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「発達障害は人の気持ちがわからない」と言われたら?

障害に対する差別と言葉の暴力

言葉の暴力

差別や偏見に対する意識のギャップがある

2017年に障害当事者を対象とした調査では、日常生活において「差別や偏見を受けた」と感じた場面があるかどうかに対して、「頻繁にある・時々ある」と回答した人が59%に上りました。

「まったくない・差別や偏見を受けたと感じた経験がない」と回答した人は合わせてわずか12%でした。

一方、対象を障害者に限定しないアンケートで、精神障害・発達障害・知的障害のある人に対して、自分の中にある心の壁を意識した経験があると回答した人は62.2%で、約6割となりました。

調査の他の項目を参照すると、この「自分の中にある心の壁を意識した経験がある」とは具体的には、例えば(障害のある人に対して)下記のように感じた経験を指しています。

・会話など通常のコミュニケーションが取りづらいだろうと思った

・関わらないようにした/関わりたくないと思ったことがある

・何らかの危害を加えられたり、自分に悪影響があるのではないかと不安に思ったことがある

つまり、この「心の壁を意識した経験がある人」は、自分が差別的な考えを持ったことを意識した経験のある人と説明できます。

障害当事者で差別を受けていない・受けた経験はないと感じる人はわずか1割。

自分が差別的な考えを持ったことがあると意識したことのある人は6割 。

立場が異なると、差別に対する認識に大きな差があるのではないかと想像させる調査結果です。

参考:障がい者に対する差別・偏見に関する調査|レポート|障がい者総合研究所
参考:「ダイバーシティ&インクルージョン」に関する意識調査|日本財団(PDF版)

職場でも顕著な意識の差がある

障害当事者と障害のない人で、差別に対する意識に大きな差があることが分かりました。

場所を職場に限定すると、状況はどうなるでしょうか?

最初に述べた、障害当事者を対象とした調査では、障害当事者が差別や偏見を受けたと感じた場所についての設問で最も多い回答となったのが「職場」で、全体に占める割合は56%でした。

また、障害者職業総合センターにより、職場での障害者への配慮に関して、配慮が必要な障害者と同じ職場で働いていて、障害者の採用に関わる立場にない人を対象とした調査が行われています(2022年)。

この調査では、会社等から障害者が受けている配慮について「適切な配慮が提供されている」と回答した割合は8割以上で、多くの同僚従業員が障害者が受けている配慮は適切であると認識していることを示す結果になりました。

障害当事者が差別を受けた場所として挙げた場所のトップが職場で約5割となる一方、障害者と同じ職場で働いている人の8割以上が「障害者には適切な配慮が提供されている」と認識しているという、やはりアンバランスな結果が示されている状況です。

参考:障害等により配慮が必要な従業員の上司・同僚の意識に関する研究|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター(PDF版)

職場で起こる差別とハラスメントのリスク

職場における差別には、差別を受けた人の人権を侵害する・法律を侵すリスク以外だけでなく、下記のようなリスクがあると考えられています。

職場全体のパフォーマンスが低下し、離職率が高まる

・対象者にストレスを与え、精神的な不調の原因となるリスクがある

・対象者に身体的な症状・疾患を引き起こす可能性がある。

差別や偏見に対して、障害当事者と周囲の人で認識に大きなギャップがある現状で、差別や偏見、それが原因となるハラスメントのリスクを避けるにはどうすればよいのでしょうか?

参考:マイクロアグレッション(職場での自覚なき差別)の影響と対処法 | Indeed (インディード)
参考:職場で差別を受けると高血圧になりやすい?|医師向け医療ニュースはケアネット

なぜ「人の気持ちがわからない」と言われるのか?

