大事な人をカサンドラ症候群にしたくない
パートナーとのトラブルを防ぎたい
カサンドラ症候群はASDやASD傾向のある人の周囲の人が、コミュニケーションが困難で、抑うつや不安などの症状を起こすことをいいます。
ASDの当事者でカサンドラ症候群を知っている人なら、自分のせいで周囲の家族や大事な人をカサンドラ症候にしてしまいたくない、と考えたことのある人もいるでしょう。
カサンドラ症候群になると、抑うつ状態、睡眠障害、体重の増減、自己評価の低下などの症状が現れます。
ASDの人は自分の何が悪いのかわからないまま、問題が表面化してきたときには相手はもう耐えられない状態になっていて取り返しがつかず、コミュニケーションが改善せず相手の不安や不満が蓄積し、耐えられなくなって離婚(別れ)につながるケースもあります。
そのような事態を防ぐために、ASD当事者ができることのヒントを紹介します。
参考:カサンドラ症候群 – 大阪メンタルクリニック 梅田院
参考:カサンドラ症候群に多い睡眠障害の特徴 | 阪野クリニック
パートナーのカサンドラ症候群防止のためにできること
こまめにコミュニケーションをとる
カサンドラ症候群のパートナーはコミュニケーション不足を不満に感じている場合があります。
そのような場合「いちいち言わなくてもわかるだろう」と決めつけず、日々のコミュニケーションの手数を増やすと相手が安心できます。
今日の予定(仕事の終業の予定や帰宅の時間)、家事のお礼(ゴミ出しや買い物など)などをこまめに連絡する習慣を身につけましょう。
話をする機会を設ける
パートナーとゆっくりと向かい合って話し合いができる機会を設けるようにしましょう。
相手が話しやすい状況で、相手の不安や不満に思っていること、変えてほしいことなどの話を聞くように心がけましょう。
相手が話す機会がなくて悩むことがないように、できれば定期的に時間をとってセッティングして、相手が話せる機会を作りましょう。
ASDの本人には目的や意味のない行動と感じられるかもしれませんが、話を聞いて理解と共感を示す機会を作ることでパートナーは安心できます。
参考:カサンドラ症候群(前編)―カサンドラは病気ではなく、関係性のズレ― – 株式会社Kaien – 発達障害の方のための就職応援企業
パートナーが相談できる体制を整える
パートナーが理解ある第三者に相談できる体制を作っておくと、不満を一人で抱え込むのを防止することができます。
パートナーがうつ状態や不眠などの精神的な症状で医療機関に通っている場合は、まずは主治医やカウンセラーに相談してみましょう。
地域の発達障害者支援センター、保健センターや市区町村の家族相談などで、発達障害者の家族向けの相談を行うこともできます。
他にも、カサンドラ症候群の自助グループや当事者会に参加し、悩みを他の人と話し合ったり相談したりできる場を作るのもストレスを防ぎ、問題を解決するのに役立ちます。
参考:発達障害のパートナーに苦しむ「カサンドラ症候群」とは? 理解されにくい悩み、自助グループで共有 | 東京すくすく | 子育て世代がつながる ― 東京新聞
参考:アスペルガー・アラウンド / セルフヘルプという力 / 東京ボランティア・市民活動センター
DV・モラハラ・カサンドラ症候群について知る
何が相手を傷つけるのか、やっていはいけないことを具体的に知ることで、トラブルを事前に防げます。
DV、モラハラ(モラルハラスメント)、カサンドラ症候群について調べることで、相手の傷つく言動や行為を知り、自分を省みることでやってはいけないことを知ることができます。
自分は正しい、間違っていないと思い込まず、どのようなことが相手を傷つけるのかを知りましょう。
当事者の描いた書籍やコミック、ドラマなどでカサンドラ症候群の人の悩み事や辛いことなどをわかりやすく知ることができるでしょう。
参考:パートナーや恋人からの暴力に悩んでいませんか。 一人で悩まずお近くの相談窓口に相談を。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
参考:モラルハラスメント:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
職場でのカサンドラ症候群防止のためにできること
報告・連絡・相談を増やす
