発達障害を持つ方の生活にとって、服薬は重要になる
発達障害は、二次障害の診察をきっかけに発見されるケースが多い。
発達障害は、先天的な脳機能の障害と考えられています。ただし育った環境で問題がない場合は、本人が気づかないこともあります。生活に困難を感じていなければ、治療の必要はありません。
しかし、発達障害は「うつ病や不安障害」など、二次障害を発症して気付く方が多いです。そのため医師の診察を受け、処方された薬を服用して生活している方も多いのではないでしょうか。
では、発達障害を持つ方が
〇服薬することでどんな効果があるのか。
〇服薬する上でどんな注意をするべきか
の2点についてご紹介します。
発達障害を持つ方にかかわる、服薬の効果【特性別】
発達障害を持つ方の、服薬にかかわる共通事項
〇発達障害は病気ではないため、必ずしも治療が必要というわけではないこと
〇生活するうえで困難があった場合に、必要に応じて薬が処方されること
〇うつ病や不眠など、二次障害を併発している場合に症状に応じた薬が処方されること
〇主な効果として、感情をコントロールする、精神を落ち着けるなどがあること
が挙げられます。
ADHD(注意欠如多動性障害)、ADD(注意欠如障害)を持つ方への効果
ADHDやADDを持つ方は、集中することやじっとしていることなど、注意のコントロールが苦手なことが多いです。また、「ぼうっとしてしまうこと」なども注意のコントロールに該当します。これは何らかの理由で脳内の神経伝達物質「ドーパミン」が不足することが原因と言われています。
薬物療法では、このドーパミン量を増やす薬が使われます。そのため、服薬することで、
〇気持ちや行動が落ち着く
〇適度な集中力がキープできるようになる
〇注意力をコントロールできるようになる
などの効果があります。
参考:大人の 「注意欠如・多動症(ADHD)」とは?特徴や治療を解説! | NHK健康チャンネル
参考:ドパミン | e-ヘルスネット 情報提供 – 厚生労働省
ASD(自閉症スペクトラム)を持つ方への効果
ASDを持つ方は、環境変化や曖昧な表現が苦手なことや、こだわりが強いのが特徴です。ASDを持つ方の場合、服薬によって直接ASDの特性を改善できるケースは少ないかもしれません。しかしながらASDを持つ方は、対人緊張などの不安や、うつ病などを併発していることが多いです。このようなケースの場合、服薬により特性や困難が緩和される効果があります。
以上が服薬することでの効果です。
では、発達障害を持つ方が服薬をするうえでどんなことに注意すればよいのでしょうか?以降、注意点をご紹介します。
【医師と要相談】発達障害を持つ方の、服薬に関する注意点
1)自分の判断で服薬をやめない。
服薬は、直接あなたの問題を解消する方法ではありません。さらに「薬を飲むことで安定している」「薬のおかげで集中できている」など、良い効果を感じにくいのではないでしょうか。
反面、眠気などの副作用は感じやすいため、「薬を飲んでもメリットがない」と誤解しやすいです。そのため、「薬を飲まなくても大丈夫だろう」と自己判断で服薬をやめてしまうケースがあります。
薬を服用していないと、困難があって精神状態が悪くなったとき、回復が遅くなります。「副作用で眠くなるから、薬は飲まない。」など、自分の判断で服薬をやめないようにしましょう。
2)自分の判断で用法・容量など、服薬の調整をしない。
「朝の眠気が強いから、睡眠導入剤を半分にしよう。」「今日は仕事が休みだから、薬を飲むのをやめよう。」など、自己判断で調整することも危険です。
もし「薬を飲むと眠くなるのが辛い。」など、薬の副作用で困っていたら必ず医師に相談しましょう。その際には「服薬することで、どんな症状が起きているか」を説明できるようにしておくと、分かりやすくなります。
さらに調整後、「睡眠導入剤を減らしたら、寝つきが悪くなってしまいました。」「精神安定剤を減らしたら、問題なく仕事ができるようになりました。」など、服薬を調整してもらったことで、どんな変化があったかも伝えましょう。
3)お薬手帳など、処方内容を保管しておく。
平成30年(2018年)から、薬をもらうときは必ず「お薬手帳」を持参することが義務化されました。発達障害を持つ方の場合、
〇医師に処方内容について相談したいとき
〇職場に服薬状況を伝えるとき(眠気などに対する配慮を受けたいとき)
〇就労移行支援事業所など、支援機関に相談するとき(訓練時の配慮事項を伝えるとき)
〇自分の体調と服薬状況を照らし合わせるとき
などに必要な大切な記録です。お薬手帳、処方内容は必ず保管しましょう。
発達障害による悩み解決は、行動改善も重要なカギになる
発達障害を持つ方にとって、服薬は心身を安定する重要な手段です。しかしながら服薬だけでは、あなたの悩みは解決されません。認知行動療法など、あなたが持つ特性を理解して行動を改善することも大切です。
もし生活面で悩んでいる場合は、必ず上司や家族、支援機関に相談して生活を見直しましょう。詳しくはこちらの記事「『環境調整』とは。大人の発達障害が持つ困難感やストレスの改善法」も併せて参考としてみてください。
発達障害を持つ方へ。就職関連の悩み解決については『Salad』がサポートをします
今回は健康面を中心に、服薬について解説してきました。しかしながら発達障害を持つ方は雇用先でストレスを抱える問題に直面しやすいこともあります。このような仕事面での悩みがありましたら、ぜひこのサイト『Salad(サラダ』にご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
精神科・心療内科関連の薬は、風邪薬とは異なり効果が分かりにくいです。そのため服用していても意味があるのかな…と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。しかしながら、服薬は仕事を続けるうえでは不可欠な、あなたの生活を保つ大切な手段です。長期的に服薬で治療しながら、障害とうまく付き合っていく方法を考えていきましょう。
【筆者紹介】
Salad編集部員。1980年生まれの男性。大人になってから発達障害、ASD(自閉症スペクトラム)と診断されている。公務員として10年間勤務、民間企業の障害者枠の事務職として4年間勤務。公務員勤務の際にうつ病を発症。診察の結果、広汎性発達障害の診断を受けた。その後現在も通院を継続している。民間企業を退社後、就労移行支援に週5日、一年間通所してトレーニングを続けた。就活の結果、職種を変え、強みを生かせる就職が実現した。