差別や偏見に対して、障害当事者と周囲の人で認識に大きなギャップがある状況では、互いのコミュニケーション上で摩擦が生まれ、誰かが傷つくという場面も出てきます。

発達障害があることを周囲の人に知られている人が、他の誰かに

「(あなたは)発達障害があるから人の気持ちがわからない

発達障害は人の気持ちがわからない(だから、あなたも人の気持ちがわからない)」

などと言われるとき、その人も傷ついたと感じたり、「それを言うあなたの方こそ、それを聞いて傷つく私の気持ちがわからない、思いやりのない発言をしているのではないか」と矛盾と不公平感を感じます

こうしたギャップから生まれる「コミュニケーションの摩擦」「言葉の暴力」にどのように対応していくことができるのか、発達障害の特性や状況を含めて解説していきます。

言葉の暴力から自分を守るためにできる3つのこと

自衛する人

差別的なことを言われ傷ついたのに、言った相手は自分が差別的で失礼なことを言ったという意識がないときに、言われた方は何ができるでしょうか?

言い返せずに悔しい思いをしたり、言い返さないせいで何度も同じこと言われ続け、長い間辛い思いをしたりしたという方も多いのではないでしょうか。

具体的な対処法や、周囲の人への伝え方のヒントを3つご紹介します。

[1] 記録を残す

言われた言葉や状況を記録することで、状況を客観的に把握したり、状況を人に共有して相談することができます。

また、言われた言葉をそのまま返してみたり、自分がどう感じたのか率直に伝えたりすることで、相手の意図を確認することも一つの方法です。

それはどういう意味ですか?

つまりそれはどういうことですか?

「『人の気持ちがわからない』と言われるのは、私はとても傷つきます

私が発達障害のために人の気持ちがわかりにくい場合があることは知っていますが、自分でも気にしていて、人を傷つけないように配慮する努力をしているので、そのように言われると否定された気持ちになってつらいです。

あなたはなぜ、どういう意味で私が『人の気持ちがわからない』とおっしゃっているのですか?」

ただし、相手との関係や伝え方によっては「言い返してきて生意気、これだからこの人は…」と相手を逆上させてしまう場合もあります。

公の場で、人間関係が良好な他の人や味方になって擁護してくれそうな人がいる場面以外では、相手に直接言い返すのは避けた方が良いかもしれません。

相手と2人きりのときには、その場で言い返すのではなく、記録を残し、後でそれを信頼できる人に見せて意見を求めるほうが、職場(集団)内での自分の立場を守るために安全性が高いでしょう。

[2] 信頼できる人に相談する

家族や友人・主治医などの信頼できる人に相談することで心の負担を軽減することができます。

前項で述べたように、相手の言葉で傷ついたと思った時は、とりあえず記録(メモ、録音など)を残します

記録する行為自体に集中すれば、一時的に気持ちを切り替えることができるので、気を紛らわすための手段としても有効です。

客観的に状況を共有することができ、つらさをわかってもらったり、共感や配慮の言葉をかけてもらったりすることで、一人で悩むよりも心の負担が軽くなる可能性があります。

悪質な言葉の暴力がとまらないときも、記録があれば、支援者や相談機関に提出するハラスメントの証拠にもなり、身を守ることにつながります。

[3] コミュニティに参加する

同じような経験をした人たちとつながり、共感を得ることで心の負担が軽くなる可能性があります。

インターネット上の匿名のコミュニティなどに参加することには、

「実際の距離に関係なく、どこでも誰でも参加できる(手軽である)」

参加のハードルが低い(気軽に参加できる)」

「話す相手との接点がないため、あまり相手との関係性に気を遣うことなく参加できる

というメリットがあります。

ただし、匿名性を悪用して悪意のある悪口を言われたり、ネット上でのいやがらせをうけたりするリスクもあるので、個人が特定できる情報を守って慎重に利用する必要があります。

参考:[離婚・慰謝料コラム]モラハラの証拠として日記を書く際のポイントと注意点|離婚 弁護士 多拠点対応|弁護士法人グレイスへお任せください
参考:モラハラ夫だからこそ作れた「あまりにも緻密な」大ウソの虐待記録。「それ、全部私がやられたことなのに」(OTONA SALONE) – Yahoo!ニュース

心の傷を治療し、回復するためにできる5つのこと

読書する人

差別的な言葉に傷ついた時、他の人に相談して共感してもらったり、気づかう言葉をかけもらったりして心の負担が軽くなったとしても、起きたことはなかったことにはなりません