仕事の場面でも「言わなくてもわかるだろう」と思い込まずにこまめに報連相(報告・相談・連絡)を行うのは大事なことです。
仕事の予定や進捗(就業前、休憩時、終業後など)を定期的に報告したり、判断に迷った時に上司や先輩に相談したり、休みを取りたいなど特別なことがあるときにできるだけ早く連絡したり、という日々の報連相を確実にしていきましょう。
「お忙しいところ恐れ入ります」「お時間を割いていただき申し訳ありません」などの言葉を添えれば、「忙しいのにいちいち報告しなくてよい」と怒られるようなことは少ないでしょう。
参考:夫が、部下がもしかして? 大人の発達障害を知る|NIKKEI STYLE
参考:職場での困りごと全般:困りごとのトリセツ(取扱説明書)|発達障害プロジェクト
障害についてのセルフアドボカシーを行う
障害をオープンにして働く場合は特に、仕事上、理解や支援を求めるために自分の障害特性や苦手なことを知ってもらえるよう、伝えることが重要になります。
障害者の雇用の促進等に関する法律では、雇用の分野で障害者に対する合理的配慮の提供が義務付けられています。
たとえば身体障害で移動が困難な人や車いすを利用している人が勤務場所の建物に手すりやスロープなどの設置を求めることや、読み書き障害のため、手書きでメモを取るのが困難なために機器の利用を許可してもらうことも合理的配慮です。
前者のスロープなどは周囲が気づいてくれて言わなくても配慮される場合が多いですが、後者の機器の仕様の許可をとるなどの場合には、本人から障害特性について説明し、理解や配慮をお願いすることが必要になるでしょう。
このように、合理的配慮を行ってもらうために権利を主張することがセルフアドボカシーです。
ASDと診断されていなくても傾向のある人も職場での配慮で仕事がスムーズになるケースもあります。
診断がなくても、自分がASDの傾向がありそのせいで仕事に支障をきたしていたり、コミュニケーションの問題がある場合は相談して配慮をお願いしてみるのも選択肢の一つでしょう。
関連記事:【障害者雇用】精神障害・発達障害を持つ方への「合理的配慮」とは?
参照:雇用の分野で障害者に対する差別が禁止され、合理的な配慮の提供が義務となりました|厚生労働省
参考:障害のある人と働く職場での配慮【障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン】/千葉県
相談できる支援者の力を借りる
自分だけでうまく必要な配慮について伝えられるかどうか、コミュニケーションに不安がある人は支援者(就労支援のスタッフ、会社の保健士や上司など)に協力をお願いしてみましょう。
必ずしも求めた配慮が求めた形で実現するとは限りませんが、問題を解決して仕事をスムーズに行うための提案なら無駄にはならないでしょう。
参考:「発達障害の上司」から心を守るためにできること | 健康 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース
参考:発達障害者の就労支援 |厚生労働省
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まとめ
コミュニケーションはどちらか片方だけの問題ではない
コミュニケーションはどちらか片方だけではなく、双方向の問題です。
どんな立場でも相手の言い方が悪い、相手が間違っていて自分が正しいと思い込まずに、情報がちゃんと相手に伝わっているか、どうすれば伝わるのかを双方向で努力する必要があります。
相手がASDやASD傾向のある人で、コミュニケーションを受け取るのが苦手な場合はそれを考慮してわかりやすく伝える必要があります。
相手も自分がコミュニケーションの問題を起こしやすい自覚があり、悩んでいるかもしれません。
逆に自分がコミュニケーションが苦手で、うまく情報を受け取ることができない自覚がある人は注意して自分からわからないことを質問したり、コミュニケーションの機会を増やすなど理解する努力が必要になります。
「相手が悪い」「人間性や性格の問題」と決めつけず、コミュニケーションの方法を改善してお互いストレスなく生活できるようにするためと思えば、相手を憎まずに問題の解決・状況の改善が図れると思います。
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