができていて介護が必要な状態でなければそれほど難しくありません。
シャンプーや爪切りなどが苦手な場合はそれだけプロに任せる人も多く、動物病院やペットサロンで対応してくれます。
発達障害を持つ人にもペットセラピーの効果があるのか?
ペットセラピー(アニマルセラピー)の効果とは
日本獣医師会の「AAA(動物介在活動)/AAT(動物介在療法)と獣医師の役割」によると、アニマルセラピー(ペットセラピー)の効果として身体的・心理的・社会的、また発達面での効果が見込めるそうです。
参考:AAA(動物介在活動)/AAT(動物介在療法)と獣医師の役割|日本獣医師会
参考:「ペットを飼うと幸せになる」は事実だった | ニューズウィーク日本版 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
発達障害の人がボランティア活動を通してペット動物に関わるには?
家でペットを飼えない場合、ボランティア活動を通してペットに関わることもできる
ペットと一緒に過ごすことに良い効果があるとわかっても家庭でペットを飼うことができない場合、ボランティア活動を通してペット動物に関わる方法もあります。
ペット動物の保護団体では団体のホームページで活動に参加するメンバーを募集しているところが多いので、興味のある団体のホームページをチェックしてみましょう。
ボランティア活動というとハードルが高く自分には難しそう……。と思われるかもしれませんが、さまざまな参加の方法があります。
例えば、
- ・里親会、チャリティーフリマなどのイベントのスタッフ(手伝い)
- ・シェルターの動物の世話(清掃・給餌・散歩など)
- ・里親が決まるまで自宅で動物を預かって世話する「一時預かりボランティア」
- ・動物を病院やメンバー宅間などに自動車で送り届ける「搬送ボランティア」
- ・里親募集ホームページの更新・管理
など、いろいろな種類のボランティアがあります。
自分の状況と照らし合わせてみれば、参加できそうなものが見つけられるかもしれません。
活動を通してペットに関わることができますので、調べてみてはいかがでしょうか。
参考:東京都に登録された譲渡対象団体一覧 | 東京都動物愛護相談センター ワンニャンとうきょう
参考:関連リンク(譲渡認定ボランティア団体など) – 埼玉県
発達障害の人が仕事を通してペットに関わるには?
仕事を通してペットに関わる方法もある
また、仕事を通してペット動物にかかわるという方法もあります。
動物に関わる仕事で主なものとしては
- ・動物看護師
- ・トリマー
- ・犬の訓練士
- ・ペットシッター
- ・ペット関連の商品企画や商品デザイン
- ・ペット用品店のスタッフ
などがあります。
上記の職種での障害者雇用(障害者枠)の求人やトリマー専門学校の講座を受講することのできる就労移行支援事業所などもあります。
参考:【13歳のハローワーク公式サイト】職業調べ「好きで調べる:自然と科学に関係する職業:動物[爬虫類・魚と鳥を含む]が好き」
参考:【ペット 障害者】の求人 -【東京都】| Indeed (インディード)
動物と向き合うときに気を付けること
動物は会話などのわかりやすいコミュニケーションがとれない
動物に興味はあっても、実際に一緒に過ごしたり触れ合ったりしたことのない人がまず心に留めておいてほしいことの一つは、動物とは人間相手以上にコミュニケーションが困難な場合があるということです。
基本的に言葉は通じません。言う事を聞いてくれなかったり、思うように行動してくれないこともしょっちゅうです。もし体調不良があっても、自分から人間に伝えることもできませんので、日ごろから様子をよく観察することが重要です。
筆者の知人は飼い猫が脚を骨折しているのにもしばらく気づけませんでした。子猫のころからとても大切にしてかわいがっていたのですが……。
また、人間がされてうれしいことが動物にとってもうれしいとはかぎらないので、擬人化して人のように扱うのも動物にとって良くありません。
まずは動物について、少しずつでも知ることから始めましょう。
もっと深く動物とかかわることを考えている人へ
もっと動物とうまくつきあえるようになるには
それでは、より動物とうまくつきあっていくためにはどうすればよいのでしょうか?
人間社会の中でペット動物に生活してもらう場合、動物の本能のままにふるまわせることは必ずしも動物自身の幸せにはつながりません。特に人口の密集している都市部では、周囲の人間やほかのペットとも衝突せず、迷惑をかけないように生活できないと飼い主も動物自身も困ることになります。
最低限のルールを守って生活できるように教えることも、人間(飼い主)側の責任です。
トイレのしつけや他人やほかの動物に攻撃的にならないようにするなど、基本的なことを伝える方法は、動物とのコミュニケーションにも役立ちます。
こちらに筆者がドッグトレーナーから教えてもらったおすすめの本を何冊かご紹介します。
参考:ザ・カルチャークラッシュ ジーン・ドナルドソン著|獣医師広報板 お薦め本
参考:うまくやるための強化の原理 -飼いネコから配偶者まで- カレン・プライア(訳:河嶋孝/杉山尚子)| 「この一冊」 – 図書の紹介- 200901号 | 日本獣医生命科学大学
参考:ドッグ・トレーナーに必要な「犬に信頼される」テクニック | 株式会社誠文堂新光社
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まとめ
事情があってペットと一緒に暮らすことができなくても、ペット動物と関わる方法はいろいろあります。今回紹介した方法はほんの一部です。
筆者は8年前に犬の里親になり、以来一緒に暮らしていますが、その時の犬を保護していてくださっていた方の言葉がとても印象に残っています。
「飼い主の精神状態がペットにとって一番重要」ということです。
自分が苦しい状況で無理をしていたり、精神的に余裕がなかったりすると、動物にとっても非常に良くないのだと身が引き締まる思いでした。
もし自分自身がある程度精神的に落ち着いている状況で、モチベーションが上がったり、癒しになってストレスが軽減されるなら、好きなものごとに積極的に関わってみるのも良いのではないでしょうか。