忘れられず、何度も思い出してつらく感じる人も多いと思います。

そんな時に実践できる、具体的な行動のヒントを5つご紹介します。

[1] 言葉の暴力をふるう人から離れる

人間関係のトラブルにおいては、たとえ相手に非があったとしても、相手のふるまいや言動を変えさせることは難しい場合もあります。

たとえば職場で絶対的な発言力を持つ上司が障害に偏見を持っている場合などは、相手に態度を改めさせるのは難しく、現実的ではないかもしれません

その場合は自分からアクションを起こす方が、すみやかにトラブルから離れて身を守ることにつながります

差別的な言葉を投げつけてくる相手とは距離をとり、コミュニケーションの機会を減らす・なくすことで、言葉の暴力に苦しむ頻度を減らすことができます。

職場なら異動を希望したり、転職したりして環境を変えることも選択肢の一つになります。

[2] 理解者と協力してより良い人間関係を作る

良好な人間関係を維持している、自分にとって理解者となる人がいる場合は、そのような人と関わるようにしましょう。

偏見や差別を持つ人と無理にかかわるよりも、差別に対する考え方や価値観が自分と近い人、理解してくれる人との関わりを築き、その関係を大事にすることで、より健全な人間関係を作っていくことができます

[3] 自分の強みを再発見する

自分の良い面やすぐれた要素に目を向けることで、誇りが回復し、傷ついた心が癒されます。

障害特性と関わる強みに自信を持てれば、誤った差別や偏見を持つ相手に対して心の余裕を持てて、「知識や常識ない気の毒な人がすることだな」と割り切れるかもしれません。

「差別的な言葉に傷ついた自分の気持ちは間違っていない」と自信を持てるようになれば、傷ついたときに、自分を責めずに済むようになります。

[4] セルフケア

心の状態を整える手段をいくつか持っておくと、傷ついたときでも気分を切り替えるスイッチとして活用することができるようになります。

運動、趣味などの積極的なアクティビティも良いですし、映像・音楽鑑賞、読書、ストレッチ、アロマテラピー、ホットアイマスクを使ってみるなど…リラックス法の中から好きなものを探すのも良いでしょう。

自分で気持ちをコントロールできるスイッチをたくさん持っていると、さまざまな状況に対応して、能動的に自分の気分をコントロールしやすくなります。

[5] コミュニケーションスキルのトレーニング

コミュニケーションについて学ぶことで、社会的なスキルが身に着き、自分に自信を持ちやすくなります。

本を読んだり、動画を視聴したり、グループワークやトレーニング(SST)などに参加したりと、さまざまな方法があるので、自分に適した方法を調べてみましょう。

同様に自分の障害に関する知識を深めることも、自分を知り、有用性のある対処法を身に着ける手段になります。

参考:精神科デイケア│小石川東京病院
参考:SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは|統合失調症・精神科救急・急性期治療の吉祥寺病院(東京調布、吉祥寺、三鷹の精神科)

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まとめ

会話

言葉を選ぶ大切さを実感する機会ととらえる

良好な人間関係を築き、維持してともに生活していくためには、障害の有無にかかわらず、誰にとっても、相手の気持ちを傷つけない言葉遣いを心がけることが大切です。

言葉の暴力をふるわれる可能性は誰にでもあります。

たとえ障害などの差別をうける理由がなかったとしても、非がなかったとしても、人の気持ちをわからない人や自分の気持ちをコントロールできない人に傷つけられる可能性はあるのです。

他者の心ない言葉の暴力に傷つく機会はゼロにはできないかもしれませんが、「差別に傷つく自分の気持ちは間違っていない」と自信を持ち、「この人の言い方は悪い見本だなぁ」「この人は反面教師だなぁ」と、自分のコミュニケーションをよりよくする教材にしてしまおう、くらいに割り切って考えられると、気持ちが少し楽になるかもしれません。

参考:事例No.64(重複)同級生から嫌がらせを受け、大学にメールで訴えたところ、障害を理由とした屈辱的な暴言を受けた | JASSO
参考:企業が考慮すべき人権課題の例|差別・ハラスメントからAI・気候変動まで |coe company

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